「私」と宝物庫
新しい年を迎えちょっとしたお祝いをした、いつもより少し豪勢な食事をした位だけど皆で料理をしたり楽しい一日だったが・・・。
あれからミリルお姉ちゃんと少しギクシャクしてる。
「初々しいねぇ~」
などとフィル姉さんから揶揄れる、でも恋とかじゃ無いんだ。
お姉ちゃんは好きだとは言ってない、相手が私だから姉妹の愛情って言うの?ちょっと表現が大胆になってるんだよ、うん、自分にそう言い聞かせていた、恋愛経験の無い私が勝手に盛り上がって慌ててるだけなんだと思う、少し落ち着きたまえよ私。
いつもと変わらない日常、訓練を行う日々だが私は増加した魔力に振り回されていた。
どうにも上手く制御が出来ず今まで出来ていた事が出来なくなっていた、何をしても過剰に反応する。
最近はお互いに人の高さ程の丸太を建て、それを剣を操り攻防する試合形式の訓練をしている。
使われる武器は剣が4本ずつ火花を散らしながら交差する互いに攻めあぐね斬撃が激しくなっていく、剣が空を舞い金属同士がぶつかり合う音がキンキンと耳に響く、僅かなスキを見つけ思わず力が入った瞬間に派手な音を響かせ剣が一本砕けた。
動揺し一瞬動きの止まった私の操る剣の間を潜り抜けて私側の丸太にエル兄さんの操る剣が突き刺さる。
「むぅ…また砕けたぁ……」
武器を宙に浮かせエル兄さんと剣戟を行うが私の扱う剣が込められた魔力に耐えきれず割れるのだ。
「ファナ少し加減しろよ、剣の予備が少ないんだ」
「分ってるんだけど細かな調整が出来なくて…つい力が入ると砕ける…」
ナイフなら幾らか在るのだが全く使えなくなった、なにげに飛ばしたら弾丸みたく飛び出して見失ってしまった、そんなバカなと何度か試したら全て星になった…。
側で見ていたフィル姉さんが手を叩き剣戟を止める。
「ハイハーイ、二人とも一旦終了してこっち来て」
私達はフィル姉さんお前に並んだ。
バッキバッキと折ってるからなぁ、怒られるかなぁなどと考えていたがフィル姉さんは
「魔物の巣の調査に行こうか」
「「え?」」
いきなりの提案にエル兄さんも驚いていた、魔物は人の使う武器や防具を集める習性があるのでそれを期待しているのだとか、ボロでも良いので回収に行こうという事らしい、原因は私ですごめんなさい。
魔物の巣には行きたかったので俺は反対しないしエル兄さんも行く気満々だった。
フィル姉さんに魔物の巣に行きたいとお願いした後、エル兄さんにもその事を話したら考えるそぶりも見せずに「分かったと行こう」と返事を貰った。
エル兄さんの目的は"魔物の女王"だろう、何らかの因縁めいたものが在るようだが未だに話してくれない所から私からも聞こうとはしていない。
その内判るだろうしそれまでは良いや、あの時エル兄さんは"魔物の女王"を知っていた、どこかで以前に遭遇した事が在るのか、まぁ気軽に聞いていい話じゃなさそうだし。
エル兄さんの顔を見ると何か思いつめた表情だった、思わずエル兄さんの手をそっと握ると大きく白い息を吐き出しいつものエル兄さん顔になった。
「ありがとう、落ち着いたよ」
「うん」
「二人とも向かうのは明日だよ、篭とか準備しとこうか」
「「はい」」
明日の調査は時間が掛かるかも知れないので保存食なども持って行くそうだ、後は背負い篭の準備をし今日の訓練は終わった。
アリアが言っていた何かを探しに魔物の巣に向かうんだが見つかるのか少し不安もある、後ミリルお姉ちゃんに魔物の巣の調査に行く事を伝えて遅くなるかもと伝えておいた。
当然のように心配してくれるんだけど今までと少し違う、何ていうか悲しそうなっていう表現が合いそうな顔をしていた。
翌朝、3人で北の山に向かった、見送ってくれたお姉ちゃんはやっぱり悲しそうな顔をしていた、それが気になり言葉少なく二人に付いて行く。
「どうしたんだ?やけに静かだな変な物でも拾い食いしたのか?」
エル兄さんが気にして声を掛けてくれた?のだが静かだとおかしいか?ん?それじゃあいつも五月蠅いみたいに聞こえちゃうぞ?
フッ…愚か者め精神的ダメージを与えて静かにさせてやろう。
「今朝起しに行った時…エル兄さんのその…一部が…思い出したら恥ずかしくて…」
両手で顔を覆う様にし指の隙間からエル兄さんから顔を見る。
「は、はぁ?そんな事あるか!っていつ起こしに来たんだよ!」
こーゆ―事にはすぐ冷静さを欠くなぁエル兄さんは。
「驚いてすぐ部屋から出て行ったから~」
親指と人差し指で適当な幅を作り見える様に手首を振る、これで信じるだろ?とういかエル兄さんのお年頃なら普通だろ?朝テントなんて。
まさに「ぐぬぬ」と言いながら赤くなった顔で静かになったエル兄さんと肩を震わせ静かに笑っているフィル姉さんと空を駆けて行く。
北の山に到着し上空から様子を窺うが魔物の姿は見えず煤塗れになった空洞がそこに在った。
流石にこのまま突入する訳にもいかない、ガスとか溜まってると危険だって事で3人で風を空洞内に流し込んだ。
鈍い音を放ちながら渦を描く様に流れ込む空気、少しすると山の中腹や森の中から黒い煙が多数上がり始めた。
「結構な数の出入口が有ったんだね」
「ん~結構な広さになってたねぇ聞いてたけど驚いちゃったよ」
「そろそろ降りましょう師匠」
魔法障壁を少しずつ下に作り直し空洞へ降りて行く、内部はやはり暗く視界が利かないので魔力で明りを灯す。
それなりの明るさを確保し周囲を確認するがそこに在ったのは炭のような魔物の死骸だけだった、底に着き足元の残骸を踏むとクシャリと音を立て砕け僅かに煤が舞う。
見渡すと焼け焦げた武器が幾つか転がっていたが使えそうに無かった。
「ん~武器とか黒くなっちゃって見つけにくいねぇ」
「すみません…」
「あ~責めてる訳じゃ無いよ、多分どこかに保管庫みたいな部屋が在るはずだから探そうか」
壁に幾つかの通路らしき穴が在るがどれが何処に繋がっているか、そう言えば"魔物の女王"の逃げた穴は確かこの穴だっけか…。
思い出すのは不気味なその姿、女性の上半身に芋虫の様な胴体に多数の人の足が生えた異形の生き物、その顔は人のそれでは無かった、私から言えばアレこそが魔物だ、2本足の蟻なんて可愛いものだ。
脱出時の事を思い出しながら探していると他の穴より大きい穴が在った、奥は暗く何も見えないはずだが、魔力と言うかぼやけた光が見える様な気がした。
「フィル姉さんこの穴を確認したいんです、確か"魔物の女王"の逃げた通路だと思うんです」
「ん~まぁ確認しとこうか二人とも武装しといて、後ファナちゃん明かりよろしくね」
緊張した面持ちで身体強化をし持って来た剣を纏う。
「私はこれで良いかな~」
そう言いながらフィル姉さんはその辺りに転がっていた武器を数本自分の周囲に漂わせた。
フィル姉さんを先頭に通路を進んで行くと幾つかの炭と化した魔物の残骸が転がっているだけで"魔物の女王"は見つからなかったが行き止まりに無骨な大きな扉が存在していた。
「こんな扉があるなんて、他の部屋には扉なんて無いのに」
「そうだったな、何か大事な物でも在るのか」
エル兄さんと二人この洞窟内を逃げ回って居た時見た部屋には扉なんて無かったの思い出していた。
重厚な開き扉は煤で汚れはしていたがキッチリと閉まっており内部は問題なさそうだが、問題は扉に開かれたような跡があった事だ、だとすると魔物の生き残りが内部に居るかもしれない、いや"魔物の女王"が逃げ込んでいるかも…。
「じゃあ開くよ、油断しないでね二人とも」
フィル姉さんが扉に手を掛けゆっくりと押し開いた、開く先から魔法障壁を張り警戒したが何かが強襲して来るような事は無かった。
部屋の中に明かりを灯すと無造作に積まれた武器が小山を作り武器以外の装飾品も置かれているのが見えた。
「うわぁ武器が沢山ある、保管庫かな?」
「取り合えず周囲の確認をしましょう、ファナちゃん明かりを増やして」
部屋が広く全体が見えなかったのでさらに明かりを増やすと壁際まで見通せるようになる、すると部屋の中心に山積みされた武器に腰掛けるようにして漆黒の鎧に白銀の鎧が此方を見ていた。




