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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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聖結晶の副反応

冥府で戦った相手を、俺は地上へ送り返した。

正義を貫く男は、最後まで正義のままだった。

気に入らねぇが、嫌いでもねぇ。

だから通した。それだけだ。


フィンは聖水晶からの浸食を半ば強引に切り離した。

行き場を失った膨大な力が光と闇に分かれ、体内を蠢く。

血の味が、喉の奥に溜まっていた。


「がはっ!」

 片膝をついたまま、胸を押さえ、耐えきれず口元から血が噴き出す。

 赤黒い血が石床に飛び散り、すぐに闇の霧に溶けて消える。


 ――まだだ。


 視界が揺れる。

 聖結晶が、内側から命を削っているのがわかる。

 力を拒絶しても、魂そのものが摩耗していく。


 それでも。


 フィンは、ゆっくりと立ち上がった。


「……覚えておけ、クアトロ」


 息を整えることすらせず、真正面から睨み据える。


「絆の強さでは……お前には、決して負けん」


 灰の王冠――砕け散った灰の残骸が、まだ空間に漂っている。

 だがクアトロは動かない。

 

 構えを解き、ただフィンを見ていた。


 その視線が、戦士を見るものから、

 ――死に向かう者を見るものへと、静かに変わった。


「そこを通せ」


 フィンは一歩、踏み出す。

 足が震えたが、止まらない。


「ルミナに……会いに行くのだ」


 その瞬間、クアトロは確信した。


 ――長くない。


 聖結晶の副反応。

 肉体と魂の乖離。

 この男は、勝ち負けを超えた場所に立っている。


 クアトロは、低く息を吐いた。


「……いいだろう」


 闇が、うねった。


 冥府の空間が裂け、地上へと続く光の道が開かれていく。

 闇と光が拮抗し、歪んだ回廊となって伸びていく。


 フィンは一瞬だけ、その光を見上げた。


「――俺も、貴様に礼は言わんぞ」


 振り返らずに言い放つ。


「正義を貫くのみだ」


 クアトロは、口の端を歪めた。


「はなっから期待しちゃいねぇよ」


 軽口のようでいて、その声はどこか乾いている。


「せいぜい――聖晶同盟を混乱させてくれや」


 フィンは、かすかに笑った。


 視界の先に、青い空が見える。

 焼け焦げた雲の向こうに、確かに――地上があった。


「……おお」


 その声は、ほとんど独り言だった。


「地上が、見えるぞ」


 フィンは背を向け、光の道へと踏み出す。


 その背中を、クアトロは最後まで見送った。


 ――正義を名乗るには、あまりにも重い覚悟だ。


 闇が、ゆっくりと閉じていく。


 冥府に残されたのは、砕けた王冠の灰と、

 一人の男が知ってしまった絆という名の敗北だけだった。


 地上への道が完全に閉じると、冥府は再び静寂を取り戻した。


 灰の王冠の残骸が、最後の熱を失って床に沈む。

 クアトロは、ただその場に立ち尽くしていた。


 その背から王の重みは消え、亡者達の悲鳴が満ちる。


 【ステータス異常】

 灰の王冠消滅。

 権能:《冥府召喚》消滅、称号:《冥府の王》剥奪。

 称号:荒くれ者を従えし《冥府のギャングスター》

 新権能:《冥府のネクロチェイン

 

「……行ったか」


 誰に向けた言葉でもない。


 だが、その静寂を破るように――

 風が、逆流した。


 冥府には本来、風など吹かない。

 魂は落ちるだけで、流れない。


「来るなよ」


 クアトロは、低く呟いた。


 空間の奥で、ディアボルスの気配が、かすかに揺らぐ。

 直接姿は見えない。

 だが逃げた風の名残が、確かにそこにあった。


 ――まだ、かき回すつもりか。


 クアトロは、舌打ちをした。


 あの女は――

 絶望した者の側に、必ず現れ、奪っていく。


「フィン……」


 名を呼びかけて、クアトロは口を閉ざす。


 あの男が地上に戻った以上、

 聖晶同盟は必ず揺れる。


 そして揺れた場所に、

 必ず――風は吹き込む。


「……地上は荒れるな」


 フィンは、長くない。

 ルミナは祈り続ける。

 ドミノはこの機を逃さない。


 歯車は、すでに噛み合い始めていた。


 クアトロは冥府の空を見上げる。

 そこには何もない。

 だが、確かに感じる。


 ――皇帝ドミノは確実に聖都に迫っている。


「俺もすぐには動けねぇ

 最後に、ルミナとよろしくやってくれや」


 呟いた瞬間、

 フィンの最後に残した笑顔がちらついた。


 最後の時は迫っている。


 誰かが、

 絶望を選ぶ、その瞬間を。


 クアトロは背を向け、バルガス達に歩み寄る。


 王を剥奪されたギャングスターとして


王冠は砕けた。

冥府の王は、これで終わりだ。

だが面白くなってきたじゃねぇか。

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