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第七章 真実(1)

十一月終わり、東宮市は季節外れの大寒波に見舞われていた。本格的な冬になっても雪の積もらない土地であるにもかかわらず、この寒波で東宮市は白銀の世界に姿を変える。


ただ、珍しく雪が積もったところで、喜ぶのは小学生かまたはそれと同じ知能の人間だけである。そのため、ほとんどの学生はこの雪にうんざりしていた。健人もその中の一人として学校に登校する。


「健人、放課後になったら雪だるま作ろうぜ」


朝、健人が教室の自分の席で縮こまっていると、守が興奮気味に近づいてくる。窓の外を見てみると、日が昇っているのにもかかわらずまだ雪が降っている様子が窺える。雪が降るだけあって、気温もかなり低い。


「そこらへんの小学生でも誘えばいいだろ?」


健人は雪と守を同じ対象として扱う。しかし、守は珍しいことに心を躍らせていた。


「昨日の天気予報で大雪だって知ったから、わざわざ急いでネットでスノーブーツを買ったんだ。今日にも届くから、使ってみたい」


「本当に幼稚だな」


「それでもいい。だから……」


守は高校生である誇りさえ捨てて、健人に懇願する。ただ勿論、健人がそれを了承することはない。


「ダメだ。寒いし濡れるし、何よりも意味がない」


「なんだよ。面白くない」


守は場所をわきまえずに拗ねる。健人は呆れることを通り越して、もはや何も感じることはなかった。


「……ああ、間に合った」


健人は守を無視して次の授業の準備を始める。そんなとき、二人が教室の扉から慌てて駆け込んできた。榛名と春奈である。


二人はほぼ同時に駆け込んでくるなり、へたり込んでしまいそうな様子で自分の席に向かう。健人はそんな様子を見て驚いた。


二人が時間ギリギリにやってきたことも、驚いた一つの要因である。しかし、健人が一番驚いたのは、二人が一緒に来たことだった。


健人が言えた口ではないが、二人の仲はあまり良いものではない。二人が特別対立しているわけではないものの、健人は不思議な感覚となった。


「あの二人……偶然か」


守が健人の隣でそう呟く。守も今の状況がやや納得できないようであった。健人は、何があったのか知りたいとふと心の中で思う。しかし、授業開始のベルのために健人はそれを諦めた。




「すごい雪ですね」


午前の授業が終わって昼休みに入ると、榛名が満面の笑みで健人に近づいてくる。健人は先程のこともあって、警戒しながら榛名と接した。


「かなり積もってるな。事故も起きてるらしい」


健人がネットのニュースで集めた情報を伝える。すると、榛名は補足するように言葉を足した。


「もう本当に大変だったんです。おかげで遅れるところでした」


「そういえば、今朝は珍しく遅れかけてたけど、何かあったのか?」


榛名は基本的に用意周到な人間で、健人のようにその場しのぎで物事を考える人間ではない。昨日の天気予報から散々大雪のことについて伝えられているはずで、榛名がそれを確認していないとは思えなかったのだ。


「本当、聞いてください!」


健人が疑問に思ったことを尋ねてみると、榛名はやや怒った様子で健人に詰め寄る。そして、文句を言い始めた。


「駅前に凄い人だかりができていて、なかなか動けなかったんです。電車の遅延で動けなくなった人で溢れかえっていたんですけど、本当に困ります」


「わざわざ駅の中通らなくても、少し回り道すればよかったじゃないか。そんなに距離が変わるわけじゃないし」


榛名の話を聞いた健人が素直な感想を述べる。すると、榛名は言い返せなくなった様子で頬を膨らませた。


「構内なら歩きやすいし、濡れないから良いと思ったんです」


「まっ、本末転倒だったけどな」


「……何か健人、冷たくないですか?」


榛名は今朝のことに対して怒っているはずだったが、健人が冷たい態度をとったため、いつしか怒りの標的は健人となっていた。ただ、健人はそもそもそのことに気付いていない。


「……そういえば春奈と一緒に来てたけど、あれは道で会ったのか?」


「はい、そうですけど。……それがどうかしましたか?」


「いや、珍しいと思ったから」


健人は誤魔化しながら笑う。健人が気にしていることは、春奈と榛名の関係が悪かったことである。二人はこれまで対立してきており、榛名の方が春奈の気迫に弱いはずだったのだ。


しかし、榛名は全く気にしている素振りを見せずに、健人の言葉に答えた。


「ちょっとした世間話をしていました。深瀬さんの妹さんが風邪を引いたとか」


「………」


榛名は健人が想像していたほど、春奈に対して苦手意識は持っていないらしく、淡々と今朝のことを口にする。ただ、話の内容を聞いて健人は驚いた。


昔なら、春奈の妹である明奈が風邪を引いたとすれば、その話はすぐに健人に伝えられて健人は何らかの行動をとっていたはずである。お互いに両親がいない中で生活しているため、それなりに協力し合っていたのだ。


しかし、春奈と関係が悪くなってから、そのようなことが全く無くなっている。そんな露骨な変化を前に、健人は動揺していた。


「気になるなら話しかけてみればいいんです。私が言うのもなんですけど、深瀬さん、とても寂しそうでした」


榛名は横目で春奈の方をみやる。そこにはいつも通りに見える春奈が座っていた。しかし、いつも通りというものが、春奈にとってどういうものなのか健人には理解できない。春奈が何を考えて、何を望んでいるのか、それが分からない内は健人には何もできそうになかった。


ただ、そんな健人に対して榛名は言葉を続けた。


「健人、また何もしないで見ているだけですか?」


「……そんなつもりは」


「だったら、動いてみたらどうですか?今の状況が良くないと思うなら、健人が動いて解決してみせてください。健人みたいなヘタレに気を揉んでいるのは、言ってしまえば時間の無駄ですから」


榛名は辛辣な言葉と同時に、健人にアドバイスを送る。健人はその言葉を聞いて、真剣に悩みそれでも仕方なく頷いた。


「確かにヘタレだな。俺は」


時計は次の授業の一分前を指している。健人は大きく息を吐いて、情けない自分を心の中で叱責した。


「私はアドバイスしましたからね?」


榛名はそう健人に言葉をかけると、そのまま自分の座席へと戻っていく。ただ、榛名はその途中で立ち止まって、再び健人の方に振り返った。


「そういえば、今日は学校で用事があるので、健人は先に帰っていてください」


それだけを言い残すと、榛名は普段通りの様子で授業の準備に取り掛かった。健人はそんな榛名の後ろ姿を見ながら、榛名がかなりのお節介であることを認識した。




その日の放課後、榛名は言っていた通りすぐに鞄を持ってどこかに行ってしまった。そして守もなぜか、授業の終わりと同時に急いだ様子でどこかに行った。ただ、春奈には特に急いだ様子は見られず、黙々と帰り支度をしていた。


榛名がせっかく作ってくれた機会である。本来ならば健人から動きたいところではあったが、文句は言っていられない。そのため、健人は決心することにした。


「……春奈」


健人は自然を装って春奈に近づいて、そのまま声をかける。健人は気まずさと恥ずかしさに押しつぶされそうになった。


「……え?健人、どうしたの?」


健人から話しかけられたことがかなり意外だったのか、春奈は素で驚いた表情を見せる。健人は不審に思われる前に言葉を続けた。


「明奈ちゃんが風邪を引いたんだって?……大丈夫なのか?」


「え、うん、大丈夫だと思う。ちょっとした風邪だから。一応、今日はクラブには行かないで家に帰るけど」


「そうか」


健人は明奈の様子を聞いてひとまず安心する。すると、そんな健人を春奈は不思議そうな顔で覗き込んだ。健人はそれに驚いて、一歩後ろに下がる。


「……誰から聞いたの?もしかして、はっしー?」


「もしかしなくてもはっしーだ。春奈、朝一緒に来てただろ?」


「そうだけど……」


春奈は微妙な表情をして少し考える。健人としては、春奈に教えられたということだけであったため、春奈が何を考えているのか分からなかった。


「はっしーと帰らなくていいの?結構、嫉妬深いんじゃないの?」


「何がだ?」


「だから、……はっしーはどうしたのって聞いてるの」


春奈は教室を見渡して榛名がいないことを把握している。それだけに、春奈の不思議に思う気持ちは大きかった。


「はっしーは用事があると言って先にどこかへ行った。それがどうかしたのか?」


「……いいえ別に。でも、私がいま健人にキスとかしたら、はっしー怒るかな?」


「俺が困る」


「冗談よ」


春奈は健人を馬鹿にするように笑う。しかし、健人には春奈が無理をしているように見えた。そしてそこから、二人の会話は止まる。


「……帰ろっか」


しばらく沈黙が続いた後、健人が言い出せなかったことを春奈が口にする。健人はそれに肯定するだけで、結局は健人から行動を起こすことはできなかった。


二人はゆっくりとしたペースで帰路につく。二人きりで帰ることは、健人にとってかなり久しい。ただそれは、春奈も同じであるはずだった。


「それにしても、はっしーの考えていることが分からないわ。正妻の余裕なのかな?」


「制裁?はっしーに何かされたのか?」


春奈がやれやれといった様子で口にしたことを、健人は間違って理解する。ただ、春奈は訂正することなく話を続けた。


「私じゃなかったら、はっしーはただの嫌味な女になっちゃうよ?はっしーも分かってるのかな?」


「どういう意味だ?」


「だってそうでしょ?あのテストの後、健人はやっぱりはっしーの方を選んだ。そんな中ではっしーの気遣いでしょ?短気な女なら間違いなくはっしーを刺してるわ」


春奈はやれやれといった様子を見せる。しかし健人には、いまいち理解の出来ない話であった。


「まあいいんだけどね。おかげで二人で話せるわけだし。……それに、私もはっしーにかなり酷いことしてきたから」


雪に覆われた道を目の前にして、春奈は声を小さくして呟く。健人は春奈の話を聞きながら、足元の状態に注意を払う。


「はっしーは気にしてないだろ。確かに春奈に怯えていたことはあったけど、それでもちゃんと春奈の奥にあるものを汲み取っているはずだ」


「ええ、そうね。それに、はっしーはかなり狡猾で私じゃ相手にならなかったわ」


「狡猾?最近は感情だけで動いているあのはっしーが?」


健人は不思議に思って春奈に質問する。すると春奈は、力なく言葉を続けた。


「そういうところが狡猾だと思う。感情に流されているように見せて、本当は色々なことを考えて演技だってしてるんじゃない?……私にはできないわ」


「詐欺師みたいな言われようだな」


「でも実際にそんなものよ?はっしーが本当に健人のことを好きじゃなかったら、今頃私が何していたか分からないわ」


春奈は冗談も挟みつつ健人の笑いを誘う。しかし、健人は春奈の言葉が気になって、それどころではなかった。


「あ、深く考えようとしてるでしょ?私が健人を考えさせるようなことを言ったって、はっしーに責められたくないから一応言っておくけど、はっしーのことは大切にしてあげないとダメだよ?」


「それは分かってる。……だけど、確かにはっしーが狡猾かもしれないと思ってきた。それを特別気にしてるわけじゃないけど」


「どういうこと?」


健人は滑らないように歩いていたが、考えることに集中し始めて足元が疎かになる。すると、春奈はそんな健人を、腕を当ててさりげなく助けた。


「実はこの前、はっしーの母親とあったんだ」


「えっ!?」


健人が口にしたことは、春奈をもかなり驚かせる内容だったらしく、聞いた春奈は開いた口が塞がっていなかった。春奈のそんな様子を見た健人は、ますますことの重大さを実感する。


「……それで、どんな話したの?はっしーがそんな大胆なことするなんて……」


春奈はそう健人に尋ねてから、自分が深くまで聞きすぎたことに気付く。しかし、春奈にとって今の状況は芳しいものではなかった。


「いや、それは……」


健人は今自分が有している課題のことを考え、口にするか迷う。ただ、健人が本当に話したいことと関係なかったため、その話は胸の奥にしまうことにした。


「……まさか、何か口約束しちゃった?」


「それは……少しあったけど、でもそのことはどうでもよくて」


春奈は健人と春奈の母親が話した内容がかなり気になるようで、上擦った声がその度合いを物語っている。しかし、大前提として話しておかなければならないことがあった。


「実は……そのはっしーの母親、俺の元母親だったんだ」


「…………?」


健人は決心して伝えると、春奈は数秒間黙った後に首を傾げた。それを予想していた健人は、すぐに加えて説明を行う。


「俺の元母親は、俺が小学生の時に親父と離婚してそのままどこかへ行った。それ以来、俺は母親を全く知らないまま生活してたんだけど、聞いた話によれば、その間に再婚したらしくて、はっしーは相手の連れ子だと言っていた」


「へ、へぇ。世間は案外狭いね。……ということは、健人とはっしーは……兄妹か何かなの?」


春奈は健人の顔を覗き込んで尋ねる。気のせいかその表情には、少し明るさがあるように見えた。


「いや、それはない。俺にとって元母親だし、榛名とも血が繋がってるわけじゃないから」


「……健人はそう思ってるわけね?」


「ああ」


健人は、榛名の意図を理解しないまま頷く。春奈はそれを残念そうに聞くと、そのまま健人の話の続きを待った。


「ただまあ、驚かなかったのかと言われれば、かなり驚いた。母親という感覚はもう残っていなくて、赤の他人という感想しかない。だけど今頃、榛名がそのことを伝えてきたことに何か意味がありそうな気がする。……どう思う?」


「つまり私は、健人が次にはっしーのお母さんのところに挨拶しに行く時のアドバイスをすればいいわけ?」


春奈は膨れて聞き返す。健人はそんなつもりなどなかったが、それをしてくれるのであればありがたいに決まっていた。そのため、健人は少し時間を置いてからな頷いた。すると、春奈はすぐに一つ提案してくる。


「じゃあ、榛名さんは俺の手に負えません、すみませんでした。って言って私のところに来てよ」


「は……!?」


春奈は言ってからもなお、真剣そうな顔をしている。そんな春奈を見て、健人は困り果てて言葉を失った。ただ、健人がしばらく黙っていると、春奈は慌てて言葉を付け加えた。


「……やだなぁ、本当に冗談も通じないなぁ、健人は?恥ずかしい演技までしたんだから、もっとリアクションがあってもいいのに」


「あ、ああ、そうだな。なんでやねん……」


健人は春奈に言われてからすぐにツッコミを入れる。しかし、春奈が恥ずかしさに顔を赤くする中、一瞬悲しそうな顔をしたのを健人は見逃さなかった。健人は申し訳なく思って、口を閉じた。


「変なこと言わなければ大丈夫だと思うけど?健人、見た目は信頼できるから」


「そうか……」


健人は春奈が自分のことをそのように評価していることを知って、不思議な感覚になる。嬉しいのは間違いないが、それでいいのかは分からない。


「……ねぇ?」


健人が一人で考え込んでいると、春奈が深刻そうな顔をしながら健人の方を向く。二人はすでに駅の近くまで歩いてきている。


「私……はっしーに酷いことしてたんだよね?」


「えっ?」


「だってそうでしょ?健人とはっしーが決めたことに文句を言う権利なんて、元々私にはなかったはずなのに。だけど、はっしーは私のわがままも聞いてくれて……本当に私って意地汚い女よね」


春奈は頭を落として視線を下げる。昔のような元気な姿を、今の春奈からは想像できない。


「まあ、良くないことを言ってたりもしてたな。……春奈らしくないこと。でも、春奈も色々不満を持ったりするんだってことが分かって、ある意味良かった」


「……どういうこと?私がはっしーに酷いことをしてたのが、良いことってこと?」


春奈は信じられないという表情で、健人に尋ねる。ただ勿論、健人はそんな春奈の言葉をすぐに否定した。


「そんなわけない。はっしーにしたことが悪いことだって思うなら、ちゃんと謝ればいいってだけだ。きっと許してくれるよ。


でも俺が言いたいことはそんなことじゃなくてさ、春奈っていつも俺に対してしっかりしたところだけ見せてて、俺は春奈が悩んだり困ったりしないものだと思ってた。だけど実際はそうじゃなくて、春奈は春奈でちゃんと自分の気持ちを持ってた。それを知れてすっきりしたというか……」


健人の言葉は段々と歯切れが悪くなる。しかし、春奈は健人の方を向いてしっかりと目で聞いていた。


「私に惚れた?」


「……それは」


節操がなくなったわけではない。しかし、健人は春奈に対していつもとは違う感覚を持っていた。昔からの腐れ縁と位置付けるには惜しい。健人は心の中でそう思っていた。


「これも冗談。私じゃなくてはっしーのこと好きなんでしょ?じゃ、せいぜい知識のない中で足掻いて見せるのも良いかもね。私は……どうしようかな」


「世の中いろんな人がいるんだ。その……俺に好意を抱いてくれていたのならそれは嬉しいけど、俺以上に人のことを考えて優しい奴はたくさんいると思う」


健人は自分を蔑む意図を持っていない中で、それでも自分のことをそう評価する。春奈はそれを聞いて少し声を漏らして笑った。


「ええーそうかな?私には健人しかしなかったんだけど……」


「今日は冗談が多いな」


春奈が笑顔を見せたことで、健人も自然と頰が緩む。しかし、健人のそんな勘違いに春奈は大きくため息をついた。


「今のは冗談じゃなかったのに」


「えっ……?」


「冗談よ。本当に、健人と話してると楽しいわね」


春奈は嬉しそうに声を弾ませる。健人は春奈の言葉の何が冗談で、何がそうでないのかを考えていたため、不意な春奈の笑顔に胸を締め付けられる。


「とにかく、はっしーには謝っとくわ。これからは、ちゃんとはっしーと仲良くしておかないとね。はっしーがいつアイドルにスカウトされるか分からないから」


「……そうだな」


二人は駅を通り過ぎ、二人が別れる道のすぐ近くまでやってきている。今日春奈と話せたことが正しいことなのか、それを考える時間は健人にはなかった。


「それと、私には鈍感で頼りない健人でいいけど、はっしーには格好いいところ見せておかないとダメだよ?女の子は言って欲しいことを言ってくれないと嫌なんだから、時には大胆にならないと」


春奈の優しい言葉は、健人のことを責めることなく続けられる。ただ、健人はそれを聞いていると、余計に納得がいかなくなった。


「本当に……これで良いのか?」


健人は自分の中に渦巻く疑念を取り払うため、最後に一つ言葉にしてみる。すると、春奈はそんな健人にさも当たり前のように答えた。


「いいんじゃない?だって、健人が決めたことなんだから」


春奈の表情は、健人のことを信頼していることを物語っている。健人はそれを確認するも、返す言葉は何もなかった。


「……それじゃここでお別れね」


「ああ。明奈ちゃんにお大事にと伝えておいてくれ」


「分かったわ。健人も体調管理だけは気をつけてね。じゃ、また明日」


健人のことを心配してみせた春奈は、そのまま別れ道に入って行く。その後ろ姿は、健人が以前に見たものに比べてずっとたくましいものになっていた。

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