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僕と騎士様の異世界転生  作者: ちひろ
いざ! 異世界転生!
7/12

第七話

予約投稿をミスりました...

 「なあ、ちょっと相談があるんだ」


 学食で、京一はAランチ、僕は弁当を広げていた。

 ちなみに、京一のAランチには僕が進呈したゆで卵も乗っている。

 僕は義理堅い男だからな。

 また助けて下さいね?


 「相談? 心当たりが多すぎて絞りきれんが、何の件だ」


 「否定出来ないのが辛いけど...京一さ、悪魔とか神とか信じる方?」


 「...優弥、友達を宗教に勧誘するのは感心しないぞ。友情を壊す」


 「いや、違う違う、そんな訳ないだろ! ...それで、現時点で、どうなの?」


 「ふーむ...無いな。俺は幽霊も信じない。見えないものは信じるな、見えないものに惑わされるな、がじいちゃんの遺言ゆいごんだからな」


 「...やっぱりそうだよな。普通はそうなんだよ...」


 「何だ一体。オカルトにでも目覚めたか?」


 「...実は、そうなんだ」


 「おい?」


 京一がゆで卵の殻を剥きながら、心配そうな目を向けてくる。

 まあ、普通はそういう反応になるよな。

 僕だって、立場が逆ならきっとそんな顔して京一を見てたはずだ。


 「いいか、ありのまま話すから聞いてくれ。それで、アドバイスが欲しい」


 京一はじっと僕の目を見つめていたが、ふっと一つ息を吐くと、椅子の背もたれに体重を預けた。


 「分かった。言ってみろ」


 「本物の、悪魔召喚の書を手に入れた」


 「っ...早速突っ込みたいが、続けて」


 「うん。で、召喚は失敗した」


 「おい。言葉は正確に選べよ? 失敗したのか? 起動しなかったんじゃなくて」


 「そう、明らかに失敗したんだ」


 うん、やっぱり京一は頭が切れるな。

 もう気付いた。

 相談する相手を間違えなかった自分を褒めてあげたい。


 「...そんなことがあるのか...世の中分からんもんだな」


 「本に書いてある通りにやったと思うんだけど、何回やっても失敗するんだ」


 すっかり箸を止めてしまった京一は、腕を組んでこちらを見ている。


 「失敗の原因に心当たりは?」


 「ない...と言いたいんだけど、一つだけ。儀式の際に“魔力”を注げ、って書いてあって」


 「ほう? 優弥が、そんなもん持ってたとは初耳だが」


 「いや、僕も初耳だよ。持ってるわけないじゃん」


 「ふむ...それでは、ちと難しいんじゃないか? 超能力者とか霊能力者とかが持ってたりするのかも知れないが...どこぞに弟子入りでもしてみるか?」


 「いやしないよ...何が悲しくて今からイタコ目指さなくちゃいけないのさ...」


 「じゃあ、どうするんだ、“魔力”?」


 「それを考えて欲しいんだよ...」


 京一はその後食事を再開し、さっさと食べ終わると立ち上がる。

 僕も既に食べ終わっていたため、京一が食器を下げに行くのについて行った。


 「ひとまず教室に戻るか。一応、“魔力”については調べておくよ」


 「助かるよ。やっぱり持つべきものは友達だね!」


 学食を出て、教室へと向かいながら話を続ける。


 「時に優弥。お前、悪魔なんぞ呼び出してどうするつもりだったんだ?」


 「うっ...そ、それは...」


 異世界転生が目的だなんて、高校生にもなって恥ずかしくて言えないよ。


 「どうせ、異世界に行きたいとか、そんなんだろうけど」


 「心を読むなよ! 別にいいだろ、悪い!? でも、よく異世界転生なんて言葉知ってたね」


 「ああ、お前いつも夢中になってスマホで小説読んでるからさ、どんな内容なのかと思って」


 「...思って?」


 「授業中お前が寝てる間にスマホ覗いたら、そういう内容の小説があったから」


 「僕のプライバシーどこいった!」


 「大丈夫だ、俺は気にしないから」


 「僕が気にするよ! 何言ってんの!? ダメだよ、親しき仲にも礼儀だよ! いや、ちょっと、その“やれやれ”みたいなリアクション止めてくれる!? 僕がおかしなこと言ってるみたいじゃないか!」


 「はは、分かった分かった。なるほど、悪魔に願い事をして異世界転生ねえ」


 「上手く行けば、死んで転生するより安全かなって思ったんだ」


 「安直あんちょく


 「うるさい」


 暫く他愛もないやり取りを続けつつ教室に戻ると、僕の机を中心に人だかりができていた。

 わいわいと楽しそうに話す奈美とその周りを見て、これは良くない流れだと直感する。


 「京一」


 「どした」


 「僕、あの中に割って入る勇気はない」


 「ああ...針のむしろだろうな」


 「僕、残りの時間は屋上で過ごすから、なんとか誤魔化しといて」


 「分かったよ。苦労するな」


 「いつもごめん」


 僕はため息を吐くと、教室の入口を通り過ぎ、屋上へと階段を上ってゆく。

 屋上の扉を開けると、暖かな陽射しと涼しい風を、全身で浴びる。

 ああ、やっぱりここは僕の一番のお気に入りの場所だ。

 屋上を囲っているフェンスに近付こうとしたとき、誰か男子生徒が寝そべっているのに気付いた。

 うわ、ちゃんとレジャーシートまで敷いて、枕使って寝てる...


 「んん...?」


 フェンス側を向いていた彼はこちらに寝返りを打ち、薄らと目を開ける。

 誰だろう...校章は...赤。

 三年生だ。


 「誰だ...? オレの眠りを邪魔する奴は皆殺しだ」


 うわ、この人ヤバい人だ!

 きっと頭もヤバいに違いない!

 僕、死んだかも...


 「す、すいません、僕...」


 「...あ? 何だ中坊か。勝手に入ってくんな、つまみ出されんぞ。教室帰れ」


 「いや、誰が中坊に見えるほどチビですか! れっきとしたここの一年生です! 大体、ココ中等部ないでしょうが! ...ハッ!?」


 怖そうな先輩相手だというのに、ついうっかりツッコんでしまった。

 ああ、ダメだ...もう死亡決定。

 お母さん、先立つ不幸をお許し下さい...


 「おお...流れるようなツッコミだな。俺にツッコミ入れるやつなんか久しぶりに見たわ」


 先輩はむくりと起き上がるとニヤリとしながら僕を見下ろす。

 背が高い、恐らく180cmは超えている。

 髪は長く肩まであるが、背が高いのもあって暑苦しくは見えない。

 左耳には真っ赤なピアスが光り、怪しい魅力をかもし出している。

 言ってることは危ない人だが、顔つきは優しげでこれは男の僕から見ても超イケメンと言える。


 「あと何分だ」


 「...え?」


 「だから、昼休みはあと何分残ってるかって聞いてんだよ」


 いや、そんなの一度も言ってないよね!?

 エスパーじゃないんだから、心読むのが前提の会話しないで欲しいんですけど!

 僕は取り落とす勢いでスマホを取り出し、時間を確認する。


 「あ、あと、15分です」


 「おお、丁度いい塩梅あんばいだな。...くあぁぁぁ...」


 先輩らしき人は、大きな欠伸あくびをしながら、僕の横を通り抜けて、屋内への扉へ歩いて行く。

 すると、扉の向こうから、ゴリラが出てきた。

 いや、違う、ゴリラみたいな図体ずうたいをしたオールバックの男だ。


 「あ、リョータ君、ここにいたのかよ! みんな探して...ん? あいつは?」


 ゴリラが僕を目ざとく見つけたようだ。


 「知らね。一年みてーだけど」


 「ふぅん...なぁーーーーに、見てんだコラァ!!」


 「ひっ!」


 怒号どごうのような声を受け、僕は金縛りにあったように動けなくなってしまう。


 「おいやめとけ。ガキいじめんな」


 「ああ...いや、それどころじゃねーのよ! カズトヨの野郎、ヒロキとまたモメてて...」


 二人はそのまま何かを話しながら屋内に入っていってしまう。

 僕は、一人になった後も暫く動けなかったが、遂にはヘナヘナと尻餅をついてしまった。


 「はあ~...こ、怖かった...」


 そのまま呆然ぼうぜんと座り込んだ僕の体がまともに体が動くようになり、さっきの人がレジャーシートと枕をそのままにして行ったことに気付いたのは、午後の予鈴が鳴ってからのことだった。

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