第二十九話『ゴブリン登場』
「来たわね！！」
サラは満面の笑みで待ち構えていた。
今、練習した「二重跳躍 - ダブルジャンプ」の使い方を、モンスターで試したいな、と思っていたところ、ちょうど、ゴブリンが現れた。
ゴブリンは、スライムに続く、倒しやすい初心者用モンスターだ。どちらかしか出てこないゲームも多いが、「ラスト・オンライン」は両方出現する。
「バーチャルウォーカー」を使用してキャラクターを動かすため、基本的な体術を必要とする、このゲームにおいては、2つの初心者用モンスター「スライム」と「ゴブリン」は別のチュートリアルの意味を持つ。「スライム」は攻撃の動作を覚えるため、「ゴブリン」は、攻撃してくる敵と対峙するためだ。
「いらっしゃい！！」
と、サラがクイックイッと、手首で手招きし、ゴブリンを挑発をする。それを見てゴブリンに怒りが発生したのかは不明だったが、ナイフを構えて、襲いかかってきた。
「よっ！」
とサラは、ゴブリンのナイフを見切り、ゴブリンと垂直の角度に回転移動する。そして、そのまま、右の拳をゴブリンに放った。サラは体術もさることながら、目が良い。相手の攻撃を見きって的確な攻撃を繰り出すことができる。
すると、ゴブリンにダメージのエフェクトが奔り、破壊音と共にだんだん透明になり、ゴブリンは消滅した。いくらかのコインを落としていった。サラの攻撃力は、前回のレベルアップでかなり上がっており、ゴブリンを一撃で倒してしまった。
「おお、すごい！」
「すごいです！」
僕と魔法使いの少女奈緒子が言う。
「あ！倒しちゃった！！『二重跳躍 - ダブルジャンプ』の練習しようとしてたのに！！」
「あはは、いきなり、強くなり過ぎちゃったね」
と僕は笑った。
「もー、笑い事じゃないわよ！！ジュンのせいだよ！！いきなりレベルを14もあげるから！！練習にならないじゃない！」ぷんぷん、というジェスチャーをしながらサラは言った。
「大丈夫だよ！もっと先に進めば、サラの実力にぴったりのモンスターに出会えるよ！」
「そうですよサラちゃん、先に進めばもっと強いモンスターがすぐ出てきますよ」
と、奈緒子も説得に加わってくれたので、理解してくれた。
「じゃ、どんどんいこう！」とサラが言う。ズンズン進んでいく。
「待って待って！」とドンドン進んでしまうサラになんとか追いつく僕と奈緒子。運動不足の僕達が、彼女に追いつくのはなかなか大変だった。息を切らしながら、進んでいく。
その間も、倒しやすい、モンスターを倒して回った。
レベル14まで上がってしまったので、本来、ここでレベルをあげるように設計されているので、倒しやすいモンスターが多く、かなり楽に進むことが出来た。
ある程度進んできたところで、サラが言った。
「お！！強そうなモンスターが来たわ！！」
「グググググゴゴゴゴ」
新しく現れたモンスターがうめき声をだす。
僕が敵を確認してつぶやいた。
「アーマードゴブリンだ！」
武装をしたゴブリンが現れた。
