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四天王最弱だった俺、処刑されたら冥府で最強になってました  作者: ふりっぷ
第二章 地上で渦巻く陰謀

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第四次聖戦 聖騎士フィン再侵攻 正義が腐食に喰われる瞬間

正義は、いつも正しい。

そう信じ、疑うことを知らず、剣を振るう者がいる。

――正義は、迷わない


聖晶同盟軍は、夜明けと同時に進軍を開始した。


光結晶の輝きが織り込まれた白い旗。

祈りによって磨かれた装備。


――怒りに燃えた正義の軍勢。


その先頭に立つのは、聖騎士フィン。


「進軍速度、予定通り。

 被害は最小で抑える」


淡々と命じる声に、迷いはない。


彼の脳裏には、ただ一つの光景が焼き付いていた。


毒に侵され、膝をついたルミナ。

血の気を失った唇。

それでも、彼を見て微笑おうとした顔。


――守れなかった。


その後悔が、剣を握る腕を強くする。


「帝国は民を盾にする。

 ならば、俺たちは迅速に断ち切る」


毒沼の縁を超え、劫火公爵領に差し掛かる。


目の前に家財を抱えた人々の列が連なっていた。

幼い子供が、騎士の旗を見て手を振っている。


副官が小さく息を呑んだ。


「……聖騎士様。

 住民避難の兆候が――」


「帝国に避難をする時間を与えるな」


即答だった。


「それは、劫火公爵が選んだ戦術だ」


騎士たちは一瞬ためらうが、陣形を組み

住民に向っていく。


だが、大地に亀裂が走り、毒沼が噴き出してきた。

草は腐り、風すら重い。


「耐腐食結界を展開!」


神官たちが一斉に詠唱を始める。

聖光が地面を覆い、毒を弾く。


――だが。


「……おかしい」


フィンの眉が、わずかに動いた。


毒沼は敵意を持っている。

まるで、生き物のように。


「これは……腐敗の防衛術式?」


土地を殺し、敵を近づけさせない。


「なぜだ……」


フィンは当惑する。


(腐死公爵は処刑されたはず)


だが。


「突破する」


命令は、静かだった。

騎士団は毒沼を避け、突撃を再開する


――だが、地面から吹き出した毒沼が

隊列を阻むように広がり続け、

結界はいびつに歪んだ。


「これ以上は結界がもたんぞ」

毒沼が炎の形に揺らぎ、神官を飲み込み始める。


「魔力反応、強大――!」


次の瞬間。


一斉に地面が裂け、

黒と紅蓮が混じった炎が噴き上がった。


《腐食の黒炎》。


ジュワァァ――!

黒炎が大地を覆い、聖光の結界が溶け始める音が響く。


フィンは剣を握りしめ、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。


それは、

聖晶同盟が想定していた

どの帝国魔術とも違っていた。


「……調査にない魔炎?」


フィンは一歩前へ出る。


聖剣を構え、祈りを込める。


「聖光よ――」


黒炎が、敵意を持って揺らめいた。


まるで、

こちらを見ているかのように。


冥府の王


炎の向こうから、一人の男が現れる。


黒色の装束。

頭上には、黒い灰冠の痕。


彼が立つ場所だけ、

景色が歪み、光の一切差さない暗黒が広がる。


フィンは僅かに動揺する。


「その姿……クアトロ公爵なのか?」


男は答えない。


ただ、

静かにこちらを見ている。


「聖晶同盟、第四次侵攻総大将、聖騎士フィンだ。

 降伏か死か選べ」


聖光をまとった聖剣を掲げると、

黒炎と共に渦巻き、光輪がほとばしった。


正義の宣告。


「答え無くば、聖晶同盟の名において、

 貴様を討つ」


一切の躊躇なし。


――それが、聖騎士フィン。


男が、低く笑った。


「……なるほど」


声は、怒りでも嘲りでもない。


ただ、疲れきった静けさ。


「お前が総大将に選ばれたか

 いつまで経っても、正義を掲げる…」


次の瞬間。


男の手に再び黒炎が灯った。


《ライトニング》!!

フィンは突撃する。


腐食の黒炎と聖剣。

閃光のような正面突破。


「はああああッ!!」


加護を受けた聖光斬が、大地を裂く――

黒炎の流れが乱れ、男に到達するかに見えた。


だが、裂けない。


じわじわと、光が喰われていく。


「な……!?」


聖光が、黒く染まる。


「……聖光を、腐食……?」


それは理屈に反していた。


光は、闇に負けない。

そう信じてきた。


だが、最強の必殺技が通じない。


「初見では絶対破れないはず…」


男が告げる。


「悪いが、二度目だ。冥府では逃げるしか出来なかったが

 今は違う…」


次の瞬間。


地面が崩れ、フィンの足元が沈む。


毒沼ではない。

冥府へ続く裂け目。


「撤退――!」


副官の叫びは遅い。


フィンは剣を突き立て、必死に踏みとどまる。


「聖剣よ、今一度光を……!」


黒炎が、荒れ狂う。


――聖剣に巻き付き、

 フィンの手に焼けるような痛みが走る。


男は、近づかない。

ただ、言葉を落とす。


「安心しろ。

 お前は間違っていない」


フィンの瞳が揺れる。


「正義は、いつも正しい」

――だから、俺がここまで強くなった。


それは、

最も残酷な宣告だった。


振り返ると銀色の髪と紫の瞳を持つ

戦場には似つかわしくない美少女がにこにこ笑っている。


「退路もしっかり毒沼ですぅ~♡」


無邪気な笑顔に

……フィンは一瞬、戸惑う。


だが、その紫の瞳は深淵を覗いていた。

少女の口が耳まで裂け、無数の牙が覗く。


「……何だ、この化け物は!?」


気を取られた隙に、体を捉えた裂け目が閉じる。


「がぁぁぁぁ!」


「聖騎士様!」


フィンは、辛うじて引き上げられる。


命はある。

だが。


聖剣に刻まれた祈りの文字が、

音もなく崩れ落ち、黒に染まっていく。


聖光は、もう宿らない。


惨めな帰還。


「……生きているのが、奇跡です」


治療室で、誰かが言った。


フィンは、天井を見つめる。


勝てなかった。

理解できなかった。


それでも、

心は折れていない。


(次は…必ず……

 だが、どうやって?)


帝国の皇帝、ドミノ・ルーメンが遠くで静かに呟く。

「――聖騎士は、敗北しても輝く」


だからこそ、次はもっと深く、壊れる。

彼は間違っていません。

それでも、フィンは手酷く敗れました。

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