ドラミィ潜入回――帝都酒場と嵐潮公爵
今回はドラミィ、帝都に潜入しちゃいましたぁ~。
お酒と噂と危険がいっぱいで、ちょっとドキドキですぅ。
どうぞ最後まで見ていってくださいねぇ~♡
帝都酒場《赤獅子の喉笛》・裏口
夜の帝都は、炎の匂いがした。
溶鉱炉の熱、香辛料の煙、酒と血の混じった臭い。
そんな街の片隅、
酒場《赤獅子の喉笛》の裏口が、きぃ、と音を立てて開く。
「おはよーございまぁす♡
今日からお世話になりますぅ~」
現れたのは――
銀髪ポニーテール、やや露出多めのメイド服に、
ぴょこんと揺れる角。
ドラミィである。
人間形態。
完全な擬態だった。
胸元は帝都基準で合法ギリギリを攻める。
「……誰だ、お前」
酒場の主人が胡乱な目で見る。
「新人ウエイトレスのラミィですぅ♡
元・南方出身、身元保証は《炎軍補給部》さま経由でぇ~」
差し出された書類を見て、主人は舌打ちした。
「……最近は、ほんと補給部の横紙破りが多いな」
だが帝都ではよくある話だ。
劫火公爵領は、書類があればだいたい通る。
「ま、いい。
皿割るな、オーダー間違うな、客に噛みつくな」
「はぁ~い♡
おさわりも禁止ですぅ~」
「当たり前だ!!」
こうしてドラミィは、帝都のど真ん中に潜り込んだ。
◆酒場内部
「いらっしゃいませぇ~♡
灼熱酒二杯ですねぇ~」
にこにこ。
ぴょこぴょこ。
スカートがずり上がり、しっぽが揺れる。
「……おい、あの新人、なんだ?」
「知らねぇ。でも可愛い」
「毒耐性ありそうだな」
「当たり前ですぅ~♡
あ、かぶれない程度なら、触っても――」
「おさわり禁止だっ!!」
主人の怒号が飛ぶ。
(ふふっ、ちょろいですぅ)
ドラミィは内心で笑う。
だが耳は、完全に情報収集モードだった。
◆帝都の噂
「聞いたか?
光水晶が動くらしいぞ」
酔った兵士の声。
「聖晶同盟のか?」
「らしい。
同盟がバタついてる」
ドラミィの耳が、ぴくりと動く。
「へぇ~♡
光水晶って、そんなに大事なんですかぁ?」
「当たり前だろ。
あれは聖晶同盟の心臓だ」
「でもよぉ、帝都に持ち込むって噂もあるぞ」
「皇帝陛下が動いた、って話だ」
別の兵士が声を潜める。
「四天王招集令も、そのためだってよ」
(ふふっ、皆さんとっても親切ですぅ。
主様、嵐のど真ん中ゾン)
ドラミィは皿を運びながら、頭の中で地図を描く。
その後ろ姿を、酔った兵士たちがだらしない顔で見守る。
(おい、誰かしっぽのこと教えてやれよ)
(嫌だよ、ずっと見てたって思われるじゃねぇか)
帝都。
宮殿地下。
そして――光水晶。
◆不穏な影
「……おい」
低い声。
振り返ると、
床に落ちた酒が、逆流していた。
その中心に、水をまとった男が立っていた。
長身。
冷たい笑み。
「お前、見ない顔だな」
(あっ♡
当たり引きましたぁ)
ドラミィはにっこり笑う。
「新人ですぅ~♡
何かご注文ですかぁ?」
男は、じっと彼女を見る。
その視線は、
服でも、胸でもなく――魂を見ていた。
「……面白い。竜でも、人でもないな」
そう言って、男は背を向けた。
(やっば。
気づかれましたぁ)
ドラミィは、そっと月のイヤリングに触れる。
それは――主と繋がる魔道具。
(主様。四天王、来てますぅ)
◆捕縛
閉店後。
裏路地に出た瞬間だった。
――風が、止まった。
帝都の喧騒が、音ごと遠ざかる。
「残念だな。
もう少し泳がせるつもりだったが」
嵐潮公爵マルゲリウス。
その背後で、兵が動く。
「可愛いウエイトレスが、
帝都で何を探っていた?」
ドラミィは、にへらっと笑った。
「えへ♡
主様のご飯代ですぅ~」
床の水が、意思を持ったかのように蠢いた。
(あっ……この人、帝都ごと沈められます)
元の姿に戻ろうとした時、付けたままのイヤリングが
どうなるか頭をよぎる。
(ご主人様の初めてのプレゼント…失くせない)
次の瞬間、
水が檻となって、彼女を包んだ。
意識が遠のく直前、
ドラミィはイヤリングに手を触れる。
(主様……
嵐公爵に確保されましたぁ……)
そして、心の底から――
(ご褒美、期待してますぅ~♡)
闇が静かに落ちた。
えへへ、ちょっと捕まっちゃいましたけど、
主様、きっと助けに来てくれますよねぇ?




