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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第三章 冥府での騒乱

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王なき冥府に、英雄は牙を剥く

闇水晶の暴走が王なき冥府で牙を剥く。

冥府は、崩壊を始めていた。


王クアトロが地上に不在の間に、

《闇水晶》が霊脈を喰らい尽くそうとしていたのだ。


死者の呻きも、裁定の声も消え、

冥府は異様な静寂に沈んでいる。


――静けさとは、終わりの前兆だった。


「……やはりな」


冥府上層の水晶宮で、

白髪の老人が闇水晶の映像を見つめていた。


上層管理者ルナリス。


冥府を王の代わりに統治する、

数少ない管理者の一人。


「王は戻らぬ。

冥府は、地上の燃料として使われる運命だ」


その声に、諦観と諦めが混じる。


「王のいない冥府は、冥府ではない。

ならば静かに畳むのが、管理者の責務だ」


「勝手に終わらすんじゃねぇ!」


黒鉄の鎧をまとった巨躯の男が、虚空を見上げる。

背に負うのは、かつての皇帝すら斬った大剣。

胸には、砕かれた王家の紋章。


旧王国守護将軍。

《鉄血の英雄》バルガス。


「王がいねぇ隙に、冥府ごと奪われてたまるか……」


空に穿たれた黒い穴から、瘴気と魂が吸い上げられていく。

冥府の空に浮かぶ魂灯が、一つ、また一つと消える。



瘴気に満ちた冥府の塔の上。

赤い瞳の女が、その光景を嗤って見ていた。


《灰燼の魔女》エレシア。


疫病に滅びかけた都市を救うため、

禁術で一国を焼き払った女。


世界は救われ、

彼女は「大量殺戮者」として冥府に堕とされた。


「……ふふ」


闇水晶の穴を見上げ、彼女は唇を歪める。


「管理者が滅びを選ぶなんて、

 ずいぶんと人間的ね」



バルガスの背後で、瘴気が蠢いた。


首を刎ねられ、

胴を貫かれ、

それでも剣を手放さなかった亡者たちが、

次々と姿を現す。


かつて、彼と共に戦い、

戦場で死んだ兵士たちだ。


「将軍……」


骨の喉から、掠れた声が漏れる。


「また……戦えるのか……」


バルガスは、大剣を肩に担いで頷いた。


「当たり前だ。

死んだくらいで、仕事が終わると思うな」


彼は叫ぶ。


「お前らは今から――《鉄葬兵団》だ!

自我のねぇ亡者どもは、俺たちが守る!」


亡者の軍勢が、剣と槍を地面に打ちつける。


ゴン……ゴン……!


冥府に、戦の鼓動が戻る。



一方、エレシアの足元からも、影が這い上がった。


焼け焦げ、

内臓を晒し、

それでもなお彼女を見上げる亡者たち。


――かつて、彼女が救い、

そして焼いた都市の住民たち。


《灰の契約者》。


「魔女様……」


「俺たちは……まだ……あなたに……」


エレシアは、少しだけ目を伏せた。


「ええ。縛ってるわ。

……今度は、冥府を守るために」


彼女は微笑む。


「《灰燼の魔女》の名、もう一度使わせて」


亡者たちは、歪んだ笑みを浮かべた。


「喜んで……」



バルガスとエレシアが、瘴気の荒野で向かい合う。


「冥府は、もう長くもたねぇ」


「吸い上げられた瘴気の行き先は地上ね」


「聖騎士か……」


バルガスは歯を噛みしめた。


「王が戻るまで、俺たちが持たせる」


エレシアが嗤う。


「管理者は滅びを選んだ。

 反乱ね」


「違う!!」


バルガスは即答した。


「これは――王の帰還を迎える戦争だ」



その瞬間。


空席の王座が、ぎ……と軋んだ。


歓迎でも、拒絶でもない。

ただ、値踏みするように。


エレシアが囁く。


「見られてるわよ」


バルガスは大剣を握りしめた。


「王よ……戻るなら、早くしろ。

 俺達が冥府を奪う前にな」


冥府は、

英雄たちの手で、戦場へと変わった。


――すべては、冥府の王クアトロが帰還するその日まで。

冥府を守るために起きた反乱。

それは王クアトロの帰還を望んだものでした。


バルガスとエレシア〈AIイラスト〉

挿絵(By みてみん)

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