03. サバサバの定義
『サバサバ女』という言葉が流行り出してからこっち、私はその典型みたいな言われ方をしてきた。
確かに優里亜のように向こうから懐いてこない限り、女子職員とダラダラお茶しながら恋バナしたりはしないタイプだけど。
それは単純に時間がないから。なるべく定時に上がりたいので、徹底したスケジュール管理とタイパにこだわっているだけなんだが。
弁護士という職種で定時に上がるなどありえない、とよく言われるがそれは私に言わせれば時間の使い方が下手すぎ。日本は安い賃金を残業代で補うという悪しき習慣があり、昭和のオジサンたちはそうして長時間働くのを美徳にしてきたけど、カンベンしてよ。
仕事が終われば「お先に失礼します」と言ってさっさと帰る。それをサバサバと言われるのはちょっと心外かも。
もっとも優里亜がサバサバ系と言うのは男がらみだろう。一人の男と長く付き合うということが稀だし、気持ちのない男と体の関係だけ、っていうのもタカシが初めてというわけでもない。
優里亜は「カッコイイですぅ」と言ってくれるが、私だって好きでそうなったわけでもないんだけどねぇ。
「ブルーノさんってどういうタイプが好みですかぁ?」
箸を置いた優里亜がごちそうさまのポーズをしながら訊いた。答えは簡単だ。
「全方向すべて、心配しなくても付き合うだけなら簡単よ。問題はその後」
「先輩でも苦労するなら、大変そうですね」
「全部(の女を)潰すか、一切気にしないかどっちかにすれば気持ちは楽よ」
「潰して歩くほどの根性ないですぅ。割り切るしかないんですかね」
「デート中はお姫様みたいに優しくしてくれるし、ビジュもいいから自慢できるわ。ただし独占しようなんて思わないこと」
「じゃ、アクセサリーってことで」
「とりあえず男の経験値は上がるわ」
(メンタル削られるけどね)
ごちそうさまをすると「水菓子どうぞ」と言って優里亜がフルーツ盛り合わせのタッパーを出してきた。こういうとこは女子力高く見えるんだから、もっとマシな男と付き合えるだろうに。このコは普通の男にイかないんだよねぇ。
「ありがと」
「それで先輩は今カレさんに辿り着いたってわけですか、先輩にしては長続きしてますよね」
「ユウヤ? そろそろ2年になるかしら」
柏木ユウヤは絵に描いたようなハイスぺ男。某外資系IT企業のエリートで近々独立してAIの会社を作るそうだ。仕事で知り合ったのだが、仕事人間すぎて女性との付き合い方がぶっきら棒なところが気に入っている。
「先輩ってほんとメンクイですよね~。ユウヤさんって超かっこいいですもん、お似合いです」
これも誤解。
優里亜は全然信用しないが、私は男女問わず付き合う人は中身重視、顔で選んだ覚えはない。その証拠に全員外見のタイプがバラバラだ。
ユウヤと長続きしてるのも、彼が私の外見ではなく能力で評価してくれてるからだと思う。恋人というよりパートナーに近い。
唯一の欠点は氷点下かってくらいクールな男なんだよなぁ、どこか隙を見せてくれれば可愛げがあるのに。異常に暑苦しいブルーノとは対照的、うまくいかないものね。
(ん? せっかくだからぶつけてみるのも面白いかも)
こんなイタズラ心がとんでもないことになるなんて、世の理は神のみぞ知る。




