クアトロ vs フィン(初撃)
冥王クアトロと黒騎士フィン。
聖水晶に導かれ、二つの力がついに衝突します。
冥府が、息を止めた。
黒炎と聖水晶の光。
二つの異質な存在が、同時にここにいる。
世界そのものが、理解しかねている。
クアトロは動かない。
灰の王冠が体に突き刺さったまま。
剣も、炎も、構えない。
ただ――立っている。
それだけで、冥府の法則が彼の背後に整列する。
権能相干渉:【二人に HP-500】
相対するだけで、衝撃波が肌を裂く。
「……来い」短い一言。
挑発じゃない。
裁定開始の合図だ。
フィンは踏み込んだ。光が爆ぜる。
聖騎士として鍛え上げられた、最速の初動。
《聖剣・ルクス=セラフィム》剣身が白く輝き、
同時に――黒い脈動が刃の内側を走る。
「――はあぁぁ!!」振り下ろされる一閃。
光と闇を孕んだ斬撃が、空間を引き裂いて走る。
「《聖光ライトニング》」
「一度、破ったはずだがな」
クアトロの手に五つの黒炎が収束。
鏡のような影を作り出す。
「ダメっ、ご主人様避けて!!」
動けないドラミィの、切迫した叫び。
咄嗟に身を躱す。
ズバァン!
黒炎の鏡面が真っ二つに切り裂かれ、背後の岸壁が抉れる。
「そうか…涼しい顔していやがるから気付かなかったが、
お前も死の淵をくぐり抜けてここに立っているわけか」
「次は、もっと速度を上げる」
確信があった。
帝国の闇水晶と融合した今の自分なら、
冥府の王であろうと、通用する。
フィンが地を蹴った。
亡者の墓標が、まとめて砕け散り、
冥府の地面が、防御反応として隆起する。
だが――クアトロは、避けなかった。
「……」黒炎が、遅れて動いた。
斬撃が、クアトロの目前で
――消えた。
弾かれたんじゃない。
相殺でもない。
存在の優先順位を、下げられた。
「……なに?」フィンの目が、見開かれる。
(今度こそ……当たったはずだ)
聖剣は伝えてくる、確かに、冥王を斬ったと。
なのに――
「効かねぇって言ったろ」クアトロの声が、近い。
次の瞬間。視界が反転した。
ドンッ!
フィンの身体が、冥府の地面を削りながら吹き飛ぶ。
「――ぐっ!!」
受け身を取る。鎧が軋む。
(殴られた……?)
いや。触れられただけだ。
拳に込められていたのは、力じゃない。
「奈落竜に使った……裁定、か」
フィンは歯を食いしばる。
血が滲む唇を、拭う。
聖騎士として、神の裁きを振るってきた自分が、
逆に裁かれる側に回っている。
「クアトロ!」立ち上がり、叫ぶ。
「俺はこんなことをしている場合じゃない!
冥府が破壊されたのは偶然だ!」
黒炎が、静かに揺れる。
「自覚がねぇのが、一番タチ悪ぃんだ」
クアトロは一歩、前に出る。
それだけで、フィンの足元の影が、絡みつく。
「お前が立ってるだけでな」拳を、軽く握る。
視界が揺れる。
地上での傷が癒えぬうちに、権能を使い過ぎた。
――少し言葉で揺さぶるか。
「冥府の瘴気は吸われ、階層主は暴走した。
原因は――すべてお前にある」
「違う!」フィンは反射的に否定。
「俺は、何も間違っていない。
ルミナの傷も癒えたはずだ!聖都に戻らねば――」
(少し回復した…)
クアトロは最後まで聞かなかった。
踏み込み。今度は、階層全体が動いた。
影が伸び、無数の亡者の視線が、フィンに突き刺さる。
「……っ!?」身体が、重い。
聖水晶が悲鳴を上げる。
光が、抵抗する。闇が、迎え入れる。
(……やめろ)自分の中で、二つの意思が、引き裂き合う。
「フィン」クアトロの声が、低く落ちる。
「まだ人でいたいなら」拳を、振り抜いた。
今度は――裁定ではない。
「ここで、止まれ」
――直撃。
バンッ!
フィンの身体が、地面に叩きつけられる。
衝撃で、肺の空気がすべて抜けた。
「……っ、は……」視界が、白く滲む。
だが。
立ち上がろうとする。
指が、聖剣を離さない。
血まみれの指で、握り直す。
(……まだだ)
(俺は、聖騎士だ)
その執念に、クアトロは一瞬だけ、目を細めた。
「……厄介だな」
初撃は、終わった。
だが、この戦いは――勝敗では終わらない。
どちらが正義を失うかを決める戦いだ。
「次は、お前が裁かれる番だ」
フィンが聖剣を前のめりに構えた。
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【ステータス】
クアトロ=フォルミア・デッドロット
HP:1970/6000
MP:820/5500
特性:冥府霊脈吸収(常時回復)
フィン・インペリア・テサリア
(旧:聖騎士フィン)
HP:4760/9000(永続ダメージ継続中)
MP:3000/5200
侵食が進むフィンの動きが重いです。
すでにクアトロを圧倒出来るだけの力は持っているのに…。




