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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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王の帰還

冥府崩壊寸前。敗北濃厚の戦場に、

ついに王が帰還します。

 冥府が、鳴いていた。


 空間そのものが軋み、管理区の地盤が砕け

 瘴気が悲鳴のように噴き上がる。


 変貌した黒龍――もはや階層主の面影を失った怪物が、

 最後の一撃を振り下ろした。


 ――ドォン。


 衝撃。


 バルガスの身体が壁へ叩きつけられ、

 大剣が、手から零れ落ちた。


「……ぐ、ぁ……」


 立ち上がろうとして、

 すでに砕けた膝が動かないことに気付く。


 エレシアは杖を支えに辛うじて立っていたが、

 杖は半ば溶け、息は荒い。


「……バルガス、限界だ……」


 エレシアは魔力枯渇で膝をつき、

 灰の契約者は塵となって冥土の瓦礫に飲まれていく、

 それを振り返る余力すらない。


 ――敗北。


 誰の目にも、明らかだった。


「管理者……排除完了、目前……」


 二つの口が、同時に告げる。


 その瞬間。


 冥府の奥で――

 黒い熱が、脈動した。


 瘴気が、一斉に後退する。


 《アビス・ドレイク》が、初めて動きを止めた。


「……?」


 次の瞬間。

 空間が、溶け落ちた。


 黒門が開く。

 否――黒炎そのものが門となって裂けた。


「――おせえじゃねぇか!!」


 轟く声。


 冥府全域に響く、怒声。


「王よ!!」


 黒炎を踏みしめ、

 一人の男が、歩み出る。


 冥王クアトロ=フォルミア・デッドロット。


 全身を覆う黒炎は、もはや衣のように揺らめいている。


 バルガスが、血に濡れた口で笑った。


「やっと……帰ってきやがったか……」


「悪かったな」


 クアトロは即答した。


 視線は、黒龍へ。


「留守中に――

 随分、好き放題やってくれたみてぇだ」


「冥府の管理権限……反応……?」

 その声は、微かに揺れていた。


「当たり前だろ」


 クアトロは、手を伸ばす。


「――冥府は、俺の領土だ」


 背後から、

 蒸発しかけた小さな影が、よろめき出る。


「……主、さまぁ……」


 ドラミィだった。


 光結晶に侵され、

 輪郭が崩れかけている。


 クアトロは、即座に振り返る。


「バルガス!」


「……あぁ?」


「ドラミィを預ける。冥府なら再生できるはずだ」


 有無を言わさず、腕を伸ばす。


「守れ。

 こいつは――俺の家族だ」


 バルガスは、歯を見せて笑った。


「瀕死の俺に……命令か?」


「頼みだ」


 一瞬の沈黙。


「……仕方ねぇな」


 バルガスは筋肉を盛り上がらせ、ドラミィを受け取り、

 背中で庇う。


「絶対に死なせねぇ」


 その言葉を背に。

 クアトロは、前へ出た。


 冥府リンク再接続。吸い上げられていた

 霊脈が落ち着きを取り戻す。

 

 黒炎が――全身を包み込み、同化する。


「宣言する」


 冥王クアトロの声が、冥府全域に響く。


「冥府の支配を、取り戻す!」

 額の紋章が輝く。


 管理区、全階層が脈打つ。

 途切れていた支配が、一本に繋がる。


――《冥府の真王》、再起動。


 クアトロは、黒龍を睨み据える。


「裏切り者――お前はもう、階層主じゃねぇ」


「偽王クアトロ、貴様こそ冥府の最下層で死ぬべきだった」


 冥府が、その奥に潜む幾千の亡者が、

 帰還した王を見定める。


 クアトロの足元から、霊脈が吹き上げ、

 灰の王冠が力を開放する。


亡者が立ち上がり、地面が闇に染まり、

黒炎が空を覆った。


「……王権発動」


 低く告げた瞬間

 足元の闇が波紋のように広がる。


 黒龍アビス・ドレイクの変貌が止まり、

 巨体が、軋む。


 黒水晶の脈動が、明確に乱れた。


「……権限競合……?」


 黒龍の複眼が、クアトロを捉える。


 ――否。


 闇に潜む炎を見ている。


「今さら理解したか」


 クアトロは一歩、踏み出す。

 炎がリング状に黒龍を拘束していく。


「お前は紛い物だ」


 冥府権限の同時起動の代償

 灰の王冠から接続の棘がクアトロに突き刺さる。


「黒水晶の力を通しただけで、

 ――力に溺れた」


 次の瞬間、黒龍が吼えた。


 炎の拘束が強まり、外殻が砕け、

 内側からさらに黒いものが溢れ出す。


 鱗は崩れ、骨格が再構成され、

 四肢が刃へと変質する。


 ――奈落竜。

 聖水晶から加護を受け、毒も、黒炎も効かない。

 対クアトロに特化した耐性。


「新王フィン様の為に死ね……」


 奈落竜が突進する。


 空間を踏み砕き、

 生物であれば、かすっただけで即死の一撃。


 だが、巨大な質量が、止まった。


 クアトロの片手が、奈落竜の爪を掴む。


「――効かねぇよ」


 握力ではない、冥王の腕から幾千の霊脈が迸る。


「ここは冥府だ」


 次の瞬間。


 クアトロの背後に、無数の亡者が立ち上がる。


 裁かれた英雄。

 処刑された王。

 冥府に落ちた、すべての魂。


「奈落竜だろうが関係ねぇ」


 クアトロの声が、亡者の声と重なる。


「――俺は冥府そのものだ」


 黒炎が、爆ぜた。


「黒炎耐性……無効化発動」


 だが、弾かれた黒炎は一ヶ所に収縮していく。


「どうした?俺の黒炎はまだここにあるぜ


 ――収縮した黒炎に、

 火と水の称号を織り交ぜる…」


黒炎がごぽごぽとと不吉な音色を奏で始める。


「裁きを受けろ《黒炎圧縮・プロミネンス》」


奈落龍がブレスを吐き出すが、

 圧倒的な炎の衝撃波で鱗が剝がれていく。


 奈落竜が、悲鳴を上げる。


 だが、もう遅い。

 クアトロは、拳を掲げた。


「処刑開始だ」


 踏み込み。

 冥府全域が、一瞬、静止する。


 そして。鱗が剥がれむき出しになった体表を

 ――殴った。


 音はなかった。


 だが次の瞬間、奈落竜の巨体が分解される。


「フィン様、お助けを……!」


 奈落竜の咆哮が響き渡る。


 その時。


 冥府の奥から、白い光が差した。


 黒炎とは対極の輝き。


 「戻れ、奈落竜」


 不意にフィンの声が響く。


 奈落竜が水晶片となり、鎧に張り付き、

 鎧に龍の刻印が浮かび上がる。


「クアトロ、そこまでだ」


「フィンか、しばらく見ない間に変わっちまったな」


左右で瞳の色が変わり、聖剣が再生している。


聖水晶から取り込んだ力が体内に収まらず

光の帯となって取り巻いていた。


(こいつ、聖水晶を取り込んだのに、

 顔色一つ変えてねぇ)


 だが、本来、相容れないはずの光と闇。


「俺は何もしちゃいない」


「――ならば、何故ここに?」


「わからないなら教えてやる。お前は落とされたんじゃない。

 自分で冥府に落ちたんだ」


「戯言を」


「俺もな、冥府をここまで荒らされて頭に来てる。

 手加減は、出来ねぇぜ」


 バルガスは、

 ドラミィを抱えたまま、呟いた。


「……これで、冥府の運命が決まる」


次回、フィンとクアトロの決戦が始まります。

続きをお待ちください。

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