最弱の亡者、冥府で光の戦士を解放する
第六階層ボス・光の戦士スコットとの死闘!
HP差30倍、再生持ち、アンデッド特攻、即死攻撃あり
扉を抜けると、また灰色の空だ。
光は差し込まず、亡者の魂がこすれ合うと僅かに発光する。
風は重く、腐った血の匂いを含んで吹き抜ける。
骨の粉が舞い、視界の端で白い粒が流れていく。
【HP 42/5000】
【MP 0/3000】
【状態:毒吸収中・膝優先修復】
【新権能:《腐食の黒炎・微》】
「……まだ、生きてるな」
独り言を漏らすと、喉の奥がひりついた。
声帯の半分は、もう溶けかけているはずなのに。
第六階層。
灰色の荒野を超えた先は、だだっ広い通路だった。
天井は低く、壁も床も、すべてが黒ずんでいる。
まるで巨大な死体の内臓を、
腹の中から歩かされているような感覚。
俺は、足を優先して修復しながら前に進んだ。
一歩ごとに、骨が鳴る。
逆向きの膝が、回転して元の位置に納まった。
「……多勢は、もう勘弁だぞ……」
そう呟いた瞬間。
――ゴトン。
前方で、何かが転がる音がした。
白い球体。
骨でできた頭蓋だった。
次の瞬間、床のあちこちから骨がせり上がる。
組み上がるように、ゆっくりと形を成していく。
骸骨の兵士。
だが、ただの骸骨じゃない。
骨の隙間から、黒い粘液が脈打つように溢れ、
まるで内側から生きているかのように動いている。
【聖晶同盟・光の戦士スコット《第六層階層主》】
【HP 1200】
「……光の戦士、かつての英雄も冥府に落ちるのか」
思わず、息を吐いた。
HP差は、約三十倍。
普通に考えれば、勝負にすらならない。
だが――
動きは、鈍い。
スコットは、ぎこちない動作でこちらに向き直ると、
骨の剣を持ち上げた。
ズ……ン。
一歩。
攻撃モーションに入ると突然動きが早まる。
剣を振り下ろす速度が見えない。
「……こっちは無手だってのに」
俺は、正面から向かわなかった。
這うように、横へ。
壁際へ。
距離を保ち、ひたすら逃げる。
《ライトニング》
ザンッ!
骨の剣が光り輝き、
閃光が一直線に向かってくる。
当たれば、即死だ。
「……っ、くそ……!」
俺は床に倒れ込み、
反射的に《毒吸収》を続ける。
空気に混じる瘴気。
床に染み込んだ腐臭。
すべてが、今の俺にとっては栄養だった。
【HP 42 → 48 → 55】
少しずつ、だが確実に回復していく。
スコットが、再び剣を構え迫る。
気のせいか更に速度が増している。
「……今だ」
俺は、骨の脚に手を伸ばした。
【《腐食の黒炎・微》発動】
【代償:生命力転化:HP -100】
一瞬、視界が暗転する。
だが、指先から――
黒い火花が、弾けた。
ジュ……。
触れた部分の骨が、
音もなく、ゆっくりと溶けていく。
「……効いてる……!」
だが、次の瞬間。
ズルリ、と。
溶けたはずの部分に、
黒い粘液が集まり、再び骨を形作る。
再生――。
「……チッ」
俺は、すぐに距離を取った。
HPは減る。
だが、再生される。
何度も、何度も。
触れては逃げ、削っては回復する。
【HP 120 → 20 → 60 → 15 → 80】
地獄のような往復。
どれだけ削っても、
こいつは、倒れない。
「……再生、か……」
息を吐きながら、
俺は気づいた。
黒炎の使い方を間違えていた。
燃やすんじゃない。
纏わせ、腐らせるんだ。
再生そのものを、
成り立たなくさせる力。
「……だったら……」
狙う場所は、一つ。
スコットの胸部。
骨の奥で脈打つ、黒い核。
「……そこだ……!」
俺は、わざと転んだ。
骨の剣が、振り下ろされる。
ギリギリでかわすが、
肩が裂ける。
【HP 140 → 102】
激痛。
視界が歪む。
だが――
距離は、ゼロ。
俺は、全体重を乗せて、
胸に手を突っ込んだ。
【《腐食の黒炎・微》発動】
【HP -100】
ジュゥゥゥゥ……!!
「ここは、暗い…」
初めて、スコットが声を上げた。
骨が、悲鳴を上げる。
黒い核が、泡立つように腐り始める。
再生が、止まった。
冥府の女王に囚われていた光の戦士は、
ゆっくりと崩れ落ちた。
「額の土の紋章
――まさか、帝国四天王に救われるとはな…」
眼窩の奥に人としての安堵が浮かび、
次の瞬間白い塵となって風に流される。
【スコット《第六層階層主》 撃破】
しばらく、動けなかった。
地面に転がり、黒ずんだ天井を見つめる、
第五層の扉が遠くに見えた。
「……勝った……のか……?」
信じられなかった。
滅ぼされた国の光の戦士。
前任の土の四天王と相打ちだったはず。
だが――
俺は、確かに倒した。
【HP最大値+50】
【毒吸収 効率上昇(小)】
称号:〈光の戦士殺し〉
体の奥で、
何かが増えた感覚がした。
震える足で、立ち上がる。
その時。
――最弱でも、亡者なら光の戦士に勝てるのか。
通路の奥から、
モルゴーラの声が響いた。
「またお前か……」
影が、揺れる。
姿は、まだ見えない。
「冥府の黒炎、復讐に相応しいな」
その声は、
楽しそうで、冷たかった。
俺は、拳を握る。
「俺は道化じゃねぇ……」
ボロボロの体で、
それでも、前を睨む。
「……下らない試練はたくさんだ……」
影は、笑った。
扉が開き、
第五層からマグマの熱気が、噴き出してくる。
――まだ、終わりじゃない。
次回は第五階層突入! マグマの熱気と共に、新たな試練と
――もしかしたら初めての会話できる相手が登場するかも?




