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地方生まれの聖女様  作者: タタラ
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「私」と勇者と魔王4

見渡す限りの魔物の群れに魔女は持てる全ての魔法を繰り出し魔物達を焼き払い爆ぜ飛ばす。

聖女は騎士達に加護を与え魔物達の動きを惑わせ騎士達の援護を開始する。

魔物の群れを前に一歩も引かず迎え撃つ聖騎士と騎士達。


しかし、騎士達は黒い波に一人、また一人飲み込まれていく。




血の臭いが鼻にこびりつく、味方と魔物の成れの果てに囲まれ、ボロボロになり立ち尽くす英雄達の姿がそこにあった。

周りを見渡せば転がる武装を拾い上げ笑うように顎を鳴らす魔物達、完全に囲まれていた。


魔物の大きな黒い瞳が英雄達を睨みつける、俺達の"勝ち"だと言わんばかりに。


「はぁはぁ、此処までかなぁ…頑張ったほうかしら…」

「どうだかな、さて、どうする?」


肩で息をし聖女は空を見上げ

「女神様にでも祈ってみる?奇跡が起こるかも?ふふ」と苦笑いを浮かべる。



奇跡、そう、勇者達をこの世界に送り届けた女神様、その言葉に魔女は跪き祈り始めた。

「女神様…世界をお救い下さい……」


「ここで神頼みしても・・・・って?」


握り締めたペンダントが輝き魔女を中心に巨大な魔法陣が現れた。

赤く輝く魔方陣は英雄達を取り囲むように広がる。


「これは、なんだ…」

「女神さま、世界を…」

「これは…まさか…」


輝き幾重にも重なる魔方陣、聖女には見覚えがあった、この世界には無かった《勇者召喚魔法》

「この魔方陣は…勇者召喚魔…いや…違うこれは…」


聖女は勇者召喚の儀に参列して居たので魔方陣を知っていた、しかし、これは似てはいるが違う物だとすぐ気づいた。

魔法陣から漂う邪悪な気配に聖女が叫ぶと同時に魔物達が奇声を上げ襲い掛かってくる。

「魔女そ...れは...あれ?」


魔法陣が強く輝くと周囲の風景が変わる、英雄達は草原に佇んでいた。


「ここは、魔物どもは何処に…」


さすがに聖騎士も理解が追い付かないのか珍しく不安な表情を見せる。



見渡す限りの草原、穏やかな風が頬を撫でる、さっきまでの戦いがまるで幻で在ったかのように。

魔方陣が英雄達を何処かに転移させたのは間違いないのだから、なぜなら、ここには太陽が無かったのだ。


ある方向だけペンダントが強く輝く、その先に何かあるのだろうと英雄達は警戒しながら進む。

どれぐらい歩いただろう、比較する物が無い為、己の疲労で測ろうとするが全く疲れていなかった、それどころか、ここに来てから力が魔力が溢れそうになる程体に漲っていた。



そうすと遠くに神殿が見えてきた、女神に授かったペンダントに導かれた先に在るその神殿に女神様が居る、いつの間にかに英雄達はそう理解した。

しかし神殿近づくにつれ違和感を覚える、神殿の周りに数えきれない像が並んでいた、まるで生きているような愛らしい少年の像が。


「うわ…悪趣味通り越して最悪だわ…」


聖女が皆の気持ちを声に出し愚痴る。



いつの間にか神殿の入り口には女性が居た、その姿は痩せ細り枯れ枝のようなその姿を白い布で隠していた。

この女性が女神様?どうすべきか何を話すべきか思案していると、魔女の持つペンダントに女の視線が刺さる。


『そのペンダントは…お前達、何処からここに来た?勇者が来るはずだが…』


”女神の授けたペンダント”は強制召喚を込めた神器、勇者がここに来るはずだった。




感情のこもらないその声に警戒心が跳ね上がる、魔女が意を決し伝えようとする。

「これは、勇者様、白銀の勇者様から預かりました、世界の力になると…ペンダントの魔法陣でここに…」


全てを話しきる前にその女から身を切り裂かれるほどの殺気が放たれた。

『ほう、お前に問います勇者は2人居た筈ですが、今何処に?』


震えが止まらない何故この様な殺気を向けられているか理解できないが、勇者の最期を伝える。

「勇者様お二人は神器により異空間に飲み込まれ…消えてしまいました…」


殺気が消えた、全身から汗が噴き出し足元がふら付く。



『そう…そういう事だったのですね…なるほど…ふふふ、全く使えない、消えただと、ブタはともかく銀髪の少年まで』


英雄達はその女の罵声を聞くしかなかった。

『目をかけてやった、神器も渡してやった、人類が幾ら死のうが負ける要素の無いイベントであったはずだ!』

『勇者の餌として魔物をさらに増やした、魔力を蓄えた勇者どもの魂を…計画が…』



その女が髪を掻き毟り叫ぶ、窪んだ眼は禍々しく輝いていた。



「魔物を増やした?幾ら死のうが?、あなたは女神様…なのでしょうか?」


震える声で魔女が問いかけるすると、怒りに歪んだ顔を向け、


『女神?そうねこの世界を管理しているのだからお前達にとっては女神なのでしょう』


その答えを英雄達は信じられなかった、幾ら死んでもいい、この女神の意志により使い潰される命に。



『勇者が居なければこれで終了ね、仕方ないわ滅んでもらいましょう』


救済するところか滅ぼそうとする女神の言葉に我が耳を疑う。



「女神様、どうか、どうか世界をお救い下さい」

「魔女…あなた…」


魔女がふれ伏し地に額を擦りつけるが女神はゴミ虫を見るよな顔で

『諦めなさい、今更なのよ、世界も人類も一度滅ぼして創り直せば良いのだから』

クスクスと笑う。


英雄達は女神を睨みつける


『ほう、お前達、召喚されそこそこの魔力を保有しているな、その魔力私に捧げなさい』


話の通じる相手では無いと聖騎士と聖女が武器を構え身構える。


『『 跪け、その魂を捧げよ 』』


その一言で英雄達は地面に打ち付けられ動けなくなった、どうにか女神に視線を向けると、醜く笑う女神が居た。


『アハハハハハ、末端とはいえ神の名を賜る私に勝てるとでも?』


『戻っても、ここでも一緒でしょ?さぁ死になさい』


聖女の首にゆっくりと女神の手が触れる、凍てつくような冷たい指先に魔力が奪われていく。


「く…あが…こんな…と…ころ…で…」


聖女の顔から生気が無くなっていく、それを見た聖騎士と魔女が眼を剥きもがくが指先一つ動かせなかった。


「俺を先に・・・」




『お待ちなさい、次はお前だから、ふふふ』


一瞬白く輝き


「オヤオヤ、マァマァ、コレハドウイウコトカナ?」




女神の前に一人の少年が現れた、その姿は真っ白な髪に白い肌、目を瞑り笑顔を纏っていた、


その姿を見た瞬間女神が聖女から離れ跪く。

『あ…あ…主様ぁ…なぜこの様な所に…』


「ウン、チョットキニナルコトバガサァ、キコエテネェ」


英雄達は理解が出来ずその様子を見ていた。



女神の前をウロウロしながら跪くその姿を見ていた少年が問う。


「デ、ダ、ホロボス、トハドウイウコトカナ?」


女神は震える。

『そ、それは...』


女神の顔が恐怖に染まる、そう主様に断りも無く世界の理を書き換え勇者を召喚できるようにし、しかも失敗し滅びかけている、主から賜った世界を滅ぼすとも言ってしまった、言い訳のしようがない。

女神はどうすれば主に赦されるか、いや助かるかを思量するが、答えは一つだった。


「ソウダヨ、キミニハ、シツボウシタヨ、アタマヲヒヤシテクルトイイ」

『あ…主様ど…』


少年は指をパチリと鳴らしたその瞬間、女神の姿が消える。


圧倒的な力を持つあがらう事を許さない存在が目の前に居る。


女神が消えた事で英雄達が束縛から解放されるが現状は変わらない所か悪化している。



そんな空気をよそに少年は額の汗を拭う様な振りをすると、


「イヤイヤ、メイワクヲカケタネ、キミタチ」

「コノセカイハ、ケッコウオキニイリダッタノニ、ヒドイハナシサ」


ヤレヤレト言った素振り肩を上げ魔女を見た。


「キミ、イイネ、メガミニナラナイカ?」


「「「はぁ?」」」


聖女は魔力が回復し何とか立ち上がると少年に

「助けて頂いてありがとう御座います、貴方様は…」

「カミ?ダヨ、ソレジャワカラナイカ、メガミヲトウカツスルモノ?コノセカイノ、ソウゾウシュ?ダヨ」


「「 創造主 」」


英雄達がはもる、しかし、魔女は思慮していた。


「私が女神になれば世界を救えますか?」



その答えに少年ははにかむ。


「トウゼンサ、メガミガイナケレバ、セカイハ、ホロンデシマウシネ、メガミノイシデ、サイセイサセル、コトモデキル」

「ハカイ、スルダケガ、シゴトジャナイヨ?」


心配そうにこちらを見ている聖騎士と聖女に魔女は

「…私は女神になります」


二人は何も言えなかった、止めても魔女は聞かないだろうし、魔女は愚かでは無い思慮した上での決定だと。


パチパチと拍手し少年は笑う。


「ヨカッタヨカッタ、ソッケツイイネェ、ユウボウダヨ、キミ」

「ソレジャ、サッソクセカイヲ、スクオウカ」


鼻歌交じりに少年が踊り出す、何事かと英雄達が見ていると神殿も少年の像も消えていく。

「セカイヲ、ショキカシテイルンダ、モチロン、イラナイモノダケダヨ」


クルクルと回りながら少年は

「ソレト、メガミノコウタイヲ、セカイジュウニシッテモラウヨ」


「サァ、サイゴハ、ハデナエンシュツデ、イコウカ」


少年が指を鳴らす、パッチン!




ここはあの空間に移動する直前だった、幾重にも重なる魔法陣、溢れ返る魔物達に囲まれる状態。


だが時間が止まったように魔物達は動かない、聖騎士と聖女が魔女に少し寂しそうに微笑む。


「いってらっしゃい、境界の魔女、いえ、《アリア》」

「無理はするなよ」


ペンダントを握り締め魔女も微笑む。


「ありがとう聖騎士様、いってきます聖女様、いえ、お姉ちゃん」


魔法陣から光の柱が空高く伸びてゆく、その光の塊は大樹を思わせた。

光の大樹から幾つもの流れ星が大地に落ちて行き、魔物達が幻のように消えてゆく。

光が弾けると人々の傷を癒した。

その光の大樹と魔女の姿が大陸中の全ての人の眼に幻想的に映る、それは奇跡、魔女が奇跡を起こした事を大陸中の人が観たのだ。


光の大樹がその輝きを失った時、魔女の姿は無くペンダントだけが残されていた。




《慈愛の女神アリア》 が誕生した瞬間であった。



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『ファナさんが懐かしい物語を読んでるから思い出したじゃないですか…しかし魔王城って…』








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