第二十八話『ムーンサルト』
「そうなの!?!?」
二人のリアクションに、サラは不思議そうな顔をした。
それは、僕と魔法使いの少女奈緒子が、サラが覚えた新しいスキル「二重跳躍 - ダブルジャンプ」をサラにぴったりだと言ったからだ。
説明するより体感するほうが良いだろうと思って、さっそく実感してもらうことにした。
「一回ジャンプして、そこからまた飛ぼうとしてごらん!」
と僕が簡潔に説明した。
「え、そんなことできるの!?現実の世界でも何度かチャレンジして出来なかったから、壁蹴りで我慢してたのに!」
「そんなことしてたの??忍者の末裔かなにか?」
と、僕は笑ったが、サラなら実際のところ忍者の末裔でもおかしくないところが不思議だ。特殊な訓練を受けていてもおかしくない、と漫画を読みすぎの僕は思った。
「やってみる!」
気にせず宣言するサラ。
「よっ!!」
とジャンプする。放物線軌道を描くサラ。頂点を越えて、降りるところで、もう一度ジャンプしようとした。
「二重跳躍 - ダブルジャンプ」コマンドが発動する。
すると、サラの体が光り、足元にサラとは垂直に円形のエフェクトが描かれる。光の地面が現れたイメージだ。
現実の物理条件では起き得ない加速が、サラの体に働いた。
「わ!!すごい!!」
と、二回目のジャンプのあと後方に回転する、空中後転を決めた。
「どんな、運動神経だよ・・・」
と僕が驚いていると、え、なに?誰でも出来るよね?という顔でこちらを見てくるサラ。出来ないから・・・。奈緒子もできませんよ!という顔でサラを見ていた。
「なるほど、トランポリンみたいな感じだね」
と、言いながら、屈伸をする。さらに体を大きく動かす準備だろう。
「よっ!!」
膝をしっかり沈めて反動を使って、大きく、1回目のジャンプをした。いつもより大きいジャンプだ。この世界での体の動かし方を更に掴んできたサラ。
「もういっちょ」と、光のエフェクトとともに、二回目も大きくジャンプし、後転をくわえさらに、ひねりを加えて着地した。両手を大きく広げて、にこりと笑った。
「オリンピック選手かよ・・・」
「サラちゃんすごいです!!」と、小さく拍手する奈緒子。
「ムーンサルトってどうやるんだっけな・・・・・・」
まだ満足せずに、更に難易度の高い技を思い出すサラ。
「あ、そうだ、二回後転と一回ひねりだ」ポンと手を叩いて。さらっとムーンサルトを行うサラ。
「それ、ウルトラ難度の体操技なんじゃないの・・・」
計り知れないサラの運動神経に驚く。
「よしよし、わかってきたよ!実践で使ってみたい!」
「うん、そろそろ敵と遭遇すると思うよ。」
ダブルジャンプを試しながら、『冒険者の街』へと続く『森の道』を結構歩いていたので、そろそろ敵と遭遇するところだと僕は思っていた。
「ググググゥゥゥゥゥゥゥ」
ゴブリンが現れた。
「来たわね!!」
サラは満面の笑みで待ち構えた。





