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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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暴風公爵ディアボルス参上・裏切りの章

冥府が揺れる中、地上では皇帝と最後の四天王の思惑が交錯します。

暴風公爵ディアボルス、その裏切りと選択。

 治癒魔導陣が、玉座の間に淡い光を満たしていた。


 皇帝ドミノ・ルーメンは、

 右目を包帯で覆われたまま、玉座に座している。

 滴っていた血は止まったが、失われたものは戻らない。


 だが、風鏡は見ていた。

 フィンの一閃は、確かに届いたと。


 そして、風が吹いた。


 扉が開いたわけではない。

 それでも、長大な玉座の間の燭台が一斉に揺れる。


「皇帝陛下」


 軽やかで、どこか戯れるような声。


 次の瞬間、柱の影から現れたのは――

 青銀の長髪を腰まで流した女。


 深い蒼の瞳は、宝石のように澄みながらも冷たい。


 暴風公爵ディアボルス。

 最後まで招集に応じなかった、四天王の一角。


「ずいぶん――ご無理をなさいましたわね」


 長いスリットから覗く脚には装甲を兼ねた蒼銀のブーツ。

 歩くたびに、床に落ちた石粉がふわりと浮かぶ。


「何の用だ」


 皇帝は、微動だにしない。


「招集にも応じず、今頃姿を現すとは」


「聖騎士フィンは、聖水晶をその身に宿し――

 すでに聖都へ戻ったとか」


 その一言で、玉座の間の空気が張り詰める。


「……だから何だ」


「これで聖都アドロスも終わり、ですわね」


 くすり、と笑う。


「クアトロは冥府に引き戻され、

 地上は帝国のものとなる」


 皇帝の口元が、わずかに歪んだ。


「理解しているなら、用件はそれだけか?」


「いいえ」


 ディアボルスは、一歩、前へ出る。


「最後に残ったフィンを処理する――

 秘策を、すでにお持ちでしょう?」


 その言葉に、宰相サミールが息を呑んだ。


「……なぜ、わかる?」


 皇帝の声は低い。


 そこに怒りはない。

 あるのは、警戒だけだ。


「簡単な話です」


 ディアボルスは、指先で空をなぞる。


「皇帝陛下のことは――

 隅から隅まで、調べさせていただきましたから」


 風が、渦を巻く。


「特に保険の在処は、ね」


 沈黙。


 次の瞬間――


「……青の宝玉を、お出しください」


 玉座の間が、凍りついた。


「ついに――尻尾を、現したか」


 その視線は、鋭く、冷たい。


「それは帝国の秘宝だ。

 四天王といえど、触れてよいものではない」


「ええ、存じております」


 ディアボルスは、優雅に一礼した。


「だからこそ、欲しいのです」


 彼女の思考は冷静だった。

 フィンの一撃を皇帝は受けた。


(青の宝玉はまだ覚醒していない、今なら奪える。)

 

「……裏切る気か、ディアボルス」


「いいえ」


「私は最初から、

 陛下の勝利に賭けていなかっただけ」


 蒼の瞳が、細められ

 風が変質し、優雅だった気流が牙を剥く。


 石床が軋み、天井の装飾が震える。

 ディアボルスの長髪が空中に広がり、瞳が冷光を帯びた。


 竜巻が、玉座へと襲いかかる。


 皇帝は、嗤った。


「そこまで言うなら――見せてやろうか」


 玉座に凭れていた身体が、ゆっくりと起き上がる。

 聖剣の一撃で、閉じられたはずの左眼。


 その眼窩の奥で、

 深海のような青が――開いた。


「青の宝玉を目に焼き付けて死んでいくとよい」


 次の瞬間、空気が裏返る。

 

 ディアボルスが放った風

 ――いや、王座を裂くはずだった暴風が、

 皇帝の周囲で吸い込まれるように収束した。


「……っ!?」


 ディアボルスが息を呑む。

 自分の力が、抵抗もなく奪われていく感覚。

 石化砂の竜巻が、皇帝の左眼へと引きずり込まれていく。


 そして――


 数倍に膨れ上がった風圧が、逆流した。


 衝撃。

 石畳が抉れ、結界が悲鳴を上げる。


 バシュ。


 風を自在に操るはずのディアボルスの身体が宙を舞い、

 石畳に叩き付けられ、口元から血が噴き出る。


 痛みより背筋が震える。


(あの時、フィンの一撃を防げなかったのではない、

 使わなかったのだ)


 吸収を見せなかった。

 未完成と誤認させるため。


 ――自分を釣るために。


「フィンを壊すわけにはいかなかったが」


 皇帝は、憐れむように口角を上げる。


「お前は――壊れても良さそうだ」


 意識が遠のく。

 まさか、私はここで死ぬのか。


「ディアボルス!」


 声がした。

 空を裂いて、飛竜が突っ込んでくる。


 その背から、伸びた腕。

 掴まれ、引き上げられる。


 ――レイン。


「逃げるぞ」


 短く、それだけ言って、ディアボルスを抱え上げる。


 皇帝の視線が、鋭く細まった。


「聖晶同盟の裏切り者か」


 青の左眼が、冷たく輝く。


「今ここでディアボルスを渡せば――

 ルミナを、お前にやろう」


 沈黙。


 次の瞬間、レインの声が叩きつけられた。


「……俺を見くびるな」


 飛竜が吼える。

 レインは皇帝を睨み返した。


「ルミナは――ものじゃない!」


 飛翔。

 青の光を背に、二人は空へ消える。


 皇帝は追わなかった。

 ただ、左眼の青を静かに沈める。


「これで……帝国四天王は消滅か」

 どこか寂し気なその呟きが漏れる。


(お前の読みは半分正解だ、ディアボルス)


「陛下…」


 ドミノは一度首を振ると、

 青の宝玉が眼窩に吸い込まれるように消えた。


「首都の軍備を再編しろ。

 聖晶同盟を砕く時が来た」


その声に、もはや迷いはなかった。

皇帝の方が一枚上手でしたが、

負傷したディアボルスはクアトロに迫ります。


ディアボルス〈AIイラスト〉

挿絵(By みてみん)

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