「私」と冒険者
7の月になり、暑さが増してきた、暑い。
毎年の事ながらクーラー欲しい、せめて扇風機・・・有る訳無いけどな・・・
足取りが重い、ん~~
今、神殿からの帰り道、久しぶりに女神に会いに?行って来た所だ。
用が無ければ会いたくないんだけど、ちょっと夢を見たんだ、前の学校行ってた夢をさ。
放課後教室でバカ話してコンビニでアイス買って、、スマホで、、、
で、思ったんだ、女神にお願いしたら、スマホくらいこっちに持ってこれないかと!
魂とか持ってこれるんならスマホとか余裕じゃないかと。
俺って頭いい!って朝一で行って来たんだ、するとだ女神は、
『スマホって何ですか?元居た世界の?はぁ?あのですね女神だからってなんでもできる訳じゃないんです!できる事と出来ないことが有るんです!!』
って切れられた・・・そのなんだ、ごめん・・・
ちょっと落ち込み帰ろうとすると視線を感じる、ばっと振り返るとそこに
神官のおっちゃんが柱の陰からこちらを見ていた...何故に...
にこりと微笑み掛けると走って逃げて行った、解せぬ。
フゥと溜息を付きつ歩いていると、見覚えのある奴が居た友達の「ロント」だ。
勉強会でよく会う俺より一つ年上11歳、つんつん頭の悪ガキだ、見てると通りの角から少し顔を出して何か見ている?
その年でのぞきか?ストーカーか?やれやれ困った奴だ。
そっと近づき声をかける
「おいっす、何してんだ!」
「うわぁぁ」
小さく悲鳴を上げこっちを見てきた、口元に指を当ててる静かにしろって事らしい。
「何見てたんだ?のぞきか?」
「違う!アレを見てみろ!」
ん~と通りから見てみると一人の冒険者が居た、皮鎧にショートソードかな?腰に吊るしてる。
居住区で見るのは確かに珍しいがこの街には腐るほど居るのだ、何でこそこそと見てんだ?
「冒険者がなんだ珍しくも無い」
「違うんだってアイツ結構前からこの辺りウロウロしてんだよ、なんか探してるみたいなんだ」
そう言われればキョロキョロと何か探しているようだった。
「お店か知り合いでも探してんじゃないの?」
「探してるって時間かかりすぎだろ?俺はアイツ人攫いじゃないかと疑ってんだ!獲物探してるんだよ絶対」
力説である。
はぁ?いやいや、お前何言ってんの?いくら何でも・・・いやまさか・・・な
思わず顎先に指を当る、可能性が無い訳じゃないが・・・目立ち過ぎだろ、大人たちがジロジロ見てるし。
見慣れないのが近所に来たら警戒するよね武装してるし、この視線を気にしないんだから違うだろ。
「直接聞いてみりゃいいだろ?なにしてんの?って」
「お前バカか!、攫われたらどうすんだよ!」
バカにバカって言われた・・・無性に腹が立つ・・・
ロントをほっといて冒険者の元へ向かい声を掛けてみた。
「ねえ、冒険者のおっさん何してんの?探し物?」
冒険者のおっさんは引き攣った顔でこっちを見てきた。
顔は悪くないハンサム?無精髭剃ればいいのにと思えるくらい。
「おっさんって・・・傷つくな・・・おっさんに見えるか?」
「うん!」
「はぁ・・・まぁいいか・・そうだ嬢ちゃん、この近くに肉屋無いか?肉屋」
肉屋は何店かあるけどこの近くかぁ、っておっさんなんか持ってる。
「その見てるのは地図?見せてよ」
そういうとおっさんは実に嫌そうな顔をした、
「これかぁ?見ても嬢ちゃんじゃ解らないだろ?」
これは俺に対する挑戦ですか?むー子供だと思って舐めてるな!
「見せてみなって!」
おっさんから地図奪い取って見てみると・・・
羊皮紙の真ん中に左右に線が二本引いて有り”大通り”と書いてある、その下に碁盤目状に線が引いてあって一か所に”肉屋”、その下側に×印が有って”ココ”って書いてあった…なんだこれ…
思わずおっさんを見返すと得意げな顔で
「なっ!解んねぇだろ?」
目が点になった、この地図で目的地着いたら大概のダンジョンマッピング無しでクリアできるわ!
どうこう話してるとロントが近づいてきて地図を見て大爆笑である、つられて俺も笑いおっさんも笑う、笑い転げてると近くに居た大人達も地図?を覗き込んで笑い出した。
「俺んとこのガキが描いたほうがまだマシなの描くぞ、がはは」
「こりゃ酷すぎる、笑い殺す気かよ、ひでぇひゃひゃひゃ」
『酷過ぎますねぇ罠か何かですか?アハハハハ』
「これで辿り付ける方がおかしいよなぁ??」
これ描いたの誰だよ、俺文句言ってやるよ、あははは
おっさんは地図をひらひらさせながら、
「たっく、ルブルには困ったもんだ、ぎゃはは」
「・・・・・え・・」
いやまて、聞き間違いの可能性も・・・うん、もう一度聞いてみよう
「・・・今なんて?」
「ん?あーこれ描いたのルブルって奴で俺の親友なんだ」
「・・・・・・」
どうする、逃げるか、そっと立ち去ろうそうしよう
「ルブルってファナんとこの親父さんだろ?」
「なっ!、おまっ!・・・」
笑い声が鎮まる、あれ、なんか空気が重い・・・よ?
『あはっははは、酷過ぎますヒィーおかしー・・・』
あ!なんでお前まで混ざって笑ってんだよ!
「お前の親父さん地図描くのすっげぇ下手なんだな!」
ぐあっ・・・
止め刺されたこの野郎、ロントお・ぼ・え・て・ろ・よ!
周囲の大人の申し訳ないような残念な視線が刺さる。
俺が描いたんじゃ無いし!関係ないし!うう、どうしてこうなった。
冒険者のおっさんがすげー申し訳なさそうに聞いてきた。
「あー・・嬢ちゃんルブルの娘さん?嫁さんはリナリってんだが?」
「は、はい・・・お父さんです・・・はい・・」
泣いていいですか?号泣してぇ・・・
「んじゃ、案内頼めるか?助かったぜ!俺はアルドーってんだ」
雰囲気を変えようと陽気に声掛けてくれた、いい人だなおっさん、この恩は忘れないぜ・・・
「こっちです・・行きましょう・・」
ふらふらと歩きだした、女神といい、この地図といい、今日は厄日だ、ロントのせいだ。
ってロント何でついてくるんだよ!しかも嬉しそうに!
さっきまで人攫いだとかなんとか言ってたくせに眼ェ輝かしておっさん見てんなよ!
まぁ冒険者と仲良くなるとかないしな、俺も男なら並んで見上げてるよ、うん
家に向かう道中、おっさんが旅の話を色々してくれた、
盗賊と戦った話とか魔物と戦った話とかお道化た感じに派手な身振り手振りで面白かった。
いろんな街の話も良かったなぁ、他の街に行く事なんて無いだろうしなぁ~。
てか、壁の向こうにすら出たことないよ、そう考えるとちょっとだけ冒険者っていいなと思う。
チャンスがあったら隣街くらい行ってみたいな。
そうしてると家に着いた、
「ここだよ、おっさん、ルブル雑貨店にようこそ」
「ほ~ここかぁ・・・だいぶ離れてたな・・・」
「まぁ迷ったおかげで出会えた訳だし、運命の出会いって事で」
これは運命、あー違う違う、ってロントなんでこっち睨む?
お店のドアを開けると、カウンターにお母さんが居た、
「お母さん、お父さんにお客さんだよ」
「よー久しぶりだなリナリー」
っと大げさに両手を広げる、とお母さんは”うわ来た”みたいな顔をした。
「アルドー兄さん、いつ来たのいつ帰るの?」
「いきなりか・・・次の月までこの街に滞在する予定だ」
ん・・・兄さん?もしかして私の伯父さんになるのかな?
しまった、伯父さんだと判ってたら対応を…おっさんて…
そっとアルドー伯父さんを見るとニヤニヤとこっちを見てた。
「いや~道に迷ってたら偶然にファナちゃんと会ってな、案内して貰ったんだ」
「本当に、偶然でしたねアルドー伯父さん、うふふふ」
アルドー伯父さんとロントの二人が驚いた顔してこっち見てくる。
あー誰だよお前みたいな顔で見ないで、ばれたら怒られるからー!
家の中ではお淑やかなんですよー!
良い子なんですよー!
あー!
困った顔でお母さんが
「ファナちゃん、お母さん兄さんって言ったけど兄妹じゃないのよ、子供の頃から兄さんって呼んでたから」
なんだそうなのか、同郷?焦って損した、ならおっさんだ、いやアルドーさんか?
「前にルブルから手紙貰ってな、4年位前だけど、で丁度リガールに来たから顔見に来たんだよ」
手紙って良く届いたな、この世界は人から人に繋いで運ぶから何時届くかわからないし手紙自体が行方不明になることも多い。
あーそうだ、アルドーさんに地図を借りてお母さんに見せてみた。
「これお父さんが描いた地図だって」
「すげーだろ、ルブルの描いた地図」
お母さんは手で口を押え隣の部屋に小走りに消えていった、変な笑い声が聞こえてきたのは気のせいだろう。
お父さんが帰って来るとお店は早仕舞にしてアルドーさんと夕食になった。
ロント居たのか!何時まで居るんだ?
え、一緒に食べんの?
食事の準備を手伝ってとお母さんに頼まれた、アルドーさんの話は聞きたかったが仕方ない。
今日は少し贅沢にするらしい、お、腸詰だ!
芋の皮を剥きながら、ふと、”ちーずちーずへんなぁちーずぅ”って鼻歌を歌うと、お母さんがうずくまり震え出した風邪かな?
なぜか怒られた、理不尽だ。
お母さんとても気合入ってた、夕食美味しそうです。
楽しい夕食だった、アルドーさんの旅の話に俺とロントは食事の手が止まり何度注意された事か。
早めの食事だったので暗くなる前にロントが帰って行った。
「ありがとうございます、ごちそうさまでした」
・・・お前ちゃんとお礼言えたんだな!
外まで見送ってじゃな~と手を振ってやるとすごく嬉しそうだった。
まぁ面白い話聞けたし、ご飯も美味しかったし良かったなロント。
さてお父さんとアルドーさんの相手か…お父さんの娘自慢を嫌な顔一つせず、頷きながら聞いてくれるアルドーさんマジ天使。
両親の子供の頃の話とか面白かったし、久しぶりに会ってお父さんとお母さんも嬉しそうだ。
食器も片付けお酒が出てきた、大人の時間だな残念だがこの辺りで退散しよう。
「そろそろ寝るね、おやすみなさい」
「なんだもう寝るのか?寂しいじゃないか~」
アルドーさんがニヤニヤしてる、、
「ファナ~おやすみのチュウを・・・「して無いから!」
軽くお酒が入ってお父さんのテンションがいつもよりおかしい
早く部屋に逃げよう。
ベットに潜り込み目を瞑る。
俺の中で冒険者の印象が大きく変わった、荒くれ者の集団ってのが冒険者だと思ってたんだけどな。
色々と聞いた話を思い出し名も知らない街や風景を夢想する。
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「最近どうだ?この辺りは安全か?」
「そうだなぁ比較的安全かな魔物の目撃もないし」
「どうしたの心配事でもあるの?」
「ん~北の方で魔物の目撃や討伐数が増えてるらしいんだ、ここに来るまでにも何度か遭遇してな」
「恐ろしい話ね」
「まぁ今日ぐらいは楽しく飲もう、再会に乾杯だ」




