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地方生まれの聖女様  作者: タタラ
32/63

「私」とダンジョン3

仄かな明りを灯しながら洞窟の中を進んで行く、洞窟の中は道の左右に部屋が並ぶ造りで曲がりくねってはいるが基本的には一本道の様だった。

湿気った壁がこの通路がまだ出来て間もないように思わせた。

「魔物居ないね」


この辺りは広げたばかりでまだ住み着いて居ないのか空き部屋ばかりだった。

前を歩くエル兄さんに話しかけると少し緩んだ声で答えてくれた。


「戦闘は少ない方がいいさ、疲れたのなら少し休もうか?」


「ありがとうでも大丈夫」

力こぶを作るようにポーズを取りニッと笑う。

エル兄さんは小さく頷くと通路の角に身を隠しながら暗闇の先に眼を向けている、何か居たのか立ち止まり俺にも止まる様に左手を向けた。


少しすると暗闇の中から足音が聞こえて来た、数は2体いや3体だろう。

初戦で逃げられかけた教訓から出合い頭に退路を塞ぎ一気に仕留める、エル兄さんがキッチリと魔物を仕留めるのを信じての作戦だ。

いざとなれば俺も参戦する今まで修行して来たんだ俺にだって出来る筈だ。

俺は魔力を強めに纏い魔法障壁を張る準備を始めると・・・パッと通路が明るくなる。

一体何が起こった?・・・・あ・・髪が輝くのを忘れてた。


エル兄さんは急に明るくなったのを驚いて俺を見た、その顔は”お前は何をしてるんだ?”と言わんばかりの表情だ。

俺は両手を体の前に突き出し違う違うワザとじゃないんだよ!っと左右に振るが暗闇の先から魔物が駆けてくる足音が聞こえて来た。

「見つかったファナ俺の後ろに続いて足止めを頼む!」

「はい」


エル兄さんの後に続いて通路に飛び出し灯りをばら撒くとすぐに魔物を視認できた、数は・・・2体?俺達を見て魔物が足を止めるが闇の中から離れて行く足音が聞こえる、一体に逃げられた?

エル兄さんなら2体位余裕だろ、なら逃げた一体は俺が倒す!


「エル兄さん目の前の2体お願いします!」

「ファナ待て!」


バレてる以上抑える事も無い、一気に駆けだすと目の前の二体にエル兄さんのナイフが襲い掛かり魔物の関節を切り裂き動きを止めてくれた。


その脇を駆け抜け逃げた魔物の後を追う、前のめりに倒れるような体勢で地面を蹴ると土煙があがる、髪の輝きを明りにして飛ぶように進む。

直ぐに逃げる魔物に追いつくと纏わせているナイフを魔物めがけて撃ち出すように飛ばした、だが動いている為に関節部には当たらず甲殻部位に微かな傷をつけ弾かれた。

「く~外した、でも弾かれるとかどんだけ固いんだよ!」


魔物は振り返りもせず走り続けている、

「俺の攻撃は気にする程でも無いって事かよ」


仕留めれなかったからには足止めっと!

腰を落とし地面を滑るように勢いを落とし魔法障壁を魔物の進行方向に多重に張り巡らせる。


ガンゴン!

急に現れた障壁にぶち当たり「ギギョガ!」と悲鳴のような声を上げ魔物が仰向けに倒れた、エル兄さんはまだ追いついて来ない俺は急いでナイフを回収すると攻撃態勢に入る。

魔物がギチギチと関節を鳴らしながら起き上がり俺を見ながら少し体勢を低くし顎を激しく鳴らす。


魔力を込めるとナイフが空を切る音を立てて回転する、かかってこいやー!・・と言いたいとこだが流石に少し不安だ、だが俺も強くなってる筈だやれる!


「落ちつけ俺、集中して制御しろ関節を狙う、それ以外は弾かれる」

成すべき事を声に出し大きく息を吸いゆっくりと吐き出す、こっちは飛び道具だ近づかれなければ恐れる事は無いよな。

「・・俺だって勝てる倒せる」


そう呟くと魔物は飛び掛かる様に俺に向かってきた、小さな障壁を前方に出し動きを止め左右からナイフを脚の関節めがけて飛ばすが魔物はいきなり立ち止まると両腕で弾く様にナイフが叩き落される。

「うっそ、こいつ攻撃に反応しやがった!」


エル兄さんの時は切り倒せてたのにこいつだけ特別か?

やばいやばい、手持ちの武器両方飛ばしちゃった急いで回収しようとするが魔物が障壁を叩き割り俺に向かって鉤爪を振り降ろしてくる、とっさに体を捻り避けたがコートが少し切り裂かれた。


武器の回収と魔物の接近に気を取られ障壁が間に合わなかった、戦い慣れしていない俺では一対一でも正面から戦うのは厳しいのか?エル兄さんなら余裕で倒すのに・・・くそ・・


障壁を張りつつ防御に徹するが魔物の4本の腕が縦横無尽に振り回され俺の障壁を砕き避けきれない攻撃が俺の服を体を少しづつ傷つけていく。

飛び散る血と砕かれ輝き四散する障壁が俺の精神が削られていく様に見えた。

張り直す障壁の強度が少しづつ低下しているのか勢いを殺す事しか出来なくなっていた。


"何でこんなん簡単に障壁が割られるんだよクソ!"焦りと苛立ちから心の中で悪態をつき必死に魔物の攻撃を避ける、いつ直撃を受けてもおかしくない、まだエル兄さんは来ないしどうすればいい?焦りが更に集中力を削ぎ追込まれる。


魔物の右からの攻撃を躱し左の鉤爪を障壁で抑えた所で3本目の腕の攻撃を躱しきれず"ズドン"腹部に衝撃が走り壁に打ち付けられた。

「あぐぁ」


一瞬目の前が真っ暗になるがすぐに意識が戻りずり落ちる体を支える、ここで気を失えば殺される、反撃をと思うが一撃を貰って強張った体が動かない。


追込まれ更に魔物の連打が襲い掛かる、それに耐えるように障壁を張るが砕かれる音が鳴り響く。

「もう、だめだ・・・耐えきれない」


一瞬の弱気が精神に影響したのか魔物の蹴りが障壁を全て砕き俺の体を吹き飛ばした、壁にぶつかり衝撃で呼吸が出来ず地面に転がった。

「・・・はぁがぁいぎがぁ・・」


動けなくなった俺を見つめる魔物が嬉しそうに顎を鳴らす、俺はまた魔物に・・・勝てないのか。

力なく地面を叩きつけると悔しくて涙が流れ落ち少し開いた口から荒い息と同時に嗚咽が漏れる。


魔物の手が俺のボロボロの腕を掴み持ち上げようとするが抵抗する事が出来ない、足が着かないほど持ち上げられると残りの腕も俺の手足を掴みメキメキと音を立て千切る様に力が込められてゆく。

「ぐぁ、てめえに殺される位なら・・・死ぬ気で魔力を込め燃やしてやる!」


洞窟内で炎を出せばどうなるか?知ったこっちゃない道連れにしてでも・・・。

魔物の頭部に集中し爆発するような熱を発する様に念じる、エル兄さんなら回避してくれるはず・・

だが痛みのせいで思う様に集中できず魔力を集める事が出来なかった。

痛みで意識が遠くなって来たここまでなのか?

「どこまで駄目なんだよ俺は…エル兄さん…助けて…」


ギャイン!

その時視界の端に光が見えたのと同時に魔物の腕が断ち切られ俺と魔物の腕が地面に落ちる。


「ファナ大丈夫か!」

エル兄さんが駆け込んで来た、その顔は泣きそうな表情で地面に倒れ込む俺を抱きかかえて顔を覗き込んでいる。

「だ、大丈夫じゃないけど・・・大丈夫」


俺はそっと顔を逸らす全身ボロボロ、カッコつけて飛び出した結果がこれだとか情けなくて恥ずかしくてエル兄さんを見る事が出来なかった。


少し離れた所で魔物の倒れる音が聞こえた、俺とエル兄さんの実力の差、同じ魔法使いでありながら何も出来ない俺に魔物を屠るエル兄さん、最近の修業で強くなったと勘違いしてたとしか言いようがない。


「ここは危険だ、少し戻ろう休息も必要だろ?」

優しい声だった俺は両手で口を押えクシャクシャな顔で声を殺し泣き始めてしまった。


エル兄さんは蹲り泣いている俺を抱きかかえ来た道を戻り適当な部屋の中に俺を運んでくれた、どれ位泣いたのか気が付くとエル兄さんのコートが掛けられていた、少し眠っていたようだった。


俺は目を覚ますとすぐに治療術の奇跡で傷を治しエル兄さんを探すと入り口近くに腰を下ろすエル兄さんがナイフの確認をしながら俺をチラ見していた。


俺の思い上がりで迷惑をかけてる、何と言って謝ればいいか思いつかずじっとエル兄さんを見つめていた。

黙っていても仕方ないのでコートをエル兄さんに返し

「ごめんなさい、怪我してない?」

これしか言えない自分が嫌になる。


「俺は大丈夫だよ、もう少し寝てろ魔力を回復できてないだろ?」

そう言ってコートを俺に渡してきた、髪を確認すると少し色が抜けていた。

だがダンジョン内は肌寒いコート無しではエル兄さん寒いだろ?

「うん、少し休むね」


そう言ってエル兄さんの横に座り込みコートを俺とエル兄さんの肩に掛ける様にした。

「おいファナ?」

「コートないと寒いでしょ?俺も温かいし」


エル兄さんは少し困った顔で俺の肩を引き寄せる、

「そろそろ"俺"って言うの止めろよミリルさんに怒られるぞ」


「そうだね、ここから出られたら考えるよ」

そうだココから脱出出来たら考えるよ、これまでの事、これからの事、何すればいいか考えなきゃね。


◇◇◇◇


「フィルノールさん幾らなんでも遅すぎます何かあったんじゃ?」

夜中になり外は少し吹雪き出していたのに二人が帰ってこない。


「ん~流石に遅すぎる、でもエルゼルも一緒だろうから大丈夫じゃないかな?」

フィルノールさんのエルゼル君に対する信頼からか心配こそすれ大事にはならないと思っている様だった。


だが私からすれば散歩に行くような服装だし何より年頃の男と少女の二人が夜を共にする・・・あぁ心配で心配で仕方ない、落ち着かず部屋の中をウロウロしていた。

「真っ暗だし明日の朝探しに行くよそれでいいかな?ミリルさん?」


暗闇の中探しても二重遭難?の可能性もある無理は出来ないがファナに手を出していたら・・・潰しますよエルゼル君・・・ワキワキとナニかを握り潰すように指を動かしていると


「ミリルさん顔怖いよー・・・」

キッと睨むとチビチビとお酒を口にしていたフィルノールさんはいそいそと自室に戻って行った。

エルゼル君、特にファナ無事でいてくださいね。





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