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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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冥府が壊れ始めた日

冥府の異変に、腐死公爵は気づく。

静寂は嵐の前触れ。

帝都で完成した切り札が、世界の均衡を崩し始める――。

劫火公爵領。


冥府の声が――消えた。


執務室を満たしていたのは、ただの静寂ではない。

向こう側の沈黙だった。


俺は椅子に背を預け、ゆっくりと呼吸を整える。


激戦の傷は癒えつつある。

だが、胸の奥に巣食う違和感だけが、消えない。


「主様ぁ、こちらをどうゾン♡」


ドラミィがいつもの調子でグラスを差し出す。


その笑みが、今はやけに遠く見えた。


ワインを喉に流す。


味がしない。


(四天王としての責任を果たせ)


カプリチェスの冷たい声が、頭の奥でこだまし、

振り払おうとしても振り払えない。


わずかに頭を振る。


「復讐は続ける。余計なことは考えるな」


ワインの香りが、甘く鼻をくすぐる。

だが、胸の奥の違和感は消えなかった。


「……おい」


胸の奥に問いかける。

冥府へ。


返事はない。


(切れている……?)


その瞬間、足元の大理石が黒く変色した。

瘴気が、逆流する。


「吸われてる……?」


冥府の瘴気が、どこかへ引き抜かれていく。

まるで――冥府そのものが呼吸を止められたかのようだ。


管理でも浄化でもない。

ただの吸収。


王権の根幹が、物理的に断ち切られていく感覚。


(これは……奪われている……!)


闇と土の魔力が、制御を失いかける。

冥府の力は、俺の補助輪だった。


死者の重みを、大地に還すための回路。


それが消えれば――


「冥府が……溢れる」


額の土の紋章がひび割れる。


「……ふざけるな」


俺は拳を握りしめる。


確信が、冷たい血のように胸を貫く。


冥府の瘴気を吸い上げる装置――闇水晶。

フィンを器にするための下地。


冥府の瘴気、光と混ぜるには、最悪の媒介。


「……やりやがったな」


拳を地面に叩きつける。


勝つためなら、壊れても構わない。

使い潰しても構わない。


それが、ドミノ・ルーメン。


「冥府が荒れれば、地上に死者が溢れる」

「ご主人様…」


俺は歯を食いしばる。

冥府には自由にやれとは言ったが、そういう意味じゃねえ。


その時、微かに――冥府から声が届いた。


『……王……』

『戻れ……』


俺は目を閉じる。


「……待ってろ」


リンクは切れたが、完全ではない。


「冥府は、俺の責任だ」


重く、張り詰めた空気が変わる。

風が、軋む。


上空から、ぱち、ぱち、と乾いた拍手が響いた。


「いい反応だ、腐死公爵」


風が室内に渦を巻く。

姿を現したのは、暴風公爵ディアボルス、そして竜騎士レイン。


「お前の想像通り、帝都で完成した」


俺は睨み返す。

だが、ディアボルスの様子がおかしい。

全身に裂傷、飛竜に捕まるのがやっとの状態だ。


「……その姿、何があった?」


「そうね、死ぬほど痛いわ」

ディアボルスは震える手で血に濡れた青銀の長髪をかき上げ。

小さく吐息を漏らした。


「私ももう、帝都には戻れない。ドミノとは決別した」


「どうせ、裏切ったんだろう。

 だが、俺の時みたいに裏でこそこそ動いたわけじゃなさそうだ」


「…少し情報をやろう」


「聖騎士フィン。

 正義の塊――お前が倒した、あの青年だ」


俺の胸が、いやな音を立てた。


「お前への切り札となった」


「――!」


「光だけの剣は脆い。

 だから皇帝は聖水晶にした」


ディアボルスの深い蒼の瞳が細まる。


「光と闇。

 両立しないものを、無理やり人に詰め込む」


「そんなこと……」


「できるわ。

 壊れても構わないなら」


俺は、言葉を失った。


(死んだわけじゃねぇのか。

 救われたのか、それとも――利用されたのか)


ディアボルスは続ける。


「お前と、黒騎士フィン。

 どちらが勝っても皇帝を利する」


風が強まる。


「腐死公爵。冥府に戻るのはやめておきなさい。

 今戻れば、あなたも吸われる」


「止める気か?」


一歩、前へ。

床が割れる。


「冥府が呼んでるんだ。

 王が行かなくて、誰が行く」


眉間に縦皺が寄る。


「その体で俺を止められるなら――やってみろ」


執務室の壁が弾け飛び

風と瘴気が、正面から衝突した。

皇帝の一手は、波紋を広げていきます。

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