おい神様。何故転生させた?
......拝啓、寒冷の候、皆様は益々ご繁栄の元喜び申し上げます
わたくしはわけもわからぬ森の中でございます
もしこれを見ている方がいるのであれば、探さないでください。
敬具
「はぁ......」
前置きはこれくらいにしておいて、どうも皆殿。しろぬでござる。皆殿はいかがお過ごしでござろうか。拙者は今森をひたむきに歩いてるでござる。何があったのか?知らん。
「彼是一ヶ月は歩いてるでござるよ......」
食いつなげる程度の湧き水と熟した果物らで生きながらえてはいる。縄文時代でももう少しまともな移動生活を送ってるでござるよなぁ......
「ふぉっふぉっふぉ~」
「!?」
背後から好々爺の声がする。驚き後ろを振り返る
「ふぉっふぉっふぉ~」
そこには天女の後ろにつけるひらひらの様な物を浮かべ雲の様な物の上に立ち、神聖な雰囲気を醸し出す好々爺がたたずんていた。
「......神様?」
「いかにも!」
何故ここに神が?
「いや~すまぬな~間違えて転生させてもたんじゃ」
「は?」
事の経緯はこう(らしい)
「───ちゃんはかわいいのぉ~」
「触らないでください。セクハラですよ?」
「そんな硬いこと言わずに~」
「仕事中ですよ?」
「仕事外だったらいいってことかのぅ?」
「お願いします死んでください」
「ひどい!痛い!やめて!蹴るのやめて!グボフェァ!」
みたいな会話をして、おいおいと泣きながら仕事してたら
カチッ
「あっやべ」
エイムが悪かったからか間違えて拙者の転生ボタンを押したようだ。
つまり間違えて転生させられたらしい。巫山戯るなよマジで。それはそうと、ここに神が来たってことは......
「もしかして、元の世界へ!?」
「いやそれは無理」
「は?」
何故?これ戻してくれる流れでは?
「いや......ここで戻したらワシのミスみたいになるじゃろ?」
「お主のミスでござろうが!」
何ワシミスってないのにそういう目で見られるのは嫌じゃん?みたいな雰囲気出してるんでござるかねぇ?
「何ぞ!我神ぞ!もう少し礼儀をわきまえんかい!」
ワシ悪くないも~んと癇癪を立てる。腹が立つなこの好々爺。蹴り飛ばしてやろうか
「お主がまじめに運営してたら拙者こんな誰も経験したことのないような生活送らないでござるよ!詩人でももう少しまともに栄養ある食事をとれるでござるよ!?」
「それは......確かにそう!」
「頼む死んでくれ!」
人生で初めて明確に殺意を抱いた。本当に弾けて混ざるくらいが割に合う気がする。
「───で、用件は?」
数十分の取っ組み合いを経て勝利することができたので話を戻す
「あいたたたた......寄る年波には勝てぬわい......」
取っ組み合いの過程でできたぎっくり腰のせいでうつぶせになって悶えている。腰をさらに踏んずけたら元の世界戻してくれるかも
「要件だが......お主は今、妖怪や魔物、人間らなどのお主らの世界にいないような生物とお主らの世界にいる生物が共存し、争い、均衡を保っている世界にいる」
「ほうほう」
うつ伏せというか顔を地に埋めて丸まっているまま解説されても困る(特に目のやり場。うつぶせの好々爺をガン見とかできるかいな)が、この際何も言わないでおく。
「この世界は5属性+1で成り立っている」
「+1とは?」
「5属性は火。水、風、光、闇。なのじゃがこれなんでか知らぬが光が最上なのじゃ」
「世界運営下手か」
「うるさいわい......これだと光至上主義が生まれる......そのために無という属性があるのじゃ。これが+1じゃ」
「ほうほう」
無属性か......洗脳とか?
「無とは一括りにしたが広義なものでな......無属性や無能力とかがあるのじゃ。ちなお主無能力な」
「ほうほ......は?」
「それで次なのじゃが───」
「おい待たんかい」
「なんじゃ?」
「拙者しれっとこの世界で生き抜くのに最も不適なものになってないでござるか?」
なんだよ無能力って。勝手に転生させて勝手に無能力にして人......いや神としてどうなんでござるか?
「まぁまぁ。安心せぇ。お主が無能力なのは何も能力に体が適していなかったわけじゃないのじゃ」
「ほう」
「そもそもこの世界の能力とは生まれたとき、転生したときにある条件の元決まる。条件は魔力最大含有量。そん時の運。才能値の三つ。お主はぜーんぶいい感じじゃったのだが......システムにコーヒーをこぼしてもうて......ぶっ壊れちったんじゃ☆」
「よしここでくたばれ」
「待つのじゃ待つのじゃ!強い能力がなくなった代わりにその分のステータスを全部お主の身体能力に移ったのじゃ!」
「ほう」
「速度全振りじゃ☆」
「ほうほう......?」
速度全振りねぇ......?刀があったら強いだろうが......
「習うより慣れよ。一回ジョギングしてみるのじゃ」
「ほう......?」
使い方を間違えてる気がするのは置いておいて、拙者の走りは一般的だし、大したことな───
「───え?」
「ほ~!こりゃワシも予想外だわい」
おそらく一歩。自身でも自身の体に何が起きたのか理解できない。目の前にいた神も、さっきまでいた地面も、遥か後ろに。自身の身体の異変への困惑に開いた口が塞がらない。その光景を目の当たりにした神は親指を立て
「よし!あとは頑張れ!」
そういうと神はファーと神聖な音を立て空へと消えていった。頼む死んでくれ