第百八十九話『戦闘開始』
「ジュン!この人を倒せば、ほんとに『妖精の森の平穏』は戻るってことでしょ?」
「そうだね・・・」
と僕が答える。
C級英雄が倒せる相手ではない事は間違いなさそうだけど・・・と僕が言うより速く、サラは動き出していた。
「じゃぁ、ここで倒そう!!」
と、サラが四天王の一人『鬼王のアルバート』に向かって走りだした。
「え?」
僕が驚く。
普通はそんな事はしないからだ、ここで、彼を放っておけば、次のイベントに進む。
『普通はそうする』
しかし、サラはそうしなかった。
「おりゃぁぁぁぁぁぁ!」
とサラがダッシュしながら、四天王『鬼王のアルバート』のところに、飛びかかる。
いつもの、電撃キックではなく普通のキックだ。
「足癖の悪いお嬢さんだ!」
と、アルバートはサラの蹴りをガシッと前腕で受け止める。
そして、大きく腕を広げてサラを吹き飛ばす。
「やめておきなさい、いまのあなた達では私には勝てない」
と『鬼王のアルバート』が言う。
「それは・・・やってみなきゃわからないわよね」
と、スチャッと着地する。
そう、サラはこの一撃で倒すつもりで、今の蹴りを放ったのではない。
逃さないためだ。
敵視を集めて、戦闘を開始するために、受けられるのをわかって飛び出したのだ。
「これで、鬼さんと戦える?」
とサラが聞いた。
「うん」
と僕が頷いた。
この「ラスト・オンライン」は自由度が高いことでお馴染みだ、順番にやる必要はまったくない、ここで四天王を倒しても全く問題ない。ただ、普通は倒せないだけで・・・。
『雷迅 - ライトニング』
と、サラが格闘家の靴についた、電撃のスキルを発動させる。
バチィ、バチィィィィィィィィ
と脚から大きな音を立てる。
「ほう!」
と『鬼王のアルバート』がサラに感心を抱く。
「とおぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バチィ!バチィィィィィィ!と音を立てながら、弧を描きながら、『鬼王のアルバート』に回りこむ。
電撃の反力を使い、通常からは考えられないほどのスピードを出して、『鬼王のアルバート』の視線を外すように移動する。
そして、真横に位置取った瞬間。
「いくよ!!」
と叫びながら、『鬼王のアルバート』の頭に向かいジャンプキックを放つサラ。
「電撃キーッッック!!」
と言いながら、蹴りを放つ。
「なるほど!」
と言いながら、すっと、しゃがんでサラの蹴りを避ける。
そして、攻撃を外してしまったサラが『鬼王のアルバート』を飛び越えた先で着地する。
「いままでの、弱小モンスターならそれで倒して来れたんでしょうけど・・・」
と『鬼王のアルバート』は低い声でゆっくりと言う。
「私は四天王なのでね」
と『鬼王のアルバート』は微笑んだ。
そして、腰に装備していた、剣をゆっくりと握った。
「さて、次は私の番ですね、『鬼神の剣』の力をお見せしましょう!」
と、『鬼王のアルバート』は剣を抜いて構えた。





