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靴は歩く。


「えーと・・・」




僕は自分のベッドに座る少女を見ながら呟いた。




「つまり、僕たちは喋れないんだよね?」



「喋ってるけどね」



少女は足をぶらつかせながら言った。


赤い靴が僕の目線を奪う。



「なんで急に喋れるようになったんだろう」


「分かんないよ、そんなの。ねえ、何か食べ物ないの?」


「え?」


「た・べ・も・の。私、昨日からシーチキンくらいしか食べてないの」



少女がベッドから降りて部屋をうろうろした。



「君んち、そんなにお金ないの?」


「見て分かるでしょ。あ、これもらっていい?」



少女は棚の上にあった板チョコの欠片を

僕が答える前に食べてしまった。



「あ、あ、あーっ」


「なに?べつにいいでしょチョコくらい」


「ううん、そうじゃなくて。自分の声ってこんな声なんだと思って。

 あ、あ、あーっ。い、い、う、え、おーっ」



僕がまぬけみたいに声を出すと少女が笑った。



「口動かさなくても喋れるのに」


「それじゃあ何か変な感じだもん」



僕は口を動かしていると、ふと思った。










もしかしたら歩けるかも。
















ドンッ











「いててて・・・」


「何やってんの」



僕の身体は冷たい床に倒れ車椅子がひっくり返った。



「声出せたなら、足も治ってるかなと思って・・」



僕は身体を起こし足をひきずりながら車椅子にしがみついた。

ひっくり返った車椅子が重くて直せない。



「・・・はいはい、手伝えばいいんでしょ」



少女は車椅子を戻した。

僕は車椅子になんとか座って息をついた。



「・・・性格悪いね」


「なによそれ。せっかく車椅子戻したのに。

 ・・ところで何でこの靴投げたの?」


「なんとなく、その靴放り投げたら何か変わらないかなって」


「何かって、何が?」


「何か」


「変なの」



少女は部屋を行ったり来たりしながら言った。



「ねえ、病院ってご飯出ないの?」


「君ってそればっかだね。僕の靴もチョコもとっちゃうし」


「靴は捨てたんでしょ?拾ったから私のものだしチョコは食べても

 何も言わなかった」



僕は肩をすくめた。



「そろそろご飯の時間だと思うけど・・今日は遅いなぁ」


「んーっ、じっとしてても暇だからどっか行かない?」


「どっかって・・どこに?」


「ここじゃないどこか」



少女はいきなり車椅子をつかんで僕を部屋の外へと出した。



「駄目だよ、食べたらリハビリがあるんだから・・」


「そんなのいつだって出来るでしょ」


「わがままだなあ」



僕はため息をついて自分の部屋を出た後、

看護婦が僕の名前のプレートを外していた。



「あれ?部屋移動になるのかな・・」


「この病院にテレビゲームとかないの?」


「どこの病院にもないよ」



僕たちが病院をうろついていると

1人の老人が僕たちをじっと見つめていた。

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