第九十七話『金の比重 19.32』
「あの〜、私、しんでませんけど」
とボロボロの珊瑚が、なんとか声を出して、笑った。
「でも、ありがと」
と、珊瑚が僕に言った。
「ツンデレだわ・・・」
「ツンデレですね・・・」
とうちの女子陣が小声で言った。定番になりつつ、あるやり取りだった。
「君ら聞こえとるで!!」
と、珊瑚が二人に突っ込む。
「たしかにボロボロ過ぎて、突っ込むのもつかれるんやから・・・」と珊瑚が水晶に抱えられながら立ち上がる。
「よかった、よかった」と言う水晶さん。
「水晶さんのスキルのおかげで助かりました。防具に、コンタクトなんてあるんですね」
と、僕が言う。メガネがあるんだから、コンタクトがあってもおかしくないか、と言ったあと、思った。
「ふふ、女のお洒落は目元からよ」
と、にやりと笑う水晶さん。そういえば、この三人は、知り合う前から奈緒子が知っているほど、「ラスト・オンライン」の雑誌のおしゃれコーナーにのるほどの三人なのだった。
「よし、ゴールドゴーレム2体も倒したわよ!!」
おもにジュンがね!!と付け加えて言うサラ。
「いったい、いくら、ゲット出来るのかしら」とサラが言う。
「そうだった僕らは115万ゴールドくらい、欲しいんだった。」と本来の目的を思い出す僕。
「『金』ってどのくらいの価値なんですか?」と奈緒子が僕に問う。
「今日の金相場が1g 4,370円だね」
「なんで知っとんねん・・・」即答する僕を、珊瑚が笑う。
「ジュンさんは何でも知ってるんですよ!」
と、奈緒子が言う。
「おさげの委員長じゃないんだし、なんでもは知らないんだけど・・・」と、軽くつっこむ僕。いまは、おさげじゃなかったな、あの委員長。
「ほいで、ミニゴーレムくらいだといくらになるんや?」
そろばんを叩くジェスチャーで僕に聞く珊瑚。さすが関西人。
「小学生の男子がだいたい35キロ位だから、単純にそのキロ数だと、4373円×35キロだから、1億5305万5千円くらい」
「くらい、じゃないですね、相変わらず」と奈緒子が笑う。
「なんやそれ、いま計算したんか!!」と珊瑚が驚く
「計算にはコツがあるんだよ!」といつものやりとりをする。
「計算はこれでおわりじゃないんだ」
「え、どういうこと?」
と続ける僕。訊ねるサラ。
「比重が違うからね。金は人の19.32倍重い」
「つまり、約29億5702万2600円」
と僕が言う。
「これが、ゴールドゴーレムの値段。さらにビッグゴールドゴーレムはだいたい大きさが2倍だから、重さはその3乗倍の8倍、これはほんとに約232億円」さすがによくわからなくなるので数字をまるめた。
「つまり、2体合計で、261億円。だから一人あたり43.5億円」
「そんなにか!!」と驚く珊瑚
「でも、『ゴールドゴーレム』がぎっしり金だったらね。実際には、あの大きさで全部『金』だったら、動けない気がするから、コーティング部分だけだろうね。0.1%が金だったら、435万円」と、僕が言う。
そんな計算していると、獲得金額が表示された。
「すごい、ぴったり435万ゴールドです!」
奈緒子が表示された、数字を見て読み上げる。
「え、手品??」珊瑚がそう言った。
僕らは、一人435万ゴールドを手に入れた。





