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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第二章 地上で渦巻く陰謀

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聖晶同盟視点:光水晶搬出――正義が闇を招いた夜

正義が、

世界の歯車を狂わせることもある。

聖晶同盟中央神殿。

天井まで届く水晶柱が林立する円形議場は、

いつもなら祈りのざわめきで満ちているはずだった。


だが今日は、違った。


沈黙。

重く、張りついたような沈黙。


聖堂祭壇に安置された《光水晶》が、

いつになく強く輝いている。


まるで――

これから起こることを、知っているかのように。


「反対です」


最初に声を上げたのは、老司祭だった。


「聖女ルミナは確かに重傷だ。しかし!

 だからといって、同盟の象徴を――

 帝国へ持ち出すなど、前代未聞!」


「それは裏切りだ!」


誰かが叫び、議場がざわつく。


フィンは、ゆっくりと一歩前に出た。


鎧は傷だらけだった。

毒沼での戦闘の痕が、まだ完全に消えていない。


立っているだけで、肺の奥が焼けるように痛んだ。

毒の為か視界の端が、わずかに白く滲んでいる。


だが、痛みはおくびにも出さない。

その背筋は真っ直ぐだった。


「裏切りじゃない」


低い声。だが、はっきりと通る。


「これは――

 救うための作戦です」


議場が静まる。


フィンは、真っ直ぐに円形議場を見回した。

各国の首脳外交官、神官、軍部。


「聖女ルミナは、毒に侵されています。

 光の治癒では追いつかない。


 帝国の――最新治癒の術式がなければ、助からない」


「だが帝国は敵だ!」

「帝国は彼女を利用しているだけだ!」


「違う」


フィンは、即座に否定した。


「帝国の話ではない、

 皇帝ドミノは彼女を見捨てなかったと言っている」


その一言が、議場を貫いた。


「俺たちはどうだった?」


「撤退してきた後、

 毒沼に嵌った彼女を、聖女失格として隔離した」


「……!」


何人かの顔が伏せられる。


フィンは、拳を握った。


「敵だとか、陰謀だとか、

 そんなものは後だ!」


「俺にとっての正義は一つだ。

 幼い頃から一緒に戦ってきた、彼女を救うこと」


声が、震えなかったのが逆に痛かった。


そのとき、

静かに一歩前へ出た者がいた。


竜騎士レイン。


青白い竜鱗のマントを揺らし、

涼しげな笑みを浮かべている。


「……フィンの言う通りだ」


視線が一斉に集まる。


「敗戦が続き、今の同盟は脆い。

 聖女を失えば、結束は完全に崩れる」


「《光水晶》は象徴だ。

 だが――象徴は、人を守るためにある」


その目が、一瞬だけ鋭く光る。


「帝国がそれを使うというなら、

 条件をつければいい」


「聖女の完全治癒。

 それまでは、帝国は前線から撤退。

 同盟は中立を保つ」


あまりに合理的な提案。


議場が、再びざわめいた。


「だが……もし帝国が、

 光水晶を兵器にしたら……」


誰かが弱々しく言った。


フィンは、一度だけ呼吸を整えた。

それでも、答えは変わらなかった。


「俺は聖騎士だ。

 聖剣は、誰かを縛るためじゃない」


「そのときは、俺が止める」


その言葉に、迷いはなかった。


沈黙の中、

大神官が、ゆっくりと頷いた。


「……聖女を救うための一時的搬出。

 聖騎士フィンに、その任を委ねる」


水晶柱が、低く共鳴する。


決定。


その瞬間、

《光水晶》の輝きが、

ほんの一瞬だけ――鈍った。


フィンは神殿にある聖堂へ向かう、

その奥に祈りと信仰が、凝縮された熱を感じながら。


「待っていてくれ、ルミナ」


小さく、そう呟いた。


その背後で、レインが微笑む。


(これでいい……光は、帝国へ行く。

 そして、光の裏にある闇も)


――フィン、お前が壊れる姿が見たいわけじゃない。

ただ、ルミナが……お前じゃなく、俺を見てくれればいい。


竜騎士の瞳に、

嫉妬と期待が入り混じった光が揺れた。


神殿の扉が開く。


外は、曇天。

だが雲の向こうで、太陽が燃えている。


フィンは振り返らなかった。


自分が今、

聖晶同盟の心臓を持ち出そうとしてるとは

これっぽっちも思っていない。


彼にとってこれは――


当たり前の正義

聖女を救う最も正しい選択


だからこそ。


この選択は、

もう誰にも引き返せないものだった。


フィンの下した決断。

その答えは、まだ誰にも見えていません。

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