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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第二章 地上で渦巻く陰謀

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聖水晶が求める代償

聖水晶に選ばれたフィンは、

飢えという呪いを背負って、皇帝と対峙します。


「……ルミナの声が、聞こえた気がした」


フィンの意識が戻り、胸に手を当てる。

そこに埋め込まれた聖水晶が、静かに脈打っていた。


温もりはない。

あるのは――飢えだけだ。


力はある。

だが、代わりに満たし続けねばならない。


生き物の鼓動。

生体エネルギー。


それを、欲している。


「聖都に戻るのが怖いか?」


背後から声がした。


皇帝ドミノ・ルーメン。

この世界で最も多くの命を計算として扱う男。


「……いや」


「ほう。なら、こう言い換えよう」


皇帝は、楽しそうに笑った。


「正義を掲げたまま、飢え続けることは怖くはないのか?」


フィンの胸の聖水晶が、ぴくりと反応する。


「お前の体内の聖水晶は、生き物の魂を喰らう。

 中にある闇水晶は、冥府の死者を吸い上げる」


「つまり――」


皇帝の声が低くなる。


「お前が剣を振るたび、誰かの生と死が削られる」

フィンの喉が、わずかに鳴る。


「冥府の女王モルゴーラが恐れていたのはそれだ」


「死者の輪廻が止まり、

 冥府が枯れれば、生者を求め氾濫する」


「モルゴーラの後を継ぎ、

 それを食い止めているのが――」


フィンは、名を知っていた。


「クアトロ=フォルミア・デッドロット」


その名を口にした瞬間、

聖水晶が、わずかに震えた。


「奴は冥府と繋がっている」


皇帝は、断言する。


フィンの脳裏に、報告書の断片が浮かぶ。


――冥府帰り

――黒炎

――四天王最弱


「闇水晶を安定させるには、クアトロを倒さねばならぬ」


「……俺に闇になれということか?」


フィンは言った。

声は、揺れていない。


「違う、英雄となるのだ」


沈黙が落ちる。


遠くで、鐘が鳴った。


「フィン」


皇帝ドミノは、声を落とす。


「聖水晶の声を聞け」


「この《渇望》に身を任せろと?」


皇帝の右目が、愉悦に細まる。


「お前なりに解釈すればいい。

 冥府の王クアトロが、地上に出て、どれほど世界を歪めたか」


フィンは、深く息を吸った。


(……クアトロ)

冥府に選ばれた存在。


だが――


「その前にやることがある!」


フィンは、剣を抜いた。


光と闇が、刃に同時に宿る。

反発する力が弾け、

柱に付けられた結界装置が破壊される。


「ドミノ、お前を生かしてはおけない」


「私は約束を果たしたぞ」


皇帝は柱を振り返ろうともしなかった。

淡々と、事実だけを並べる。


「聖女ルミナは治療した。


持ち込んだ光水晶には、必要な力を与え、返却もした。

そして――水晶が要求する代償についても、説明したはずだ」


理屈は、整っている。

逃げ場のないほどに。


だが――


フィンは、剣を構えた。


「……理屈じゃない」


低く、押し殺した声。


「この身体に宿った聖水晶が、

 貴様を悪だと言っている」


空気が、張り詰める。


「正義とは便利な言葉だな、フィン」


皇帝の言葉と同時に、三重の結界が展開された。


次の瞬間――


「おおおおおっ!」


閃光。


一閃で、第一層が裂け、

第二層が砕け、

第三層をも――断たれた。


刃は届く。


皇帝の右目から、血が走った。

鮮血が玉座を染め、皇帝の仮面のような笑顔を歪める。


「……想像以上の力だ」


皇帝ドミノは、笑った。

評価するように、愉しげに。


「だが、いいのか?

 こんなところで力を使い果たして。

 聖都で――ルミナに会おうとは、思わんのか?」


一瞬、フィンの脳裏に、聖女の笑顔がよぎる。

胸の聖水晶が、渇望を強めて疼く。


それでも、剣は下がらない。


「貴様に――言われるまでもない」


一歩、踏み出す。


「世話になったな」


それは礼ではない。決別だ。


フィンは、剣を振り下ろさなかった。

代わりに、背を向けた。


この場で皇帝を斬ることが、

正義ではないと――聖水晶が、そう告げていた。

――いや、自分自身が、そう選んだからだ。


「――皇帝陛下!!」


悲鳴に近い声が玉座の間に響いた。


「よい」


皇帝ドミノ・ルーメンは、即座に制した。

右目から滴る血を、指先で押さえながら。


「欠陥品であれば、多少の誤作動は想定内だ。

すべては――帝国のため」


その声に、怒りはない。

ただ、確信だけがあった。


「治癒班! 早く傷を塞げ!」


宰相が叫ぶ。


だが、皇帝は視線を上げたまま、止めなかった。


「クアトロよ」


血に濡れた右目の奥で、

何かが、愉しげに光る。


「冥府が混乱したまま――

フィンを迎え撃つことが、できるかな?」


皇帝ドミノは、ゆっくりと笑った。


妖しく。

すべてが予定通りであるかのように。


帝都外縁。

夜明け前の空は、まだ色を持たない。


フィンは高台に立ち、帝国の街並みを見下ろしていた。


胸の奥で、聖水晶が――飢えている。


それは痛みではない。

焦燥でもない。


「足りない」

ただ、それだけを訴える渇望だった。


(……これが、受け入れた代償か)


フィンは拳を握りしめた。


「……俺を聖晶同盟は受け入れてくれるのか」


黒く染まった鎧を見たルミナの悲痛な顔が浮かぶ。

「先にレインか――」


フィンは跳躍する。

夜明け前の空へ。


【ステータス】

フィン・インペリア・テサリア

(旧:聖騎士フィン)

HP:8762/9000(永続ダメージ付与)

MP:3800/5200

称号:《帝国の至宝》《光闇融合体》

装備:黒聖鎧アビス・レガリア

鎧特殊効果:

・闇属性ダメージ80%減衰

・毒無効

武装:《聖剣・ルクス=セラフィム》(再臨)

・光属性超特効

・闇属性同時付与(侵食型)

・ 冥府属性に対して固定ダメージ貫通

加護:――(消失)

人格侵食率:37%


フィンは勝ったのか、それとも堕ち始めたのか。

皇帝に傷を与えながらも、自らの正義に疑問を抱き始めます。


黒騎士フィン〈AIイラスト〉

挿絵(By みてみん)

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