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お腹を壊したとき、となりに居てくれたのは彼女だった。

作者: ぽぴ
掲載日:2026/01/06



 私には彼女がいる。今まで散々な目にあったが、それでも彼女のことが好きだ。なぜなら、私がお腹を壊したときに心配してくれたからだ。


 だから、好きだ。


 私は高校生のときに、初めて訪れた彼女の家でひどくお腹を壊した。間違いなく、破壊的な下痢の予感だった。


しかし、初めて訪れた彼女の家。

到着してまだ40分しか経っていない。


トイレの場所は――、リビングを出てすぐだ。


 私は「(終わっ……た)」と確信した。高校生というカッコつけたいお年頃の男子が、初めて訪れた彼女の家で下痢をする。しかも、トイレはリビングのすぐ側だ。確実に、破壊的な音を聞かれてしまう。


だがしかし、我慢したところで「彼女の家でトイレを借りる」以外に案が無く、腹をくくってトイレを借りるしかなかった。


グッバイ。カッコいい俺。

おはよう。下痢クソな俺。


 私は意を決して、「お……お腹壊した()()()()()()。少しトイレを借りていい?」と彼女に問いかけた。


確実に、大きな爆弾を抱えているのに、「かもしれない」といったのは、最後の足掻あがきだ。音のならない下痢ならば、まだ挽回のチャンスがある、と私は考えた。


 彼女は「いいよー。トイレは出て左にあるよ」と言って、テレビのチャンネルに手を伸ばした。


 私は立ち上がったが、極力、下痢を我慢している素振りを見せないように、「ありがとう。あーそう言えばお昼ご飯なに食べようかー?」と言った雑談をしながら、ゆっくりとトイレへ向かった。






結果は、惨敗だった。

私の尻から酷いオーケストラが飛び出した。



 トイレを出た私は、震える手でドアノブを掴み、「(あれ?ドアノブって――、こんなに冷たいものだったかな?)」としばらく立ち尽くし、覚悟を決めてリビングの扉を開けた。


すると彼女は「お腹大丈夫だった?大正漢方胃腸薬飲めば治るよー」と薬と水を用意してくれていた。


 「(あ、この人と結婚しよう)」


 私が彼女に愛を誓った瞬間だった。


 


 その日から、私の彼女に対する気持ちは変わっていない。むしろ、彼女の人生の全責任を負おうと努力を続けている。


 彼女は境界知能だ。暗黙のルールが分からないし、人がなんとなくできてしまう事もできていなかったりする。それに加え、糖尿病や脂肪肝といった持病もある。


それでも、私は彼女の人生に責任を持つ。

彼女の優しい世界を守るためなら、何でもする。


なぜなら、お腹を壊したときに、となりに居てくれた初めての人が彼女だったから。


 彼女からすると、それは特別な優しさじゃなかったのかもしれない。でも、修羅と呼ばれた私にとって、あの優しさは世界を変えてしまうほどのものだった。


 これからも、彼女とずっと生きていけたらいいなと思う。去年読んだ、『狐になった奥様』の結末がチラつくけれど、それでもやり通さなければならないと思う。


一抹の不安に、人生を支配されてはいけない。


今年も、頑張ろうと思う。





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― 新着の感想 ―
優しい彼女、自分に合う彼女と出会えて良かったですね!
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