005_館まで届け、不死の雷
――――俺はまだ生きていられるのか?
やはり放心状態で言葉はでなかったが、頭の中心で巣食っていた恐怖が徐々に瓦解していく。
女はザっと土を踏みならし、巨大カエルの正面にゆらりと持ち上げた剣を天に掲げ誦じる。
「雷の神トールの名の下に詠唱。その憤怒の雷を大地に。行方なき魂を墓場へ。我が刀身に宿したまえ――『雷刄』ッ!」
掲げた刀身が閃光を放ち、研ぎ澄まされた両刃に稲妻がほとばしった。
バチンッ!と大気が震える。鋭い鞭を打つのような電撃音。
刃は雷光を放ち、辺りをまばゆく青白に彩る。
女は再び剣を鷹揚と構えなおした。
俺、巨大カエル、剣士の女と盾の男。四人一堂に会した森は動物の鳴き声ひとつ聞こえない。
ただ森に満たされるのは、殺気。
先ほどまで行われようとしていた一方的な捕食ではなく、どちらかの生死をかけた殺し合い。
思わず固唾を飲みこむ。また彼も巨大カエルにとってはフィールドに立った戦士の一人であったが、二人の戦士を前にして見守ることしかできない。
『絶対に死ぬことはない』と豪語する鋼鉄の背中。その先に雷撃を纏いしロングソードを持つ剣士。奥には自身の数倍の背丈に見えていたカエルが、等身にまで縮こまって鎮座している。
氷解してゆく恐怖は残雪を少しばかり残していたが、体液と一緒に流れでていった。
自分ながらとても単純だ。
二度目の死に場所になるはずだったここは、ある意味最高の特等席。VRRPGに迷い込んでしまったかのような、敵対するモンスターとキャラクター二人を仲間にしたような錯覚をおぼえる。
「アルア、こっちはコイツを守るのに手一杯だ。 一人でやれる……よな? くれぐれも気をつけろよ?」
男は仲間を一人で戦わせることに躊躇しているのか、不安げな顔を見せていたが、
「案ずるな。一瞬でカタをつける」
剣士、アルアは男にかまわず一言告げると身をかがめる。瞬間、脱兎のごとく駆けだした。
当然、その足は唾棄すべき敵のもとへ、大地を蹴りあげるように突き進む。
剣の重さを計り知ることはできないが、下段に構えながら悠々と風を切って進む姿はその重さを全く感じさせない。
「デカガエル。恨みは無いが、少年に手を出したこと、そして私が居合わせたことを後悔しろ」
巨大ガエルの周りは少しくぼんでいて、雨あがりの水溜まりが広がっていた。
土まじりの水飛沫をあげて、どんどんと距離を詰めてカエルの間合いまで潜り込む。
鳴き袋めがけて、ぬかるんだ地面を力強く踏み込み――――、




