The episode of plunderer 1
我は蜂蜜が好きだ。我は非常に蜂蜜が大好きだ。何を差し置いても蜂蜜が至高であった。
蜂蜜の海で溺れたい。蜂蜜を行水するが如く浴びせ飲みたい。それは夢であり悲願であった。
幼きころ我は小さな蜂の巣を襲っては蜂蜜を啜っていた。
小さな蜂の巣にも蜂蜜はあるが夢を叶えるには至らない。
しかしあの巨大なハチ型モンスターの巣なら夢は現実へと変わる。
だがモンスターの巨大雀蜂に対し、我らの種族は非常に脆弱だった。
母からはモンスターの方のハチにあったら急いで逃げるように習った。
我は他の同属より知力体力に優れてはいたが、奴等はその程度では倒せない。
奴等の針の前では我らの毛皮は守りの意味を為さず、
奴等の表皮の前では我らの爪は武器の意味を為さなかった。
しかし我は諦めなかった。戦えば死が待っているが、
それこそその程度のことでで夢をあきらめるに至らなかった。
あの蜜を集める昆虫を倒すために大地の神、海の神、空の神、大いなる神、様々なものに祈りを奉げた
。
幾年が経ったであろうか、我の願いは聞き届けられた。
並みの針を通さぬ厚く硬い強靭な皮膚と長く多い毛。
特殊クチクラ質を貫く破砕力と切断力を両立した長く雄雄しい爪。
強力な盾と矛を手に入れた我は早速巨大な蜂の巣を襲いに行くことにした。
多少反撃を受け最終的には逃げることになった。たが、我はついに奴等の蜂蜜を手に入れた。
その味は至高。小さな蜂の巣の蜜も美味であったが、それを上回る甘美。それが体中を黄金色に
塗り染めても余りある量がある。初めての戦いであったが故につい逃げてしまったが、
奴等の針は通ることはなく、我の斬撃は巣を破壊するのには十分であった。
それから巣を壊しては蜜を奪い、強くなっては又巣を破壊するという日が続いた。
あるとき我は1つの巣を襲いにいった。巣を壊し蜜を奪うところまではよかった。
しかしその巣の女王蜂は他の巣の女王より強力で、力を手に入れてから初戦以来初めて逃げ出した。
致命的な怪我こそ負わなかったが、爪を全て叩き折り、皮を全てはがれた。玩ばれた。
しかし巣を襲っているときに匂った蜜の香り、アレは今までかつての中で最上のものであろう。
しかしあの巣を襲うには巣の女王が強すぎる。
しばらくは頭からあの巣の匂いのことが離れなかった。しかし足がその巣に向かうことはなかった。
勝てないという予感と傷を癒すことに優先するためである。
しばらくして例の女王が死去したという噂が流れたので、様子を見に行ったが話が遅かったのか、
既に新たな女王蜂がおり、見ただけで以前の女王蜂よりも強くなる素質があるのが判った。
どちらにしろ、まだ毛皮が完治していないのでは勝負にならないので一時離脱することにした。
そしてまだいえぬ傷を癒しながら我は再び祈りを奉げた。
以前我の願いに答えてくれた大いなる神にである。
アレが夢ではないかと思うときもあるが、
強くなった体と、他の種族にも有効な念話能力が残ったことが、夢でないことを教えてくれる。
あの蜜を集める昆虫を倒す力が欲しい。
そう願いをかけていると、
<いずれ災厄となる芽を潰す為だ、いいだろう力をくれてやる。>
依然聞こえた声が聞こえ猛烈な苦痛とともに睡魔が襲ってきたので、穴を掘って眠った。
それなりに寝ただろうか、目が覚めるとともに強烈な空腹が襲ってきたのでとりあえず
蜂蜜を食べに行く。いつの間にか爪と毛皮は以前以上に強く生え変わっていた。
強くなった力で2,3個巣を襲ったときだろうか、
依然とは比べ物にならぬ自身の力の向上に、今なら以前の女王蜂も狩れる。今の女王蜂でさえも。
そう思った我は以前敗北した場所に向かった。この島でもっとも立派な巣だ。
だが、問題ない。勝ち目はある。我は強襲した。
我が予想していたよりも今回の女王蜂は強力であった。
もしや奴になら又敗北するかもしれない。そうよぎる。
今まで幸運や強力な毛皮に守られ針による攻撃を受けたことはなかった。
だが、あの機動性に長け風を支配し鋭い針を持つ軽やかで鋭利な姿は、
もはや普通の大雀蜂モンスターの女王蜂とは違う。もしも、があるかもしれない。
しかし、以前以上に強力な毛皮もある上弱点も少しは把握している。
奴等の弱点は―――
―――奴等の弱点はプライドと幼子たちを匿う為巣のため、逃げに徹せないことだ。
他の蜂が相手にならない以上実質的な戦力として1匹で巣を守りながらの女王蜂は傷が増えていく。
そして傷とともにその自慢の機動性が低下していく。守備力は他の能力値ほど高くないようだ。
崩壊した巣から、他の蜂が幼虫を運び出すことから意識をそらしたいのは見えている。
そのために、どこか動きが鈍いように見える。
致命的になったのは、なぜか藪の隙間から巣に居るはずの幼虫たちが出てきたことだ。
明らかに動揺した女王蜂は無様に我の一撃を受け、起動の基点となる4枚の翅の内1枚を落とした。
もはや止めを刺すだけそう思い女王蜂に近づこうとすると、なにやら腋の下を潜り抜けようとするものがあった。
とっさに腕を振るったが、軽い手ごたえしかなくどうやら外したようだ。
腹が立ったので追いかけて叩き落とそうとしたところ、頭上と足元に何か衝撃が走り体勢を崩し転倒した。
何がそうさせたのか見回すと、
空には先ほど幼虫を運び出していたリーダー格と、地には翅がないみすぼらしい2匹の蜂がこちらに対し戦闘態勢を
とっている。奴らか生意気な。潰してくれるわ。
<はっ、愚かな、貴様らの女王ですらこの様だ。貴様らごとき小娘に何ができる?>
「むしろこの私にできないことのほうがありませんわ。今からそれをたっぷり教えてあげましょう。」
「敢えて言うなら未来に希望を託すこと、かしら?―――この双璧、容易く抜けると思わないことね。
」




