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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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冥府侵食――階層主アビス・ドレイク顕現

冥府を守るはずの階層主。

黒水晶に侵された守護者を前に、

冥王代理バルガスは退かず立ちます。

 冥府が、軋んだ。


 管理区の天井を覆う魂循環の紋様が、

まるで悲鳴を上げるかのように歪み、


本来は死者を安定へ導くはずの流れが、

一点へと引き寄せられていく。


「来るぞ……!」


 バルガスの低い警告が響いた直後、

冥鉄で造られた床が内側から隆起し、耐えきれずに破裂した。


 轟音とともに、黒い巨躯が姿を現す。


 それは黒龍だった。


 黒曜石のような鱗を持ち、

冥府の瘴気すら拒絶する異質な光沢を放つ巨体。


その胸には、脈打つ黒水晶の欠片が埋め込まれ、

まるで心臓のように明滅している。


 ――階層主アビス・ドレイク。


 本来ならば、冥府の入り口を守る門番。


 だが今、その姿は明らかに異質だった。


「……管理者、バルガス」


 地鳴りのような声が、空間を震わせる。


「光の戦士フィン様の意志により、地上への障害を排除する」


 その言葉に、エレシアの表情が凍りついた。


「違う……光の戦士は、こんな命令をしない」


 黒水晶だ、と彼女は瞬時に理解する。


 聖水晶と融合した黒水晶が、フィンの正義を歪め、

 極端な形で具現化しているのだ。


 アビス・ドレイクが一歩踏み出すだけで、

 管理区の床が沈み込む。


「防御陣を展開します!」


 エレシアが杖を掲げ、《冥符結界》を展開した。

幾重もの魔法陣が重なり、空間そのものを封鎖する。


 しかし、黒龍の爪が触れた瞬間

 ――結界は音もなく砕け散った。


「術式が……消されている……?」


 魔法が破られたのではない。

成立そのものを拒絶されている。


 バルガスは、その光景を見据えたまま前へ出た。


「ならば、力で止める」


 巨大な大剣を握り直し、黒龍の進路に立つ。


 アビス・ドレイクが突進する。

空気が圧縮され、衝撃だけで周囲の亡者が吹き飛んだ。


 バルガスは退かなかった。


「――《冥府裁断・物理解放》」


 魔法攻撃をあえて断ち、純粋な筋力と質量だけを解放する。


 大剣と鱗が激突し、雷鳴のような衝撃が走った。


 黒龍の外殻に、わずかな亀裂が刻まれる。


「……効いた」


 バルガスは確信する。


「魔法ではない。物理なら通る!」


「了解。支援を集中する!」


 エレシアが即座に補助術式を重ねる。

 灰の契約者が一拍遅れて、支援魔法を唱え始める。


《剛力付与》

《重装加護》

《衝撃耐性》


――魔法そのものではなく、対象の肉体を直接強化する術だ。


 力が流れ込み、バルガスの筋肉が膨張する。


 だが、その背後で異変が広がっていた。


「亡者が……集まってきている!」


 鉄葬兵団の叫びとともに、

管理区の外縁から無数の亡者が押し寄せてくる。


魂循環が乱され、制御を失った死者たちが、

黒龍の存在に引き寄せられていた。


「兵団は亡者を抑えろ! ここは俺が止める!」


 バルガスは黒龍から目を逸らさず命じる。


 その瞬間、黒龍の身体に変化が走った。


 亀裂の入った鱗の隙間から、黒水晶が噴き出す。


 冥府の瘴気を吸収しながら結晶が増殖し、

 巨体をさらに肥大させていく。


「……再生しているのか?」


「違う」


 エレシアが低く呟いた。


「霊脈を吸収した黒水晶の暴走よ」


 背中が裂け、もう一つの首が形成される。

翼は崩れ、代わりに空間の歪みそのものが羽のように広がった。


 それは、もはや階層主ではなかった。


 冥府侵食体。


 冥府を喰らいながら拡大する、災害そのもの。


「管理者……排除対象……」


 二つの口が同時に開く。


「ちきしょう……!」


バルガスは叫んだ。


「お前は冥府の門番だったはずだ!

 守る側だっただろうが!」


 黒龍は、応えない。

 辺りの重力が歪み始める。


「退け、バルガス!」


 エレシアが叫ぶ。


 だが、彼は動かなかった。


「退かん」


 大剣を握る手から血が滴る。


「王が戻るまで――ここを守るのが、俺の役目だ」


 黒龍の前脚が振り下ろされる。


 重力そのものが落下したかのような衝撃が、

 管理区を揺るがした。


 柱が折れ、亡者が吹き飛び、空間そのものが悲鳴を上げる。


 バルガスは、咄嗟に重心をずらしたが

 骨が、鈍い音を立てて砕けた。


 片脚が潰れ、冥鉄の床へ深くめり込む。


「まだ終わらん……!」


 片足を犠牲にしながら大剣を振り抜き、

 黒水晶の結晶を叩き割る。


 だが砕けた結晶は、冥府の壁面から即座に再生成される。


「だめっ、このままでは

 ……管理区が先に崩壊する……!」


 エレシアの声が震える。


 黒龍の顎が開き、消滅の奔流が解き放たれようとした、


 その瞬間。


 冥府の最奥でフィンの瞳が開く。


 フィンの胸の聖水晶が

 ――強く脈打った。


 まるで、自らが引き起こしている破壊を、

 初めて認識したかのように。

守るための正義が、破壊を生む矛盾。

そして、先にバルガスの危機に訪れるのは

クアトロかフィンか。

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