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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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冥府のギャングスター

世界の均衡が崩れたとき、最も早く動くのは誰か。

皇帝、反逆者、そして――沸き立つ冥府。

ガタガタと体を揺らす振動が、傷に響く。


四輪馬車の荷台には、急ごしらえの寝台。


その周囲を、

治療結界と封印陣が幾重にも取り囲んでいた。


その中央で――

皇帝ドミノは、静かに天井を見つめていた。


左目は、もう見えない。


かつては――見えすぎていた。


青の宝玉と同調していた頃の視界は、

因果の分岐。


英雄たちの可能性までも映していた。


だが今は。


(……半分、か)


胸の奥で、

割れた宝玉の欠片が、かすかに脈打っている。


あの瞬間。


レインが奪い、

フィンが妨げ、


二つの意思が衝突し――


宝玉は裂けた。


ドミノは、その意味を理解していた。


青の宝玉。


それは単なる力の結晶ではない。


それは――


「世界を上から見る目」だ。


冥府がある限り再生する黒水晶。

条件が揃えば生まれる光水晶。


だが青だけは違う。


青は、世界が一つの答えを選び続ける限り

存在する宝玉だった。


(だからこそ、私は皇帝でいられた)


宝玉が割れた。


それはつまり――


世界が、一つの未来を拒否したということだ。

――皇帝ドミノの支配を。


ドミノは、小さく笑った。


「……なるほどな」


脳裏に浮かぶのは、

吐血しながらも剣を支え、


それでも前に立ち続けた聖騎士の姿。


フィン。


あの男が、ドミノの前提を壊した。


宝玉の欠片は、皇帝の中に残った。

もう片方は、レインが持ち去った。


(……危うい男だ)


青が割れたことで、

皇帝は唯一の俯瞰者ではなくなった。


利用し尽くしたと思ったフィンに宝玉を割られ――


瀕死の重傷を負わせたはずの

ディアボルスがクーデターを起こす。


因果が逆転を始めている……では次は?


失われた左目が疼く。

ドミノは静かに瞳を閉じた。


「フィン……」


「お前が壊したのは、宝玉ではない」


小さく呟く。


「――皇帝が正しいという前提だ」


そして、さらに低く。


「サミール……私が戻るまで、無駄死にはするなよ」


瞳の奥で、宝玉の残滓が静かに脈動する。


未来は、もう見えない。


だが――


それを恐れる皇帝ではなかった。



冥府が、ざわめいていた。


黒水晶に吸われた悲鳴ではない。

王がいなくなった嘆きでもない。


それは――


狩りの匂いを嗅ぎつけた、亡者のざわめきだった。


皇帝は傷つき、青の宝玉は割れた。


世界は今、大きく傾き始めている。


冥府にとって、それは祝祭の合図だった。


玉座はそこにある。

だがクアトロは、もう座らない。


灰の王冠が砕けた日、

彼は王であることをやめた。


代わりに――


世界一の厄介者になった。


クアトロは玉座へ続く階段の縁に腰掛けていた。


肘を膝に乗せ、

煙のような黒炎を指先で弄んでいる。


「……ったく」


口元に、軽い笑み。


「死に掛けのフィンがここまでやるとはな――」


ジャラリ。

冥府の黒鎖がゆらりと揺れる。


「こりゃあ、俺も負けてらんねぇぜ」


背後で、控えめな足音が止まった。


「……主さまぁ」


振り向くと、ドラミィが立っていた。


かつて不安定だった輪郭はすっかり定まり、

光水晶の侵食痕も残っていない。


小さな身体は変わらない。

さらりと流れる銀髪に紫の瞳。


だがその影は、以前よりずっと重い。


クアトロは気軽に片手を上げた。


「お、元気そうじゃねぇか」


ドラミィは何も言わず、彼の背後に立つ。


それだけで、周囲の亡者たちが一斉に静まった。

これから何が始まるか、理解している。


クアトロは指を鳴らした。

冥府の空に、歪んだ映像が浮かび上がる。


半壊した聖都。


膝をつく皇帝。


割れた青の宝玉。


そして――


帝都で動き始めたディアボルス。


「ハッ」


短く、楽しげな笑い。


「いいねぇ……全部、ひっくり返る音がする」


クアトロはゆっくり立ち上がった。


以前のように背筋は曲がり。

猫背の彼に威厳はない。


灰の王冠は砕けた。


だが、その一言に冥府全域が耳をすませる。


「今なら聖都も帝都も落とせる」


黒鎖が揺れる。


「最大のチャンスが来たぜ――」


歓声は上がらない。


代わりに、

狩りの前のような静かな沸騰が広がっていく。


クアトロは肩越しに振り返った。


「バルガス!!」


瓦礫の山に寄りかかっていた

筋肉の塊が顔を上げる。


「……あ?」


「お前は聖都だ。エレシアを参謀に付ける」


一瞬の沈黙。


次の瞬間、バルガスは歯を剥き出しにして笑った。


「――上等だ」


クアトロは頷き、次に視線を向けた。


「ドラミィ!」


「は、はい……!」


その視線だけ、ほんの少し柔らかくなる。


「お前は帝都だ」


ドラミィが、わずかに目を見開いた。


「ディアボルスが暴れてる最中だろ」


「裏から噛みつけ」


一拍置く。


「皇帝が死んでねぇ今が、一番旨ぇ」


クアトロはニヤリと笑った。


「復讐はすっきりするぞ」


小さな沈黙。


そして。


「はぁい♡きっちり落とし前つけるゾン!」


揺れない声だった。


クアトロは満足そうに頷く。


「よし」


黒鎖がクアトロの傍らで獲物を探すように蠢く。


「亡者どもを率いて――奪うんじゃねぇ」


ゆらりと揺れながら、黒門が地上を映す。


「回収だ」


ドラミィは理解した。


聖都に残された祈り。

帝都に溜まった恐怖。

救われなかった者たちの未練。


衰弱した冥府にとって、それはすべて資源だった。


「……主さまのために」


「おう」


クアトロは二人に背を向け、

軽く手を振った。


「行ってこい」


一拍。


「俺はここで――」


鎖に絡まった黒炎が、陽気に揺れる。


「全部が転ぶのを見てる」


冥府の王ではない。

裁定者でもない。


裏から世界をひっくり返す男の顔で、

クアトロは笑った。


「正義が失われた後の世界」


黒炎が、くつくつと笑う。


「次に笑うのは、どこの馬鹿だ?」


冥府は今、静かに全面進攻を開始した。


冥府側が本格的に動き出しました。

クアトロは王を剥奪され、世界をかき回す存在となりました。

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