第六階層へ続く試練の門〈慟哭の原野〉
魔力ゼロ、HPほぼゼロ、味方ゼロ。
あるのは怨念と根性だけ。
そんな男が冥府の試練に挑みます。
灰色の空。
風に亡者の声が入り混じる。
地面には積み重なった白骨が転がり、
魂が風に混ざって渦を巻いていた。
【HP 18/5000】
【MP 0/3000】
【状態:よろめき歩行】
俺は、腐った足を引きずりながら歩いた。
膝は相変わらず逆向きで、
肉は剥がれ、動くたびに骨が軋む音がする。
「……ここが第六階層へ続く試練の門か
……俺の中の怨念が、形になって襲ってくるって話だな」
その時だった。
骨の山が、蠢いた。
「……ッ!」
影が立ち上がる。
俺と同じ姿――だが顔だけが、
劫火公爵カプリチェス・インフェルノの炎だった。
「四天王最弱。お前は、ここで死ぬべきだ」
ドンッ!
胸に蹴りが叩き込まれ、俺はなすすべなく吹き飛ばされる。
【HP 18 → 12】
「ぐっ……! 冗談じゃねぇ
……本気で殺しに来てやがる!」
立ち上がろうとした瞬間、別の影が現れた。
今度は、マルゲリウスの冷たい笑顔。
「弱者が生き残るのは、世界の損失だよ?」
ビシャッ!
水の鞭が容赦なく背中を裂く。
【HP 12 → 7】
「うあああっ!!」
さらに――
風を裂き、ディアボルスの影が舞い降りた。
「ははっ、最弱。
私が次の皇帝になるまで、
ずっとそこで這っていろ」
――皇帝、だと?
ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!
風の刃が雨のように降り注ぎ、体を切り刻む。
【HP 7 → 4 → 2 → 1】
俺は地面に叩き伏せられ、
歯を食いしばりながら骨を軋ませた。
(……こいつか)
六ヶ月前。
「四天王筆頭は損な役回りでな」
苦笑いで渡された、あの魔導器。
カプリチェスもハメられたって訳か。
――裏で、全部仕込まれていた。
「……てめぇかよ、ディアボルス
暴走の呪印を魔導器に……」
影が、冷たく笑う。
「聞いてどうする?
憎しみが強いほど、お前はここに縛られる」
MPはゼロ。スキルも使えない。
体は、とっくに限界だった。
「……クソ……魔力ゼロじゃ……何も……」
影たちが俺を見下ろし、容赦なく言葉を浴びせる。
「死ね」
「消えろ」
「役立たず」
泥に顔を押し付けられながら、俺は必死に呼吸した。
吸って、吸って――。
【HP 2 → 1 → 2 → 1】
「……まだだ……もっと……吸え……!」
瞬間――
【《すべての毒吸収》発動】
腐った風、腐った土、漂う魂の残滓。
それらすべてが毒として、体内へ雪崩れ込む。
【HP 1 → 5 → 12 → 25】
焼け付くような痛み。
だが――
「……まだ……死ねねぇ……!」
俺はズルズルと立ち上がった。
右腕は千切れ、左足は折れ、顔の半分は腐り落ちている。
それでも――立つ。
影たちが再び襲いかかってくる。
俺は逃げた。
這いながら、削られながら、
呼吸の度に、毒を吸った。
【HP 20 → 15 → 22 → 18 → 30……】
何度も意識が飛びかけ、何時間も地獄を味わった。
それでも――俺は一度も死ななかった。
そして、ついに。
影の一体が、膝をつく。
「……どうして……まだ……立てる……?」
俺はボロボロの体で、その足に手を伸ばした。
指先から、黒い火花が散る。
――ジュッ……。
影の足が、ゆっくりと腐り落ちた。
【《腐食の黒炎・微》スキル化】
――魔力が、無くても。
――命を削れば、燃える。
「憎しみが強いほどなんだって?
冥府でまで、俺を舐めやがって」
影たちは足元から崩れ、霧となって消え去った。
「弱さは罪じゃねぇ。必ず、復讐する。
特に――ディアボルス。
てめぇだけは、この痛みを思い知らせてやる」
【HP 42/5000】
【MP 0/3000】
【新スキル:《腐食の黒炎・微》Lv1】
俺は泥と血にまみれながら、
霧散した地面を踏みしめる。
「……次は……もっと強くなる……」
やがて、骨の大地の先に淡い光が見えた。
次の階層へ続く門が、静かに開き始めていた――。
見ての通り、まだ全然強くありません。
むしろボロボロです。
でも死んでないので勝ち、ということで。
ここからは二日に一度の更新です。
よろしくお願いします。




