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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第二章 地上で渦巻く陰謀

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劫火公爵領の英雄――復讐者が眠れなかった夜

冥府から甦った最弱は、英雄として迎えられた。

穏やかすぎる日常が続く劫火公爵領。


だがその居心地の良さは、

復讐者にとって最も危険な兆しだった。

 劫火公爵領は、思っていたよりも――静かだった。


 煤にまみれた城壁も、焼け焦げた大地も、

 今はただ「戦争を終えた国」の顔をしている。


 クアトロは、与えられた居館の石窓から街を見下ろし、

 小さく息を吐いた。


「……居心地が、いいな」


 自嘲気味につぶやいた言葉は、誰に聞かせるでもない。


(……この感覚を、俺は知っている)


 かつて冥府に落ちる前、

 世界がまだ優しかった頃の、危険な錯覚だ。


 劫火公爵領では、彼は敵ではなかった。

 それどころか――


 「クアトロ様! 本日も無事で何よりです!」


 通りを歩けば、兵士が兜を脱いで頭を下げる。

 民は遠慮がちに、だが確かに好意の視線を向けてくる。


 理由は明白だった。


 聖騎士フィンを退け、劫火公爵領を救った男。


 その肩書きは、ここでは驚くほど素直に受け入れられていた。


 市場の一角で、クアトロは足を止める。


 「……あ?」


 聞き覚えのある訛り。

 振り向いた先にいたのは、

 土に汚れた顔の男と、その家族だった。


 「まさか……クアトロ様……?」


 かつて、

 腐死公爵領で共に生き延びようとした人々。


 あの地が崩壊した後、帝国へ避難したと聞いていたが――

 生きていた。


 「……無事だったか」


 それだけで、十分だった。


 彼らは深く頭を下げなかった。

 代わりに、胸に手を当てて言った。


 「最前線で戦ったお姿、見ておりました」


 英雄扱いではない。

 恩人としての言葉だった。


 クアトロは、視線を逸らす。


「……礼を言われるようなことはしてねぇよ」


 あの時の俺は、ただ生き残りたかっただけだ。

 (……そして今は、すべてが復讐のため)


 心の中で呟く言葉は、声にはならなかった。


 カプリチェスを倒した件についても、同じだ。


 恨みを買う覚悟はしていた。

 だが劫火公爵領では、額の紋章を見た瞬間、話が終わった。


 正規の決闘。

 額の土と炎の紋章。


 それだけで、全てが整理されてしまう。


 むしろ――


 「公爵である前に誇り高き戦士だった」と、

 カプリチェスの名は高まった。


 クアトロは、その評価を肯定もしなかったが、

 否定もしなかった。


 そんな日々の中で。


 帝国中枢からの使者が現れた。


 封蝋付きの書状。

 赤と黒の紋章。


 ドラミィが、肩越しに覗き込む。


「ほー……来たか」


 クアトロは封を切り、内容を一瞥する。


 ――四天王、全員招集。


 理由は書かれていない。

 だが、理由など分かりきっていた。


「罠だな」


 クアトロが呟くと、

 ドラミィは銀色の髪を結わいて、軽く肩を回した。


「じゃあ、オデが先に覗いてきますぅ~♡」


「偵察か」


「人間の顔なら、余計な波風も立たねぇゾン」


 その紫の瞳は、冗談めいていながら、

 どこか本気だった。


 クアトロは一瞬考え、通信用の魔道具を

 耳に付けてやった。


「イヤリング型だから、目立ちはしない。

 ――頼むぞ」


 ドラミィは笑い、扉へ向かう。


「ご主人様、後でいっぱい撫でて下さいねぇ♡

 手が溶けてもやめちゃダメですよぉ


 オデ、頑張りますから!」


 クアトロは苦笑しつつ、手を軽く振った。


 その背中を見送りながら、

 クアトロは再び窓の外を見た。


【状態更新】

【ドラミィ:リンク解除】

【特殊状態:ドラミィ依存(?)発動中】

 (全能力マイナス20%)


「ぐはっ、デバフ発生してんじゃん」


 そんなにドラミィ好きだったか?俺。

 ――一人には慣れてるはずが、調子狂うぜ。


 クアトロはワインを乱暴に飲み干した。

「どうにも嫌な予感がとまらねぇ」


 穏やかな帝国領。

 英雄として迎えられた、自分。


「……緊急魔道具は持たせたが、俺が行くべきだったか」


 胸の奥のざわめきは、

 夜の寝苦しさへと形を変えた。

英雄と呼ばれる日々の中で、

クアトロは初めて「違和感」を覚えます。

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