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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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冥府の鎖、帝都を縛る

帝都中枢へと侵入したのは、冥府の腐食竜ドラミィ。

政治で戦う暴風公爵ディアボルスに対し、冥府の力が牙を剥く。

帝都の中枢――旧・皇帝府。

広間からじわりと黒い霧が広がっていく。


見張りの歩哨が霧を吸い込むと一息で倒れた。


争乱のあった玉座の間は、一見落ちつきを取り戻している。

崩落した天井は片付けられ、血も死体もない。


ただ、静まり返った空間に、異様な圧だけが満ちている。


「……やっぱり、いたぁ」


天井の影から、銀髪の少女が降りてくる。


ドラミィ。


小さな身体。

だが、その足が床に触れた瞬間、巨大な質量で空気が軋んだ。


玉座の前に立つのは、暴風公爵ディアボルス。

優雅な外套を揺らし、細身の槍を片手に、静かに振り返る。


「来ると思っていたわ、冥府の腐食竜」


その声音は、驚くほど柔らかい。


ドラミィは口角を吊り上げた。


「へへ……」


紫瞳が、細くなる。


「槍で貫かれた恨みは忘れてねぇゾン」


ディアボルスは、一瞬だけ首を傾げる。


「それはレインでしょう?」

涼しい顔で言い直すが、それで恨みが消えるとは思っていない。


次の瞬間。


ドラミィの影が弾けた。


「ぶっ殺しますぅ♡」


音より先に、殺意が来る。


毒霧が刃となり、四方からディアボルスを貫こうと襲いかかる。

冥府の猛毒。

聖女でさえも解毒不可の攻撃。


だが。


ディアボルスは、一歩も退かない。


「――遅いわ」


槍が、風を裂く。


突きではない。

風を纏った流し。


刃が、断ち切られる。


「ッ!?」


ドラミィの身体が暴風を受け

宙で回転し、床に叩きつけられる。


「あなた一人とは……捨て駒にされたと気づかず

 かわいい恨みね」


ディアボルスは、槍を肩に預けたまま言う。


「一人で戦うのは戦争じゃないの」


ドラミィは、すぐに立ち上がる。

口元は笑ったまま、瞳だけが冷え切っていた。


「戦争とか、知らねぇゾン」


毒霧が、再び膨れ上がる。


「主さまの命令だぁ

 帝都を背後から喰い破れ――ってさぁ♡」


腐食竜の影が、今度はディアボルスの背後に牙をむく。

皇帝府の柱が砕け、壁が沈む。


ディアボルスの外套が腐食し、束ねた髪がはらりと舞った。


「なるほど」


髪を喰いちぎられ、槍を構える姿が、ほんの一瞬だけ女になる。


「冥府の一番槍のつもりか…」


槍が突き出される。

しなやかで、鋭い。


元四天王の名に恥じぬ、無駄のない一撃。


ドラミィの肩が、貫かれる。


「ぎっ……!」


腐食竜が影ごと貫かれ、悲鳴を上げる。


だが、ドラミィは笑った。


「やっと……刺してくれたぁ」


影が、槍に絡みつく。


冥府の呪い。

階層主の影が槍に染み付く。


ディアボルスの眉が、わずかに動く。


「……厄介ね」


だが、皇帝を目指した女。今度は退かない。


彼女は槍を引き抜き、踏み込む。


「帝都は、もう政治の段階なの」


「あなたみたいな感情の塊は――」


槍が、暴風を纏う。


「冥府がお似合いよっ!」


《テンペスト・バースト》


玉座の間が、完全に吹き飛ぶ。


ドラミィの身体が、壁を突き破って影ごと外へ叩き出された。


瓦礫の中で、少女は角を折られ、仰向けに倒れる。


「……はぁ」


小さな胸が上下する。


「つよ……」


だが、瞳はまだ死んでいない。


上空から、ディアボルスが見下ろす。


帝都中枢、崩れた皇帝府の中庭。


瓦礫の山に、ドラミィは叩き伏せられていた。


肺が、焼ける。

腐食竜の影が、うまく集まらない。


「……っは」


喉から、かすれた笑いが漏れる。


上空。

暴風公爵ディアボルスは、静かに槍を構えていた。


「もう終わりね」


その声には、憐れみすら混じっている。


「クアトロは強い。

 でも――おつむの弱いあなたはどうかしら?」


暴風が、再び収束する。

次の一撃で、確実に仕留める構え。


ドラミィは、仰向けのまま空を見た。


(あー……)


(やばいゾン)


影が薄れる。

身体が、言うことをきかない。


「……主さま」


声にならない呼びかけ。


その瞬間。


――冥府の底で、何かが応えた。


《追い込まれたな》


頭の奥に、軽い声。


《リンクを最大にしろ。

 ネクロ・チェインを貸してやる。ただし――》


影が、異様に重くなる。


《縛るだけだ》


ドラミィの紫瞳が、爛と開いた。


「――来たぁ♡」


地面に突き立てた手から、

黒い鎖が噴き出す。


冥府の鎖。


魂に直接絡みつく、

クアトロの権能の一部。


「な――」


ディアボルスの足首に、鎖が絡んだ。


槍にまとった風が、止まる。


「……拘束術?」


違う。


鎖は、地面から、空間から、

彼女の影そのものに絡みついている。


「さっきから、偉ぶってさぁ……」


ドラミィは、ふらつきながら立ち上がる。


「アンタに、冥府の本当の姿、見せてあげる」


鎖が、さらに増える。


腕を縛り。

胴を締め上げ。

呪いを受けた槍が悲鳴を上げる。


ディアボルスの表情が、初めて歪んだ。


「罪人の力を奪う

 ――冥府の……ネクロ・チェイン……!」


知識として知っていた。冥府の上位者が持つという、

魂をも縛り付ける拘束の権能。


だが、実物を見るのは初めてだ。


「正解♡」


ドラミィは、指を鳴らす。


「かはっ」

黒鎖が、細い胴をみちみちと締め上げ

呼吸がとまる。


「でもねぇ。これ――」


近づく。

一歩ずつ。


「殺す力じゃないゾン」


ディアボルスは、歯を食いしばる。


槍を手放せば逃げられる。

だが、それは帝都を追われるということ。


彼女は、動けない。


「アンタはさ」


ドラミィは、至近距離で囁いた。


「戦争を政治で考えてる」


「でも冥府は――」


鎖が、心臓の鼓動に合わせて鳴る。


「一線、越えたら

 全部ぶっ壊すだけなんだゾン♡」


ディアボルスの膝が、わずかに落ちる。


「……くっ」


もはや敗北は避けられない。


それを、彼女は理解した。


ドラミィは、鎖を引き絞らず、止める。


「安心して」


にぃ、と笑う。


「帝都は壊さない」


「主さまが欲しいのは――」


鎖が、ゆっくりと解ける。


「帝都陥落って事実だけだから」


胴に巻き付いた鎖が緩み

ディアボルスは、片膝をついたまま、息を整える。


――殺されない。

だが、この鎖は解けない。


昨日まで笑っていた自分が惨めだ。

政治的に、完全な敗北。


ドラミィは、ぶら下がったままの左腕を――


  ぶちり、と。


自分で引き千切った。


「真っ先に逃げたレインに伝えといてぇ」


千切れた腕を、ひらひらと振り

その身を冥府の影に溶かしながら言った。


「お前はもう――」

最後に、楽しそうに。


「出番はないゾン♡」

影が消える。


帝都に残ったのは、風を失った暴風公爵と、

王座陥落という現実だけだった。

ドラミィ最後に活躍できました!

そしてディアボルスの敗北で帝国四天王は名実共に全滅です。

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