第四十三話『転送完了』
「よし、登録完了！！」
チーム名に『ドラゴンハンター』と入力して、エントリーが完了した。ついに「D級英雄ランク戦」が始まる。
「よし、始まるよ！」
と、僕が格闘少女のサラと魔法使いの少女奈緒子の二人に言う。うん、と二人がにっこり微笑んで、頷いた。
「『D級英雄ランク戦』のフイールドに転送します」と、無機質なCPUのアナウンスが流れる。三人の体が光り出し、それぞれの地面に魔法陣が現れる。キュインキュインと光の音がする。体もだんだん透明になり、転送の準備が始まる。
「きたきたー！！」
サラが、大きなリアクションを取って、楽しそうにしている。転送待ちというのは、テンションが上がるものだ。いつものように、ストレッチをして、ぴょんぴょん飛び跳ねるサラ。
「やっと始まるんですね！！」
奈緒子もサラのストレッチを眺めながら、楽しそうにしている。奈緒子はサラをしっかりと振り回したショッピングもたっぷり楽しんだようで、準備は完了という趣だ。
「そうだね」
僕も、少し緊張してきた。受験勉強とかもそうだけど、みんなが集まって、待っている時間というのが一番緊張するな、と思う。
「転送が完了しました。」無機質なCPUのアナウンスが到着を伝える。たくさんの人がいる。初心者のほとんどがこの『D級英雄ランク戦』に参加している。
東京マラソンの参加者が3万6000人だという。それより遥かに多い人数が、この『D級英雄ランク戦』参加している、これはワクワクを隠すことはできない。
「すっごーい、こんなにいるんだ！！マラソンの大会だってこんなに集まらまいよ！！東京マラソンの何倍？？4、5倍はいるような」
運動少女のサラのテンションが上がる。現実世界でも大規模の運動大会に参加しているのだろう。規模感をつかむのが速い。
「これは、すごいですね、緊張しますね」
と、僕の裾をぐっと引っ張り、呟く奈緒子。たくさんの人にいきなり囲まれて、人見知りであろう奈緒子がつぶやいた。
「うん、楽しみだね！！」
現在の順位が表示された
チーム名:ドラゴンハンター
順位:D級60,000位
「6万位！！？」
負けず嫌いであろう、サラの瞳が、その順位を聞いて、情熱であふれていた。
「君たちも初心者？？」と近くにいた、プレイヤーに話しかけられた。
「そうなんですよ！」と僕は返事をした。
「いやー、楽しみだねー。まさかこんな人数が参加するなんてねー。大人気ゲームとは聞いていたけど、ここまでとは」
「そうですね、現実の空間にこれだけの人が集まるのは無理ですし、圧巻ですね」その人も、この今までのゲームでは体験できることのない状態に感動していようだった。
そうこうしていると、注意を引く開始の合図の音が鳴り響いた。そして、
「『D級英雄ランク戦』を開始します」
無機質なCPUのメッセージが、ランク戦の開始を告げた。
