こんな魔王は嫌だ
この世界は数年前まではとても平和な世界だった。
しかし、世界はすでに魔王の手に落ち皆は勇者の誕生を祈っていた。
そんな時に生まれたのがこの私、『ミシェ・リード』
私は、魔王を倒すことを目標に日々鍛錬をし、鍛えぬいた。そして、旅立ち当日、14歳。私は、幾多の困難を潜り抜けて魔王城へ。
「ここが魔王城ね。今までの鍛錬の成果、見せてあげるわ。」
私はこのまま、魔王城の中へ入っていった。中はとても広かった。
テーブルや椅子。冷蔵庫に布団ここで暮らせそう。
「ん?あぁ~君が新しい勇者さん?思っていた以上に遅かったね。」
声がしたほうを見た。
そこには、見る限りアホそうな感じの20歳ぐらいの男の人が立っていた。
「えっと、あの、あなたは?」
「ひどいなぁ~、勇者ちゃん。僕は魔王。君の敵だ」
これが?これがっていう言い方もアレだけど、こんな天然キャラみたいのが魔王とか。それともなんだろう、今までの勇者はこの容姿に負けたのか?
「まぁ、すぐ倒すのもあれだから。ちょっと話し相手になってよ。」
魔王は魔法のようなものを使い、机や椅子を作り出した。座れってこと?罠臭がビンビンなんですけど。
「安心して、罠とかは設置していないよ。」
「そう言われて座ると思う?」
「あれ~?いつもの勇者ならそこに座って罠にかけれるはずだったんだけど…」
何?私が言うのもあれだけど、勇者ってバカしかいないの?
「そんなことはどうでもいい、さっさと私に倒されなさい。」
「あれは、何年前だったかな?そうだ30年前。30年前の勇者は実に…」
「語りださないで!」
もうこんなのが魔王とか本当に大丈夫かな?不安しか残らない。
「しょうがないな、ほら戦ってやるよ。」
「魔王ならそう来なくっちゃ」
魔王の動きは遅い。だから、そのうちに攻撃を仕掛ける。
「とりゃ えい ハァー!」
魔王には全部当たってる。余裕で勝てる。
「ヘイヤー セイ イっケー!」
攻撃をしてから後方へ下がり、魔王の様子をうかがった。
「ぉぉおおおー!いいぞ、いいぞ。力加減もわかっていて。これは、とても
『素晴らしい』」
あの天然そうなキャラから一変した。あれは、喜んでいるの?
いやいやいや、そんなわけない。少なくとも、この剣は鉄でできている。
それで切られて喜ぶかな?喜ばないよ、だって痛いもん。
「勇者ちゃん、僕たちは相性がいいみたいだ。どうだ、僕と組んでみないか?君を絶対後悔させないからさ、」
「相性がいいって何ですか、それに絶対魔王とは組みません。」
「そうかな?僕としてはいい案だとは思うけどなぁ~」
「むしろ、なんで私にこだわるんですか?他の人でもいいでしょ。」
「そんなの決まってるよ。君に受けた攻撃が気持ちよかったからだよ。」
突然の魔王の言葉に少し頭が追い付かなかった。こういう人のことを確か『ドM』って言うんだっけ?
「だから、君に受けた攻撃はダメージではなく回復として与えられたんだ。」
そんな清々しいほど笑顔で言われても…。あぁ、道理でこんな無謀なこと誰もしようとしてなかったはずだわ。
「ところで勇者ちゃん、ちょっといいかな?」
「なんですか?」
「さっき言ったことを踏まえて僕と組まないかい?」
「余計組みたくありません。」
きっぱりと断った。魔王は涙を浮かべながら必死にお願いをしてきた。
「お願いします。本当に、僕にかまってくれる人がいないんですよ~。部下達は僕に指一本触れてはいけない契約で、町に出て女の子捕まえても魔王だってすぐばれるし、話だけでも聞いてください。」
ここまで必死にお願いされたら、魔王とはいえ同情したくなってくる。
「わかりました。わかりましたから泣かないでください。」
「すみません。魔王だからといって、心がないわけじゃないですから。」
とりあえず私は、魔王の持ってきてくれた椅子に座ることにし魔王の話を聞くことにした。