第五十八話『D級英雄1位チーム ジェムボックスの実力 前編』
「行くで!」
珊瑚はそう言って、スキル『二刀流 - デュアルソード』を発動させた。両腕を振り、2つの刀を構えて、『仔竜 ミニドラゴン』に向かって、笑顔で走り出す珊瑚。
「え?!『二刀流 - デュアルソード』だって!?」僕は驚いた。
「え、なに??すごいの??」RPG初心者の格闘少女サラが僕に聞いた。
「『二刀流 - デュアルソード』、それもA+ランクのスキルだ。」奈緒子の「天秤 - ライブラ」と同じく、と僕が伝える。
珊瑚は、いきなり『仔竜 - ミニドラゴン』に向かって二刀流の剣で斬りかかる、右で一撃目、左で二撃目、右で三撃目、左で四撃目と、目にも留まらぬ速さで、体を回転させながら、連続攻撃を繰り返す、両腕がまるで別の生物のように自由に動く。『仔竜 - ミニドラゴン』にドンドンとダメージが蓄積されている。
スタッと着地して、「あとは、瑠璃よろしく」と頭を伏せながら、瑠璃に合図を送る。
「ほいほい」そう言いながら、杖を振り上げる魔法使いの瑠璃。
『魔法連射 - ラピッドファイヤ』が発動された。
瑠璃の杖に光が集まる。
「ファイヤ、ファイヤ。ファイヤ、ファイヤ」
瑠璃はそう言いながら、ファイヤを四回連続で放っている。よく見ると、直線に放たれたファイヤと、放物線に放たれたファイヤが混ざっている。
「すごい!!」
同じ所に気がついたのか奈緒子がつぶやいた。
「魔法が当たる時間に、差をつけて、ダメージ後の無敵時間が終わった直後に、次の攻撃が当たるようにしているんだわ」信じられない、という様子で口元を手で隠す奈緒子。
「すごいな、神業だ。」
大体のゲームは連続で攻撃が入らないように、一回ダメージを受けたら、しばらく次の攻撃を受け付けないようになっている。それがないと、一度ダメージをうけると、永遠にダメージを受け続けてしまうからだ。
瑠璃はその、敵によって違う、無敵時間を見切って、無敵時間直後に魔法が当たるように軌道を変えていた。
「すごすぎますね、これはサラちゃんと同じく「マニュアル操作」じゃないと出来ませんね。魔法使いでも「マニュアル操作」の人がいるなんて・・・。マニュアル操作で魔法を当てるのはかなり難しいのに・・・」と試したことがあるのだろう、『オート操作』と『マニュアル操作』を切り替えて使っている、奈緒子には衝撃的な攻撃だった。
「リフレクション!」突如、水晶さんが珊瑚にリフレクションの魔法をかけた。
「え??」僕らは、なぜその行動を水晶さんが取ったのかわからなかった。
だが、数秒後わかった。
珊瑚と瑠璃が攻撃していない方の『仔竜 - ミニドラゴン』が珊瑚に向いて、炎を吐いていた。
「へっへっへ」と珊瑚が笑う。バリアの呪文で珊瑚に炎が当たらない。
ドラゴンが吐いた炎が、水晶が唱えた魔法『リフレクション』で跳ね返り、『仔竜 - ミニドラゴン』が大ダメージを受けた。
「さ、一気に行くで」
珊瑚が、畳み掛けるように飛び出した。





