Ⅲ・夢の罪1
◆ ◇ ◆
共に目指そう、と誓った。
共に行こう、と誓った。
淡く儚い夢へと。
忘れ去られた刻へと。
護る、と誓った。
崩壊したも同然の世界を。
死に匹敵するほど疲弊した全ての者を。
そして、この存在を――。
――…自分の全てから発せられる悲鳴を聴いた。
無理もない…。自身の限界を超えたチカラを、立て続けに使ったのだから。
死へと優しく誘う強烈な疲労感と睡魔に抗うために、二の腕に躊躇も遠慮もなく爪を深く突き立てた。だが…、ふわふわとした睡魔はあまりにも強力で、血が流れ出てもまだ痛みも何も感じない。骨に達するまで爪で肉を抉り、ようやくそれを違和感として知覚した。
膝に力が入らない…。立っている事もままならず、崩れ落ちるようにその場へ座り込んだ。我ながら情けない姿だと思う。
だが――…、他にどうすれば良かったというのか。
かのチカラを使った後の自分には、あの数の賊を蹴散らす余力など微塵も残っていなかった。限界を超えた体には策を練る余裕すら許されなかった。他に手などなかった…。
…ああ、駄目だ。上体を起こし続ける事さえ辛い。両手足を前に投げ出し、ぐったりとうなだれる。あまりにも無防備で情けない姿だが、そう思う矜恃すらも保てない。焦りが思考を極端に狭めていくが、深い呼吸を繰り返し続ける事で自分をなだめていく。
今は休息が必要だ。自分が復活するまでにどれ程の時間が必要となるか想像もつかない。だが…、今の自分はもうどうする事も出来ない。たとえ魂を削ってチカラを絞り出したとしても、業火に一滴の水を落とす程度のそれしか得られまい…。
光の羽虫が舞う視界に吐気を感じ、強く強く瞼を閉ざした。全ての感覚を外界から隔絶する。
一刻も早く休まねば――…。自分が保たないだけではない。回復が遅れれば遅れるだけ、不要な苦痛を与えてしまう。一秒でも早く回復し、あの場所から解き放たなければ。
一刻も、早く――。
落雷のような衝撃と熱を後頭部に知覚したのと、背後にあまりにも強烈な殺気を感じたのは、同時の事だった。
――――…気が付くと、自分は深く冷たい永遠の闇に囚われていた…。