第二百五十二話『スローダウン』
だが、その直後・・・
『スローダウン』
『エリートダークウィザード』が、相手の動きを遅くする魔法を発動させた。
「えっ！？」
とアスカが呟いた。
「うわぁぁぁぁぁぁ！」
と籠手弓矢のアスカが叫ぶ。
僕らから見てわかるほどに、彼女の動きが遅くなった。
そう『スローダウン』は相手を遅くする魔法。
動けなくなるわけではないが確実にスピードが落ちている。
「腕が・・・足が・・・遅い・・・」
とアスカが言う。
そう言いながら彼女は一生懸命からだを動かそうとしている。
しかし、いつもの素早い彼女からは考えられないほどの遅い動き。
そんな経験は人生で一度もないだろうから、かなり不安に襲われるはずだ、いきなり、いつも歩いているように歩けなくなる。それはかなりの不安を人間に与える。
「そうか、ゲームだと定番の動きが遅くなる魔法だけど、実際にやられると、いつもの体と動きがまったく違うから、体を上手に動かせる人ほど、パニックに近い状態になるのか・・・」
と僕が言う。
「なるほど・・・すごくイヤだね・・・それ」
とサラが呟く。
とくにサラみたいに、バンバン体を動かせる人は嫌だろうな、と思った。
「あああ、おねぇーさま！」
とアスカが呟く。
そのつぶやきは、自分の体が動かなくて出ているというよりは、逃がして、サヤカとアスカのところにモンスターを逃がしてしまったことを悔やんでいるようだった。
それほどまでに彼女の二人への愛は深いのだろう。
『リザードマン』はすでにアスカではなく普通弓のサヤカの方に向かっていた。
「このぉー！！」
と、体がゆっくりながらも、両方の腕で、『リザードマン』になんとか弓を向ける籠手弓矢のアスカ。
「よし、これなら当たる！」
と籠手弓矢のアスカが言いながらスイッチを押す。
彼女の弓矢は他の二人とは違って、小型の機械式の弓矢だ。
つまり、狙いさえあっていれば、弓矢事態はいつものようにうごく。
彼女がスイッチを押そうとしたその時。
『スピードエリア』
と、もう一体の『ダークウィザード』が『リザードマン』がいる当たりを狙って、一定範囲にいると、スピードが上がる呪文『スピードエリア』を唱えた。
「えっ！」
とアスカが呟く。
「グオォォォ」
と言いながら、グッとはやくなった、『リザードマン』はサヤカの方に走る。
それにより、せっかくアスカが照準を合わせたところには、もう『リザードマン』はいなかった。
パシュパシュッと空を切る。
「サヤねぇーさま！！」
とアスカが叫ぶ。
「なるほど、ここからでは近すぎて普通に打ったら、矢は当たらない・・・避けられてしまう・・・か」
とサヤカが言う。
「グオォォォォ」
と言いながら『リザードマン』は『スピードエリア』のちからにより加速を得て、サヤカに近づいて斬りかかろうとしている。
「これしかないな・・・」
と、サヤカは呟いてスキルを発動させた。
