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地方生まれの聖女様  作者: タタラ
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「私」と敗北

「アハハ!凄いよ!すごいィ!」


初めて感じる燃え上がる様な高揚感が全身を駆け巡る、思考が焼付く頭が爆発しそうだ。

魔物の女王でも元勇者でも元女神でも倒せる!今の私なら負ける筈がない!

「ハァハァハァハァァ」


ズダン!ズダン!ズダン!ズダン!

前のめりになりながら体格からは小さな鉄靴が地面に足跡を刻み白銀の鎧に向かって駆ける。

過剰に放出される魔力が炎の如く赤い鎧から吐き出されていた。


両手を伸ばし白銀の鎧を掴もうとした瞬間に蹴り飛ばされた、巨体を回転させながら壁にめり込む様に叩きつけられ部屋全体が揺れる。

私はそれ程の衝撃を受けても痛みも何も感じなかった。


「あハっあはァハー馬鹿正直に正面からじゃ…ハァハァ…だめだよね~アハハ」


壁に腕を押し付けめり込んだ胴体を引き剥がす様に這い出すと目の前に両手剣(グレートソード)が目に入り拾い上げる。

軽く振るがこれも重さを感じないまるで羽のようだ。腕から魔力を通すと刃が薄らと赤く輝いた。


白銀の鎧はこちらを見据え半身で立ち正眼に構えている、重心を下げ飛び掛かる様にして斬りかかる。鎧の重量を乗せ両手剣を叩きつけるが白銀の鎧に真っ向から容易く受け止められた。


「…何故…簡単に受止められる…なんて…」

両手剣に魔力を通すがピクリとも動かない…何故?


血が湧きたつような感覚が巻き起こり"驚き"が"怒り"に変わる、悔しい悔しい悔しい…溢れ出る魔力が赤黒く色を変える。

思い通りにならない悔しさから白銀の鎧を睨み付ける、ん?腕を伸ばせば簡単に届くじゃないか…左腕を引き手を広げると指先が鷹爪に変化する。


キリサイテヤル


白銀の鎧の胸甲に抉り取るように指先を伸ばすがそれと同時に白銀の鎧に両手剣が弾かれる。


ギャチン!


白銀の鎧の右手が一瞬輝き叩く様に指先が触れると赤の鎧の左肘から先がバラバラに弾け飛び地面に突き刺さった。


「アレ…ウデが…無くなっチャッタ」


砕かれた肘から魔力が赤黒く輝き血のように吹き出す、呆然と無くなった左腕に見とれ白銀の鎧から目を離してしまった。


白銀の鎧は後方に飛びながら幾つかの光の玉を空に創り出していた、着地と同時に剣を横に振り抜けると宙に浮いた光の玉から幾つもの青く輝く稲妻が地面を抉り壁を砕き部屋中に駆け巡る。

鎧に稲妻が当たる度に装甲が小さく削られ転がる武器が稲妻に打ち上げられ青く輝く。


バァガァバァアガガァガァガ!


「ウワァァ」「キャァァ」


今悲鳴が聞こえた?ダレ?魔法障壁を張り周囲を見渡すと這いつくばる様にしている二人が見えた、その周囲を稲妻が走る、


「…ねぇサ…ルニィさん…」


私の張った魔法障壁がいつの間にか無くなっていた。二人の障壁ではこの稲妻は防げない、二人の張る障壁が砕け散り衝撃で地面を転がる、それを見て怒りが引き少しづつ冷静になる。


「お姉さ…エル兄…は?私何してるの?フィル姉さん!エル兄さん!」


稲妻を鎧にに受けながら二人の元に駆け寄り覆い被さる様にして魔法障壁を張るが、何度か稲妻が駆け抜けると少しずつ魔法障壁が罅が入り砕かれる。


『アリャリャ、モトニ、モドッチャッタネ、ザンネン』


どれ位の時間が経ったのか稲妻がおさまると

「フィル姉さん、エル兄さん大丈夫ですか?」

「ありがとうファナちゃん大丈夫よ…」

「あぁファナありがとう」


ゆっくりと立ち上がり白銀の鎧に向き返る、剣を地面に突き刺し柄頭に両手を添えこちらを見ていた。

赤い鎧は魔法障壁を潜り抜けた稲妻に砕かれボロボロになっていた。


「左腕は無くなってるし…もうボロボロだよ…」


何故鎧を纏った時、二人を抱え逃げなかったのか…あの高揚感、万能感は一体…。


『ソノヨロイノ、コウカダヨ、キョウフヲナクシ、タタカウヨウニネ』


(何でこんな鎧を私に…纏わせたの?)


『ゲンジョウ、ユイイツ、アレヲアイテニシテ、イキノコレル、ホウホウダッタカラダヨ』


(だからって・・・)


『オット、カノジョガ(・・・)、コッチニクルヨ』


視線を戻すと白銀の鎧がこちらに向かって歩いて来る、止めを刺しに来るのか如何にかしたいけど…魔力切れだよ。


赤い鎧は二つに分かれる様に開き髪の中に吸い込まれるように消える、地面に倒れ込み起き上がろうとするが体が動かないどころか、ヒュゥーヒュゥー呼吸すら辛い。

体中に意識を巡らし状態を確認する、とんでもない疲労感が意識を刈り取ろうとしている。

(あ…左腕はちゃんとあるんだ…)

『カナリ、ムチャナマリョクノ、ツカイカタヲ、シタカラネ』

『スコシ、イノチヲケズッテ、マリョクニシチャッタ、ミタイダネ』


重い金属音に僅かに頭を動かすと眼の前に白銀の鎧が居た。じっとこちらを見ている様だけど…。


「「貴様は当代勇者か?」」


鎧から発せられた声は恐怖を呼び起こすよに心に突き刺さる。

フィル姉さんとエル兄さんが白銀の鎧と私の間に割り込む。

「ファナにな・・・がっ!」


二人は急に地面に倒れ込み呻き声を上げた。

「体が…起き上がれ…な…い」

「く…どうなって…」


「「貴様は当代勇者か?」」


(何言ってるんだ、勇者な訳無いだろ…勇者なら今頃…倒せてるのかな…)

声を発する事も出来ず白銀の鎧を見上げる事しか出来なかった。




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