第九十六話『未来予測 - ビジョン』
「ジュンさん、後ろにいる、ゴーレム、その『ゴールドゴーレム』より強いです。」
そう、たぶん、今倒した、ゴールドゴーレムの親『ビッグゴールドゴーレム』が現れたのだった。
「ジュンくん、右後ろに避けて」
水晶さんが叫ぶ。水晶さんにそう言われて、ジャンプする。すると、遅れて、元いた位置にゴールドゴーレムの親であろう、『ビッグゴールドゴーレム』が攻撃を叩き込んできた。
「これは？？」と僕が驚く。
『ビッグゴールドゴーレム』が唸る。
腕を上げて怒りを露わにする『ビッグゴールドゴーレム』
「ジュンくん、左腕のストレートが来るから、左に避けて」
そう言われて、左に跳ぶ僕。なんとやはりまた綺麗に避けられた。
サラや珊瑚と違って体術が得意ではない僕でも、水晶さんの助言に従うと、『ビッグゴールドゴーレム』の攻撃を避けることができている。
「すごい、水晶さん。まるで、未来を予測しているみたいだ」と、そこまで言って気がついた。
「まさか、ほんとに未来を予測している？？」と僕は思い至って訊ねる。
「そう、この『魔女のコンタクト』についているスキル『未来予測 - ビジョン』よ」
と瞳を指差す水晶さん。
「すごい！！ランクA+のレアスキルですね！！」
そう、『未来予測 - ビジョン』はかなりレアなスキル。
「ほんとは内緒にしたかったけどね。珊瑚ちゃんの仇よ」
と水晶が言う。温厚な水晶さんが怒っているらしい。
「まだ、死んでへんって」
とボロボロの珊瑚が手を地面につけながらかすれた声で、言う珊瑚。なんとか生きているが、確かに、ボロボロではあった。
「実際にはどういうふうに見える？？」と僕が聞く。奈緒子のスキル「天秤 - ライブラ」はなんとなく敵の強さが色で表示されるという。つまり、そのままの未来がほんとに表示されるわけではないはず。
「影が見えるのよ！レースゲームのゴーストみたいな感じ。数秒後にいるであろう位置に影が出来るのよ。」
「なるほど、敵の位置なら、向こう側の処理だから、簡単に出来そう」と内部的なことを想像する。
「仲間の動きも予測できますか？？」
「できるわ、こちらは、そんなに精度がよくなくて違うこともあるんだけど」プレイヤーの動きの精度はそんなに良くないと告げる水晶。
「どういうことですか、ジュンさん！？」
「つまり、カーナビなんかの、到着時間予測と一緒だね。直近の1分間、時速5キロで進んでたら、一時間後は5キロ先にはついてることが予測できる。」
「なるほど、信号で止まったりしちゃうと、予測時間がかなり変わってしまうのはそういうことだったんですね」
と身近な例で考える僕ら。
「そう、でも、人の直感って全然当てにならないから、めちゃくちゃ便利」精度が低くてもあるだけで便利なものはたくさんある、電池の残り時間とか。
「ジュンくん、お話はそこまでよ！、右腕を上空から振り下ろしてくるわ」「ありがとうございます！！」
水晶さんに感謝する僕。
「次で倒します！！」
完全に予測された、ビッグゴールドゴーレムの攻撃をジャンプで避けSSSランクの武器「 神の剣 -デュランダル 」を構え、打ち下ろす。
「悪いね、珊瑚ちゃんの仇は取るよ！」
と、ゴールドゴーレムに剣戟を与え、ビッグゴールドゴーレムを倒した。
「あの〜、私、死んでませんけど」
とボロボロの珊瑚が、なんとか声を出して、笑った。
