泥:HP5からの這い上がり
冤罪で処刑され、
HP5・魔力ゼロのまま冥府へ落とされた最弱四天王。
チートも祝福もありません。
あるのは、毒と執念だけ。
冥府最下層《慟哭の原野》ー無欲の泥沼。
【HP 5/5000】
【MP 0/3000】(枯渇)
【状態:全身崩壊・毒沼化進行中】
――三日目の夜。
立ち上がっては見たものの
俺は、また泥の中に沈んでいた。
足を取られて頭からダイブだ。
MPは完全にゼロ。
スキルすら使えない。
ただ息をして、泥を飲み込み、
吐き出すだけ。
「……冥府の毒沼手ごわすぎだろ……
魔力ゼロ……
気力だけじゃどうにもならねぇ……」
その時だった。
冥府の女王モルゴーラの幻影が、
呆れたように泥の上に立っていた。
「まだ死んでいないのか、四天王最弱」
「……うるせぇ……
こうして力を蓄えてんだ……」
「くっくっくっ」
モルゴーラは器用に喉の奥で笑う。
俺の頭に灰が降りかかった。
「愚かなお前に教えてやろう。魔力など最初からいらん。
毒吸収を使え」
ピシッ!
【パッシブスキル《毒吸収》強制発動】
効果:毒・猛毒をHPに変換(MP消費なし)
体内の毒が、熱に変わる。
溶けていた肉が、わずかに再生を始める感覚。
「……なんだこれ……力が……戻ってくる……!」」
「毒沼に三日も漬かって身に付けたスキルだ。
お前の耐えた時間は無駄ではなかった。
どうだ、動けるだろう」
HPが 5 → 6 へと微回復。
ほんの少しだけ、痛みが引いた。
「……ふぉぉ……泥に癒される!」
泥の中で、
俺は指を一本動かした。
《毒吸収》
【HP 6 → 7 → 8……】
動く、動くぞ。
「くそ……くそ……
くそぉおおお!!」
あいつらの嘲笑を思い出すだけで、力が湧いてくる。」
泥を掻き、這い、
進む。
「今度こそ脱出だ。くそったれな沼から」
腕が千切れても、肋骨が折れても、
前へ。
【移動速度:這いずり 0.1m/s】
モルゴーラの声が、
上から落ちてくる。
「第六階層まで三キロだ。
冥府最下層に埋もれたくなければ這え。
死ねば終わりだ」
その瞬間、
黒い火花が、指先から離れずに残った。
消えない。
まるで、俺の一部になったかのように。
【現象:《腐食の黒炎・微》の片鱗】
「……これで……少しは……
少しは戦える……」
泥から完全に抜け出し、
俺は――立つ。
膝は逆向き。
足は腐って崩れかけ。
それでも。
――立つ。
「……カプリチェス……
マルゲリウス……
ディアボルス……」
震える声で、名を呼ぶ。
「待ってろ。
お前らは泣いても許してやらねぇからな」
HPを回復させながら、漆黒の大地を歩く。
ここは冥府最下層《慟哭の原野》
まずは上層を目指さなくちゃな。
漆黒の大地を、よろめきながら歩き出す。
まずは第六階層。
そして――いつかは地上へ。
【ステータス】
クアトロ=フォルミア・デッドロット
【現在状態】
HP:18(回復傾向)
MP:0(枯渇)
俺は、歩ける。
次話から冥府での実戦が始まります。
魔力ゼロ縛りで、どこまで這い上がれるのか。
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