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プロローグ 『崩壊は突然に』

少しグロい表現が入っています。苦手な方は注意して読んでください。

ーー何だこれ。


 ある日の学校の帰り道、ごく普通の帰り道に現れた”ソレ”は突然俺の目の前で名も知らない1人の男性の頭に齧り付き、噛みちぎった。

 その人もただ会社から家に帰る途中だったのだろう。左手には古びた鞄、右手には少し塗装の剥げたスマホを持ち、何か文字を打ち込むように指を動かし、くすりと優しく笑う様から大切で仕方ない家族がいるのだともわかった。


ーーなんで、なにが、なぜ、どうして、こんなことになってるんだ。


 さっきまで優しく笑っていた人はいない。頭から下だけが残り、まるで花瓶から花が溢れ出るように、首からは血が勢いよく噴き出していた。

 そしてゆっくり”ソレ”は俺を見つめ、ぼそりと言った。


『ミツケタ』


 叫ぶ暇もなく、ただ息を荒く、細かく、刻むだけで脚はすくんで、産まれたての子鹿かよってくらいには震えていた。

 

ーー『ミツケタ』って何だ。


 “ソレ”の見た目は冬の雪みたいに白くて、饅頭みたいに丸くて、兎みたいに毛並みが綺麗で、兎みたいな長い耳があって、目はビー玉みたいに丸くて、綺麗な朱色をしていて、世間一般的に見れば可愛いの部類に入るものに見えた。

 俺はそんな可愛いもんは嫌いだし、そもそもこんな生物を見たことない。しかも、可愛いくせして全然似合わない鋭い牙が無数にある。口は蛸みたいに下にあるし、ますます恐怖と不安が喉元まで込み上げてくる。

 大勢の前にたって何か披露する時とは違う別の緊張感で、喉は風邪を引いた時みたいに熱く、汗も目も、何なら生暖かい液体も漏れ出しそうだ。こんなこと俺の人生において一度もなかった。確かに俺は善人とは言えないが、それなりに上手くやってきたはずだ。なのに何で俺がこんなことに巻き込まれなきゃーー


 いきなり目の前が暗闇に包まれた。生暖かい何かが俺の顔を流れていく。震える指で探るように触ってようやくわかった。


ーーあたまのはんぶんどこいった


 痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い!

猛烈に頭が痛む。頭痛なんてもんじゃない。指切っただとか、顔ぶつけたとかなんかより痛い。どうすることもできない。何もできない。俺が何したんだよ。


『アッテタ オマエダ』


 なにがだよ、なにがあってるんだよ。お前みたいな化け物に初めて会ったし、何が証拠で、何があってるんだとか全然わからない。俺はただ、広がっていく血の海を眺めるしかできなかった。


 そう、眺めるしかーー

  




 


 

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