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りんごの思い出

作者: 大藤さな
掲載日:2017/12/17

作者《さくしゃ》の都合《つごう》で、すべての漢字《かんじ》にふりがなをつけています。拙作《せっさく》ですがご一読《いちどく》いただけましたら嬉《うれ》しいです。

 王妃様《おうひさま》は、白雪姫《しらゆきひめ》のために料理《りょうり》をしていました。料理《りょうり》が得意《とくい》ではない王妃様《おうひさま》ですが、きれいなドレスが汚《よご》れるのも気《き》にしないで、一所懸命《いっしょけんめい》になって料理《りょうり》を作《つく》ります。

「王妃様《おうひさま》お手伝《てつだ》いいたしましょう」

 王妃様《おうひさま》が苦労《くろう》しながら料理《りょうり》を作《つく》っている様子《ようす》を、見《み》た召使《めしつか》いが言《い》いました。

「大丈夫《だいじょうぶ》です。前《まえ》の王妃様《おうひさま》も料理《りょうり》をしてたのですから、わたくしもこれくらいは、やれなければいけないのです」

 王妃様《おうひさま》はことわります。前《まえ》の王妃様《おうひさま》が病気《びょうき》で死《し》んでしまい、落《お》ち込《こ》んでいた王様《おうさま》が今《いま》の王妃様《おうひさま》を、新《あたら》しく迎《むか》えたのでした。王妃様《おうひさま》はお城《しろ》の人《ひと》たちに少《すこ》しでも受《う》け入《い》れてもらえるようにと、前《まえ》の王妃様《おうひさま》と同《おな》じように振《ふ》る舞《ま》っていましたがなかなか思《おも》うようにいきませんでした。それでも、王様《おうさま》と前《まえ》の王妃様《おうひさま》の間《あいだ》に産《う》まれた白雪姫《しらゆきひめ》は、王妃様《おうひさま》のことが好《す》きでした。そんな白雪姫《しらゆきひめ》が好《す》き嫌《きら》いをして、りんごを食《た》べないと知《し》った王妃様《おうひさま》は、白雪姫《しらゆきひめ》にりんごを好《す》きになってもらおうとりんごのパイを作《つく》ろうとしているのです。

「わかりました。それでは、何《なに》かありましたら呼《よ》んでください」

 王妃様《おうひさま》にことわられた召使《めしつか》いが答《こた》えました。それでも王妃様《おうひさま》が心配《しんぱい》な召使《めしつか》いに見守《みまも》られながらりんごのパイは出来上《できあ》がりました。王妃様《おうひさま》は、召使《めしつか》いと一緒《いっしょ》に味見《あじみ》をしました。少《すこ》し焦《こ》げてしまい、形《かたち》も崩《くず》れてしまったりんごのパイですが、おいしく出来《でき》ました。うれしくなった王妃様《おうひさま》は、白雪姫《しらゆきひめ》に食《た》べてもらおうとできたばかりのりんごのパイを持《も》っていきました。

「白雪姫《しらゆきひめ》、あなたに食《た》べて欲《ほ》しくて、パイを作《つく》ってみたの」

 王妃様《おうひさま》は白雪姫《しらゆきひめ》にりんごのパイを差《さ》し出《だ》しました。でも、白雪姫《しらゆきひめ》は受《う》け取《と》りません。

「ごめんなさい、お義母《かあ》さま。わたしは、りんごが嫌《きら》いなの」

 白雪姫《しらゆきひめ》は言《い》いました。王妃様《おうひさま》はりんごとは言《い》わなかったのにどうして白雪姫《しらゆきひめ》にはりんごと分《わ》かったのでしょうか。不思議《ふしぎ》に思《おも》った王妃様《おうひさま》ですが、白雪姫《しらゆきひめ》にりんごのパイを食《た》べて欲《ほ》しくて、フォークを使《つか》ってりんごのパイを一口《ひとくち》の大《おお》きさに切《き》ると、白雪姫《しらゆきひめ》に差《さ》し出《だ》しました。

「ひとくちでいいの。きっと好《す》きになってもらえるわ」

 王妃様《おうひさま》は、お願《おねが》いをします。そして、少《すこし》し空《あ》いた白雪姫《しらゆきひめ》の口《くち》に入《い》れました。しかし、白雪姫《しらゆきひめ》は口《くち》の中《なか》に入《はい》ったりんごのパイを吐《は》き出《だ》します。それだけではありません。白雪姫《しらゆきひめ》は、王妃様《おうひさま》が持《も》っていたりんごのパイを払《はら》い落《お》としてしまったのです。王妃様《おうひさま》は驚《おどろ》きました。声《こえ》も出《で》ません。

「りんごは嫌《きら》いなの。お義母《かあ》さまもわたしにいじわるをするのね」

 白雪姫《しらゆきひめ》は、部屋《へや》を飛《と》び出《だ》していきます。白雪姫《しらゆきひめ》が泣《な》いていたのを見《み》て、悲《かな》しくて、ショックを受《う》けた王妃様《おうひさま》は倒《たお》れてしまいました。召使《めしつか》いによってベッドへと運《はこ》ばれた王妃様《おうひさま》が目《め》を覚《さ》ました時《とき》は夕日《ゆうひ》が沈《しず》むころでした。白雪姫《しらゆきひめ》はどうしたかしら。気《き》になった王妃様《おうひさま》は、召使《めしつか》いに聞《き》きます。召使《めしつか》いは、白雪姫《しらゆきひめ》がお城《しろ》から外《そと》へ出《で》て行《い》ったきり帰《かえ》って来《こ》ていないと言《い》います。外《そと》は暗《くら》くなるのに帰《かえ》って来《き》ていない白雪姫《したゆきひめ》を心配《しんぱい》した王妃様《おうひさま》は、探《さが》しに行《い》こうと起《お》き上《あ》がります。しかし、召使《めしつか》いが外《そと》へと行《い》こうとする王妃様《おうひさま》を止《と》めました。

「白雪姫《しらゆきひめ》が心配《しんぱい》なのです」

 王妃様《おうひさま》は召使《めしつか》いに訴《うた》えます。召使《めしつか》いは、首《くび》を横《よこ》に振《ふ》って王妃様《おうひさま》を行《い》かせません。白雪姫《しらゆきひめ》が心配《しんぱい》な王妃様《おうひさま》は、召使《めしつか》いを振《ふ》り払《はら》って探《さが》しに行《い》こうとします。

「わたしの母《はは》が、街《まち》で困《こま》っていた白雪姫《しらゆきひめ》を見《み》つけて保護《ほご》しています」

 召使《めしつか》いは王妃様《おうひさま》に言《い》いました。白雪姫《しらゆきひめ》から事情《じじょう》を聞《き》いた召使《めしつか》いの母親《ははおや》は、落《お》ち着《つ》いて話《はなし》ができるようにと白雪姫《しらゆきひめ》をひと晩《ばん》預《あず》かると連絡《れんらく》をしてきたことを王妃様《おうひさま》に話《はな》します。白雪姫《しらゆきひめ》が無事《ぶじ》だとをわかった王妃様《おうひさま》はやっと落《お》ち着《つ》いてベッドへと戻《もど》りました。

「王妃様《おうひさま》。白雪姫《しらゆきひめ》が、どうしてりんごが嫌《きら》いなのか聞《き》いていただけますか」

 召使《めしつか》いは話《はな》します。なぜ、白雪姫《しらゆきひめ》がりんごを嫌《きら》いになってしまったのか。それは、前《まえ》の王妃様《おうひさま》が母親《ははおや》の作《つく》ったりんごのパイが好《す》きだったことがきっかけでした。前《まえ》の王妃様《おうひさま》は、母親《ははおや》にしてもらったのと同《おな》じように白雪姫《しらゆきひめ》にりんごのパイを作《つく》りました。でも、前《まえ》の王妃様《おうひさま》の作《つく》ったりんごのパイは、とてもまずかったのです。りんごのパイを食《た》べた白雪姫《しらゆきひめ》にまずいと言《い》われた王妃様《おうひさま》は意地《いぢ》になり、どうしても白雪姫《しらゆきひめ》にりんごのパイを食《た》べさせようと毎日《まいにち》のようにりんごのパイを作《つく》っては白雪姫《しらゆきひめ》に食《た》べさせました。そして、白雪姫《しらゆきひめ》は前《まえ》の王妃様《おうひさま》の作《つく》ったりんごのパイをりんごという名前《なまえ》の料理《りょうり》だと勘違《かんちが》いをしていたのです。お城《しろ》の召使《めしつか》いや兵士《へいし》が勘違《かんちが》いをしていると教《おし》えようとしましたが、どうしてもりんごのパイを食《た》べてほしい前《まえ》の王妃様《おうひさま》と一緒《いっしょ》になってだましているのだと疑《うたが》われたという話《はなし》でした。そうです。白雪姫《しらゆきひめ》は、りんごという果物《くだもの》を見《み》たことも食《た》べたこともなかったのです。

「それでは、ちゃんと教《おし》えなくてはいけませんね。手伝《てつだ》ってくれますか」

 王妃様《おうひさま》は、明日《あす》もりんごのパイを作《つく》ると決《き》めました。そして、召使《めしつか》いに上手《じょうず》に作《つく》れるように手伝《てつだ》ってほしいとお願《おねが》いしました。

 次《つぎ》の日《ひ》、朝《あさ》からりんごのパイを作《つく》った王妃様《おうひさま》と召使《めしつか》いは、太陽《たいよう》が高《たか》くなったころに白雪姫《しらゆきひめ》を迎《むか》えに行《い》きました。王妃様《おうひさま》は、白雪姫《しらゆきひめ》にりんごのパイを渡《わた》します。

「お義母《かあ》さま、わたしはりんごが嫌《きら》いなんです」

 白雪姫《しらゆきひめ》は強《つよ》く言《い》いました。りんごのパイを王妃様《おうひさま》に返《かえ》します。

「そうだったのかい。言《い》ってくれればりんごのジュースなんか出《だ》さなかったのにね」

 飲《の》み物《もの》を用意《ようい》してくれていた召使《めしつか》いの母親《ははおや》が言《い》いました。

「りんごは、このまずい料理《りょうり》のことでしょう。ジュースなんかじゃないわ」

 白雪姫《しらゆきひめ》は、驚《おどろ》いて言《い》いました。そして、ジュースを飲《の》みます。召使《めしつか》いの母親《ははおや》は、全部《ぜんぶ》を理解《りかい》したようにうなずくと真《ま》っ赤《か》なりんごを持《も》ってきました。

「これが、りんごだよ。王妃様《おうひさま》のパイはおいしそうだけどね」

 召使《めしつか》いの母親《ははおや》はりんごを白雪姫《しらゆきひめ》の前《まえ》に置《おいて》いて、王妃様《おうひさま》が作《つく》ったりんごのパイを食《た》べました。おいしそうに食《た》べている様子《ようす》を見《み》て白雪姫《しらゆきひめ》はびっくり。もうひとつと、りんごのパイを食《た》べる召使《めしつか》いの母親《ははおや》を見《み》て、白雪姫《しらゆきひめ》は、怖《こわ》い顔《かお》をしながらもりんごのパイを食《た》べました。

「おいしいわ」

 驚《おどろ》いた表情《ひょうじょう》をした白雪姫《しらゆきひめ》は小《ちい》さな声《こえ》で言《い》いました。そして、ふたつ目《め》を手《て》に取《と》って今度《こんど》はゆっくり味《あじ》わうと笑顔《えがお》を見《み》せます。緊張《きんちょう》しながら様子《ようす》を見《み》ていた王妃様《おうひさま》でしたが、安心《あんしん》したようで小《ちい》さく笑《わら》いました。

「今度《こんど》は、一緒《いっしょ》に作《つく》りましょうね」

 嫌《きら》いというのがうそのようにりんごのパイを食《た》べている白雪姫《しらゆきひめ》に、王妃様《おうひさま》が言《い》いました。

「はい。お義母《かあ》さま」

 白雪姫《しらゆきひめ》はりんごのパイを食《た》べながら笑顔《えがお》で答《こた》えました。

好《す》き嫌《きら》いはあっても仕方《しかた》がないと思《おも》いますが、食《く》わず嫌《きら》いは格好《かっこう》が悪《わる》いですよね。

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