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異世界DEヒーロー‼  作者: 花鳥風月
第一章
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初戦闘

「Guluuuuuu!?」


 俺の姿が変わったのを見て驚愕を露にする狼。俺自身も驚いている。何故おもちゃでしかなかったこれ(・・)が本物になっているのか、など色々と疑問は尽きないけれど俺が生き残るためにはこの力を使うしか道はない。


 このアストラグナの基本形態であるブライトフォームにはドラグセイバー一本しか武装はない。ゆえに近づいて斬る、ということしか攻撃方法は無い。


 普通ならばあんな人知を超えた様な物に近づくには恐怖を覚えるのが正しいだろう。けれど今の俺は変身した時からどこからともなく溢れ出してくる力で一種の興奮状態になっているのか、全く恐怖を感じることはない。この状態ならば何のためらいも無くあの狼と戦えるだろう。


(さっきのお返しに重い一発をぶち込んでやる!)


 そう考え地を蹴り狼に近づこうとしたのだが、ここで想定外のことが起こった。


(うおぉぉぉ!?)


 急に視界がブレ、突然目の前に大木にぶつかったのだ。余りの移動速度に感覚がなれず、狼を通り越してその先の大木にぶつかったのだ。変身したことで体のスペックが大幅に変化した弊害の一つだろう。


「Gaaaaaaa!!」


 そんな俺を見てチャンスだと思ったか、こちらに向かって前足から出ている鋭い爪を振るってくる狼。まだスーツに慣れておらず、その動きを捉え、たとえ避けても他の木にぶつかるということを繰り返す。


『うあぁぁぁぁ!』


 そのこうしているうちに一撃が当たり、五メートルほど吹っ飛ばされる。その拍子に持っていたドラグセイバーを落としてしまう。


『いった……く、ない……?』


 とっさに叫ぶが変身しているからか全くというわけではないが殆ど痛みが無いことに気づく。


 そんな俺に再び狼が爪を振るう。


『ッ!? うおぉぉぉらぁぁぁ!』


 今度の攻撃は避けられないと瞬時に判断し、破れかぶれに拳をおもいっきり狼に向かって振るう。


「Gaaaaaa!?」


 その破れかぶれの一撃は爪が当たる前に狼の胴体を捉え、その体を吹き飛ばした。


『あ、当たった……の、か……?』


(……たった一発のパンチであんなに吹っ飛ぶなんて……)


 自分自身その一撃に呆然としてしまうほどの威力だった。狼が吹っ飛んだ後を見ると、木々がへし折れて、それが十数メートル先まで続いているのが見えた。それが拳の威力を物語っている。


(これが……アストラグナの力……)


 そんなことを考えているうちに狼が戻ってきた。この戦いのなかでなんとかこの体に慣れないと……、そう考えながら再び狼と向かい合う。


(さっきはおもいっきり踏み込んであんなに早くなったんだ。なら今度はその辺りも考えていかないと……)


 ドラグセイバーを構え、狼に向かって踏み込む。近づいてきた俺に横から爪を振るってくる。それを左腕のドラグシールドでなんとか防ぎ、狼の懐に潜り込む。


『はぁぁぁぁ!』


 そして構えたドラグセイバーを素人感まる出しで振るう。それでも至近距離から振るわれたドラグセイバーは吸い込まれるようにして狼の首元に直撃する。


『何!?』


 しかしどういうことか確かに入ったはずの一撃はまるでゴムか何かに当たったかの様に跳ね返される。そしてその衝撃を利用して距離を取り、驚いて止まったこちらを見て隙と思ったか突進をしてきた狼。距離を取ったといっても精々十メートルほど。けれど狼の突進はその距離から繰り出されるものにしてはあり得ない程の速度を出して向かって来た。


 避けられないとすぐさま判断し、腰を落とし左腕のドラグシールドを構える。


『ッ! うぉぉぉぉ!』


 ガンッ!! と大きな音が鳴り、そのまま俺と狼の根競べが始まった。余りの衝撃に周囲の地面が割れ、木々が倒れていく。


(このままだと埒が明かないな……。どうする? 何か方法は……!)


 その瞬間、先ほど吹っ飛ばされたときに見えた光景を思いだし、一つの案が思い付いた。そして思いついた案をすぐさま実行に移す。


 この状態からさらに少しづつ腰を落とし受け止めていた力を弱める。すると当然拮抗していた状態から狼に押され始める。


(まだだ。もう少し、もう少しだ……)


 後ろへと押されていき、俺の背後に深く底の見えない渓谷が見え始めた。


(今だ!)


 その瞬間、狼の真下に来るように倒れ込み、渓谷に向かって全力で胴体を蹴り飛ばす。


『うおぉぉぉりゃぁぁぁぁ!』


 だが大きさが大きさなだけに、蹴りを入れた瞬間足にとてつもない負荷がかかった。


(ぐっ、お、重い……!)


 〝これじゃあ蹴り飛ばせないかもしれない〟そう考えた瞬間足へと何かが流れ込み、それと同時に体の力が抜けていくような感覚に陥った。すると今までのことが嘘のように狼のその巨体を宙へと蹴り飛ばすことが出来た。


『はぁぁぁぁ!』


「Gyaun!?」


 その結果、狼は俺の目論見通り渓谷の深い谷底へと落ちて行った。そのまますぐに立ち上がり何も起きないことを確認するとどっと疲れが出てきてその場で尻もちをついてしまう。


『……はぁ、やっと終わった」


(本当に何だったんだよ、あの狼は……。ってアレ? 変身が解けてる……)


 そう安心すると同時に何時の間にか変身が解けていることに気付く。けれどこうしてここで考え呆けていても仕方がない、そう思い立ち上がろうとする。けれど立ち上がれず、直ぐにその場に倒れてしまう。それと同時に俺を強い眠気が襲う。


(……あ、れ? 早く休める場所を…探さ…ないと、危ないの、に……。でも、もうだめ、だ……)


 そんな俺の視界に最後に入ってきたのは何かが近寄ってくる光景だった。そしてそのまま、俺の意識は落ちて行った――。

 

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