第五十〇話『キングガーゴイル』
「来たなー!!」格闘少女のサラが、スッと構えを取る。
「D級英雄ランク戦」第三のチェックポイントのボス、『キングガーゴイル』が現れた。第一のチェックポイントに現れた、「ガーゴイル」に当然の如くデザインが似ている。
「でかー!!」
「大きいですね」
「大きいな」
全員の感想だった。
第一のチェックポイントのボスだった「ガーゴイル」を一回り大きくした上、王様のような帽子を被っているのが「キングガーゴイル」の特徴だった。「ガーゴイル」とは違って、ゆったりと体を動かしている。その動作が攻撃力の高さを想像させ緊張感が高まった。
「これは強そうだ」と、僕が言うやいなや、サラが飛び出した。高速で走りだし、ガーゴイルの頭上へジャンプする。まず、巨大なガーゴイルの胸辺りの高さに飛んだ。さらに、スキルを発動させる。サラの足元が光る。
「『二重跳躍 - ダブルジャンプ』!!」
サラは、その高さから、二段飛びのスキル、『二重跳躍 - ダブルジャンプ』を発生させ、さらに上空に飛び上がった。バランスを華麗にコントロールし、『ガーゴイル』の頭上を維持する。
『キングガーゴイル』の視線は、サラに追いついてはいない。そのまま、サラは、足を大きく掲げ、巨大なモンスター『キングガーゴイル』へかかと落としを放った。
「グググゴゴゴオオオオ」
キングガーゴイルの呻き声が響き渡る。綺麗に攻撃が決まった。サラは、一瞬の判断で、相手の死角に飛び、そのまま、攻撃したのだ。サラは、どんどん攻撃がうまくなっている。これは、身体能力と、素早い判断能力の両方がないとできないことだ。
「よし、まずは一撃!」と、サラが笑い、『キングガーゴイル』に大きなダメージを与えた。さらに、次の攻撃の態勢に移っているサラ。とにかく判断が速い。
「すごい、このまま、また、サラちゃんが倒しちゃうんじゃ」奈緒子がサラの攻撃に驚いている。第一チェックポイントの『ガーゴイル』を一撃で倒してしまったことを思い出しているのだろう。サラの速攻は驚くほど速い。まさしく速攻なのだ。
「うん、ただ、キングという名前が気になるんだよね」
「え?!?!」
僕が、ぼそりとつぶやいた。それに驚く奈緒子。
僕には、ある予感が走っていた。キングというからには王様。王様は一人では王様ではないはずだ。それはつまり。そこまで考えた。そのとき。
僕の予感は現実に形を変えた。
「キングガーゴイルは仲間を呼んだ!」CPUの音声でアナウンスされる。
そして、いままで何もなかった空間が光り出し、2体のガーゴイルが呼び出された。第一のチェックポイントのボスだった「ガーゴイル」がだ。
たった一体の『ガーゴイル』で、初心者三人の冒険者を全滅に追い込んでしまった。あの『ガーゴイル』が2体。しかも、当然『キングガーゴイル』も残っている。
「うそ・・・でしょ・・!?」サラがそう言った。





