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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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結果を否定する皇帝と、光に戻ろうとした男

英雄は一人で戦場に向かった。

それが、彼自身の選んだ責任の取り方だった。

 フィンは一人で戦場に向かった。

 それが、彼自身の選んだ責任の取り方だった。


 聖晶同盟の騎士団を飛び越し

 ――皇帝ドミノの姿を追い求める。


 聖都の外壁を越えた瞬間、フィンは再び大きく血を吐いた。

 乾いた大地に、赤が散る。


「……まだだ」


 喉奥に込み上げるものを無理やり飲み込み、

 剣を地面に突き立てて体を支える。


 聖水晶が、脈打っていた。

 鼓動ではない、力が吸い取られている。


(近いな……皇帝)


 帝国軍本陣が随分と聖都に迫っていた。

 数千の兵が隊列を組んで前進してくる。


 その中心にある、巨大な四輪馬車。


 そこに――皇帝ドミノがいる。


 フィンは最短で歩き出す。


 すでに英雄ではない。

 追われて死を待つだけの身だ。


 だが、行かねばならない場所がある。

 帝国軍の結界が視界に入る。


 三重。

 いや、四重か。


 以前なら、慎重に分析しただろう。

 だが今は――


「……斬れる」


 聖剣を振るう。


 これまでで最高の切れ味だ。

 光が走り、結界が紙のように裂けた。


 その瞬間、フィンの視界が一瞬、白く染まる。


(……ああ)


 内臓が焼かれる感覚。

 骨の内側で、聖水晶が軋む。


 使えば使うほど、死が近づく。


 理解している。

 だが、歩みは止まらない。


「侵入者だ!」


「黒騎士フィン――!

 やはり暴走したか!」


 帝国兵たちの叫び。


 だが、剣を振るう必要すらなかった。


 フィンが一歩踏み出すたび、

 光の圧が地面を削り、兵が弾き飛ばされる。


 幾ら吸い取られようと、制御されていない力が溢れだす。


(俺の存在そのものが災いを呼ぶ

 ……クアトロの言葉が、正しかったか)


 自嘲が喉に滲む。


 それでも――


(俺は、選んだ)


 陣幕の奥に静かに立つ影。

 左目が、冷たい青に光っている。


「来たか、帝国の至宝よ」


 皇帝ドミノは、笑った。


「随分と……壊れたな」


「黙れ」


 フィンは聖剣を構える。

 足元が、ふらつく。


 それを、皇帝ドミノは見逃さない。


「その聖水晶、もう臨界だろう?」


「……だから何だ」


「いや、感心している」


 ドミノは両手を広げる。


「それでも私の元まで来た。

 聖女を置いて、短い命を捨てに――」


「違う」


 フィンは、はっきりと言った。


「捨てに来た訳ではない。お前の侵略を止めに来た」


 ドミノは小さく肩を揺らした。


「まだ正義をのたまうか」


「――違う」


 一歩、前へ。


「けじめだ」


 聖水晶が、悲鳴を上げ、視界の端が黒く染まる。

 それでも、フィンは皇帝を見据えた。


「聖水晶は俺を選んだ。

 なら、最後まで使う」


 ドミノの笑みが、深くなる。


「いいだろう。

 青の宝玉を覚醒させた褒美だ。少し相手してやろう」


 皇帝の左目が、脈動する。


「見せてみろ。英雄が、何かを救えると思い込んだまま、

 どこまで世界を壊せるかを」


 光と青。

 二つの異質な力が、激突寸前で睨み合う。


 その時。


 フィンの胸元で――

 微かな温もりが灯った。


(……ルミナ)


 祈りではない。


 ただ、待っているという感覚。

 フィンは、剣を強く握り直した。


「――すぐ終わらせる」


 自分の命も含めて。


 聖水晶が、臨界へのカウントを、始めた。

 同期した青い光が、世界を上書きする。


 それは光でも、炎でもない。

 皇帝ドミノの左目から溢れたそれは


 ――秩序そのものだった。


 空間が静止する。


 否。

 静止したという結果だけが、選ばれた。


「これが、青の宝玉だ」


 ドミノの声は、空気を介さず、直接フィンの思考へ届く。


「お前が剣を振った事実は残る。

 だが、斬れた結果は、無かったことにできる」


 青が広がる。


 地面に残っていたフィンの足跡が、次の瞬間、

 最初から存在しなかったかのように消えた。


「……っ!」


 フィンは反射的に跳んだ。


 だが。


 跳躍の途中で、

 跳んだという事実そのものが、書き換えられた。


 身体が落ちる。


 重力ではない。

 ――そうなる結果が選ばれた。


「くっ……!」


 地面に叩きつけられ、血を吐く。

 聖水晶が、内側から激しく脈動した。


(……理不尽だな。皇帝らしい)


 だが、同時に疑問も浮かぶ。


 なぜ――

 これほどの力を、今まで使わなかった?


「どうした、黒騎士」


 ドミノが歩み寄る。


 一歩ごとに、青い紋章が地面に浮かび、消えていく。


「光水晶は奇跡を起こす。

 だが私は、《奇跡が起きなかった理由》を与えられる」


 フィンは剣を支えに、立ち上がった。


 視界が揺れる。

 聖水晶の熱が、臓腑を内側から焼いていた。


「……理屈はいい」


 聖剣を構える。

 刃が、白く輝いた。


「斬れるかどうかだ」


 踏み込む。


「《ライトニング》!」


 光が一直線に走る。

 世界を切り裂く、必殺の一撃。


 だが――


 ドミノは、動かない。


 斬撃は、皇帝の手前で意味を失い。

 光が、霧のように霧散する。


「無駄だ」


 ドミノは静かに告げた。


「君の攻撃は――

 《成功しなかった》」


 次の瞬間。

 青の光が、フィンを貫いた。


 否。

 貫いたことになった。


「が……ぁっ……!」


 身体に穴はない。

 だが、内側の何かが消し飛ぶ。


 肺がうまく動かない。

 心臓の鼓動が、一拍遅れた。


 聖水晶が、悲鳴を上げる。


「……これが……皇帝か……」


 フィンは、血に濡れた歯を見せて笑った。


「だが……」


 再び、剣を持ち上げる。


「俺は……まだ、立っている」


 ドミノの眉が、わずかに動いた。


「理解できん」


「……わかってる」


 息は整わない。

 もう、時間がない。


「闇じゃ勝てない。

 冥府の王にも、教えられた」


 剣の光が、変質する。


 鋭さではない。

 温度が、変わった。


「――最後は聖騎士として」


 フィンは一歩、踏み出す。

 その瞬間、光が爆ぜた。


 黒聖鎧アビス・レガリアに内側からヒビが入り

 砕けていく。


 刃に映るもの。


 ルミナの笑顔。

 守れなかった街。

 救えなかった命。


 そして――

 皮肉に歪んだ、クアトロの笑み。


「……俺だって」


 声が掠れる。


「光のまま生きたかった!!」


 光が収束する。


 狙いは――

 ドミノではない。


 フィンは振り返り、

 青の宝玉と冥府との接続点――

 灰の王冠の残滓へ剣を振るった。


 光が、直撃する。


 ――砕けた。


 青の光が、一瞬だけ遅れた。

 ドミノの意思が切り離される。


「なに……?」


 皇帝の声に、初めて困惑が混じる。

 秩序が乱れた。


(そう、皇帝は結果を選ぶ。

 だが――繋がりまでは否定できない)


 フィンの身体が、崩れ落ちた。

 膝をつき、大量の血を吐く。


 聖水晶が、限界を超えた震えを始める。


「……覚えておけ……ドミノ……」


 顔を上げる。

 目は、まだ死んでいない。


「俺は……負けても……

 聖騎士だ」


 「ぐっ」

 ドミノは、砕けかけた左目を押さえつけた。

 割れた青の宝玉が、意思に逆らうように脈動している。


 「一度ならず二度までも私の左目を、

 瀕死でも構わん。消し飛ばしてくれる」


 (させないっ!)

 祈りが、背後から差し込む。


 戦場に不似合いなほど、静かで、優しい光。


(……ルミナ)


 フィンは、笑った。


 次の瞬間。


 聖水晶が――

 無音で、臨界点へ踏み込んだ。

結果を否定する皇帝と

それでも折れない英雄

激突の行方は…。

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