靴を見つける。
何も変わらなかった、っと僕は思った。
しいて言うなら靴を投げたを後悔し始めていることだ。
靴を投げた時は重い何かから解き放たれた気がした。
だけど今は感覚が無いはずの足が寒く感じて虚しかった。
あの靴は地面に叩きつけられているころだ。
誰かに当たったりしたのだろうか?
誰かに拾われていない限り、取りに行けるだろう。
でも面倒くさい。
この車椅子を投げ捨てたかったが
悲しいことに僕はこれが無ければ歩くことは出来ない。
つまり自由を捨てるのと同じだ。
僕はため息を鼻から出しながら車椅子を動かした。
エレベーターに乗り、1階のボタンを押した。
・・はずだったが間違えて2階のボタンを押してしまった。
2階で扉が開くが、誰も乗ってこないようだ。
閉のボタンを押そうとした時、僕の目に懐かしい色が映った。
赤いコンバースの靴・・を履いてる女の子。
もしかしたら女の子自身の靴で僕の靴ではないかもしれない。
だけど何故かそれが僕の靴であると確信していた。
女の子は首を傾げて僕を見ていた。
「降りないの?」
女の子がそう言ったが、僕は靴を見つめていた。
そして僕はハッとして閉のボタンを押そうとしたが女の子が開のボタンを押した。
「・・・この靴、ひょっとして・・」
僕は少し迷ったが、ゆっくりと頷いた。
女の子は驚いたような顔をこちらに向けた。
「・・・私の言ってること分かるの?」
何を言っているんだろう。
もちろん僕は外国人じゃないから日本語は分かるに決まってる。
「・・私、青いワンピースを着てる?」
「・・・それ、赤いワンピースだろ」
僕がそう言うと女の子は信じられないという顔をしていた。
この女の子、おかしいのかな。
だけど僕はようやく気づいた。
何で気づかなかったのだろう。
僕は生まれつき喋れないのだ。
生まれてきてから、手話を除いて誰とも話したことはない。
なのに僕は今、女の子と話している。