第十二話『二百万分の一』
「ぇ、ええええぇぇぇぇ!!きゅうまんきゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅう!!??」
Lv.1の僕がスライムに与えた、ダメージ「99,999」を見て、驚き、叫ぶサラ。先ほど、スライムと死闘「?」を繰り広げたサラは納得が行かない様子だった。
「お、おちついて、サラちゃん!」
魔法使い奈緒子が、武闘家サラに言う。
しかし、サラは続ける。
「だって、だって、99,999だよ!!さっき私が、かかと落としでスライムを倒した時のダメージ、15とかだよ!!同じLv.1なんでしょ??」
と、テンションの上がりつづけるサラ。
確かに同じLv.1なのだ。ただし、この世界最強のLv.1なのだけど。
実際攻撃力は最大だがHPは同じなので、何回かスライムにぶつかるだけで死んでしまう。最強で最弱のLv.1なのだ。
「SSSクラスの武器だからね。このくらい出ちゃうかもしれないよね」
と、僕は言った。存在すら確認されなかった、最強の武器を最初から手にしてしまったのだ。まさか、こんなに強いとは思わなかったけれど。
「SSSクラス!!」
奈緒子が驚く。
ある程度RPGに詳しい奈緒子は信じられない、というようなジェスチャー、顔に手を当てて驚いた。
そして、一拍置いて続ける。
「実在するんですか、そんなの!」
「ここに確かにあるみたいだね。」
と、僕も応える。SSSランクの武器を最初に手に入れるのは、雲をつかむような確率の話でまだ地に足がつかない、でも、確かに本物のようだ。
「99,999って私が与えたダメージの一体何倍なのよ一体!!」
「およそ、6666.6倍」
と間髪入れず、僕が応える。
「それ、およそじゃ、ありませんよ」
と、クスクスと笑う奈緒子。
「多分、SSSランクって、200万分の1とか、もっと低い確率の武器なんだよ」
「そうなの!?」
と、サラが驚く。
「だから、200万倍強くないだけマシかも。」
と笑う僕。
「そういう計算〜??」
と笑い返す、サラ。
「じゃ、いっか!与えられた武器で戦うのが人生ってもんよね」
突然、哲学的な事をいう。たまに驚くような事をいうサラ。多分真剣に運動部をやってきて、勝負の世界に身を置いている感じがするので、そこでたどり着く境地なのだろう。
「与えられたもので、最大限楽しむのが、人生よね!!あなたはその武器でこの世界を存分に楽しむのがいい!!」
「うん、ありがとう!そうする」
と笑った。SSSランクのあまりの凄さに、僕もとまどっていたのだが、サラの言葉で前向きになれた。楽しむ。それがほんとに一番いい。
「なんだか、サラちゃんは先生みたいですね。」
「そうかな〜」
と照れるサラ。満更でもない様子だ。そして、調子にのったときの悪い笑顔を浮かべた。
「先生になんでも相談するがいいよ、若者たち!」
と、腰に手をあてて、エッヘンというジェスチャーを取りながら笑った。





