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実はRPGがメインだった

攻略対象が1人しかいない乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わりましたが、当然、婚約破棄からの断罪で修道院と言う名の牢獄送りな未来を断固拒否します。

作者: 美香

そんなん今更下っても……、てな感じですか。果たして理不尽な現実を前に本心で反省出来るんでしょうかね。

 ある日、前世を思い出した私はこの世界が乙女ゲーム「愛するのは貴方だけ」である事に気付きました。このゲームの特徴は攻略対象が1人だけな点と攻略難度が高い点でしょうか。

 ストーリーや攻略イベントを進める条件がシビアで直ぐにゲームオーバーに導かれてしまいます。クリアに至るまでに何度ゲームオーバーを経験した事か……。

 しかもエンディングにはゲームオーバーとは別にバッドエンドもあり、初クリアでは絶対にバッドエンドだと評判でした。

 ……エンディングにはバッドエンド、ノーマルエンド、ハッピーエンド、トゥルーエンドの4種類あります。しかしそれぞれのエンディング内容には失恋エンドが入っていません。失恋エンドはゲームオーバーの1つになっているからです。その為、バッドエンドでも恋は成就するのです。


 乙女ゲームの恋が成就するバッドエンドとは何か?


 平たく言えば駆け落ちエンドです。想い合えど、結ばれる事は認められず、何もかも失って、2人、手に手を取って何処かへ消えるのです。その将来は余りに暗いものだと示唆されながら。

 ……つまり他エンドは結ばれる事を許可され、駆け落ちする必要がないのです。ですが結ばれるに当たっての条件がプレイヤーから見れば不幸に見える、と言う面が否定出来ないエンディングがトゥルーエンド以外ーーノーマルエンドとハッピーエンドーーとなっております。

 ノーマルエンドの呼び名は愛妾エンド、ハッピーエンドの呼び名は側室エンドです。

 愛妾は何の保証もなく、お相手の愛のみが命綱。愛がなくなれば生活すら危うくなってしまいます。

 側室は立場の保証はありますが、正室に気遣い、常に2番手に甘んじなければなりません。正室よりも立場を強くする事は可能ではありますが、それは自身の居場所が転べば一巻の終わりな伏魔殿と成り変わる事を意味します。

 そしてどちらのエンドも正室に命を狙われるだろう事を示唆されますから、「幸せになりました」では終わりません。

 正室……、つまりヒロインのライバルとなる相手ですが、彼女は攻略対象と結婚する事で正室の立場を得ます。そんな彼女の結婚前の立場は、攻略対象の婚約者です。そう、悪役令嬢と言う訳です。

 つまり乙女ゲーム「愛するのは貴方だけ」はヒロインによる、攻略対象の略奪なのです。更に此処にお約束ですが、身分差を乗り越える、と言う設定が付いてきます。


 ヒロインは男爵令嬢。


 攻略対象は王太子。


 王太子の婚約者でライバルの悪役令嬢は侯爵令嬢。


 となっている訳です。つまり、ヒロインの男爵令嬢が侯爵令嬢である悪役令嬢から王太子の心を奪い、王太子の伴侶となる為、悪戦苦闘するストーリーなのです。

 随所で必要とされる、王太子からの一定以上の好意、それを得る事が出来なければ即ゲームオーバー。好意を勝ち得ても王太子妃となるに相応しい能力が無いと判断されれば、精々がハッピーエンド止まり。

 能力は王太子以外のキャラとの友情イベントが盛り沢山あり、それらの熟し方に左右されます。

 能力が最低ラインを下回るとクライマックスで悪役令嬢断罪失敗イベントが起こり、ザマァされます。そして不貞を理由に廃嫡され、バッドな駆け落ちエンドへと繋がります。

 能力が最低ライン以上なら、悪役令嬢断罪失敗イベントは起こらず、王太子は悪役令嬢を正室に迎えます。結果、ヒロインは愛妾エンドか側室エンドのどちらかを迎える事になります。勿論、能力の高低がエンディングに関わります。より高い能力が求められるのは側室エンドですわね。

 そして王太子からの好意、能力値を最大まで上げる事に成功しますと、トゥルーエンドを迎える事が出来ます。クライマックスでは悪役令嬢断罪成功イベントが起きまして、悪役令嬢は婚約破棄され修道院行き、ヒロインは新たな婚約者となり、王太子妃の道を歩むのです。

 処で王太子とヒロインは不貞している訳ですが、それを上回る悪役令嬢の罪とは何でしょうか。


 それは王太子妃の素養が無い事です。


 悪役令嬢は必要以上に敵を作っていたのです。元々彼女は王太子に対する執着が強過ぎて、所謂DVな性質を持っていました。

 けれど身分が上の王太子に向かって、その性質をぶつける訳には行かず、代わりに王太子の周囲に居る、自分よりも立場が下の相手を攻撃していたのです。

 誰が何度諌めても聞く耳を持たず、彼女は同じ年の王太子と共に学園に入学すると、その身分と成績により、王太子と同じクラスになったのですが、挨拶に来た他クラスメートに嫌がらせを行いました。

 そのターゲットになったのは婚約者の居ない女生徒達で、王太子に色目を使ったと言い放ったのです。この事件を理由に悪役令嬢と王太子を物理的に距離を取らせる事になりました。しかしこの時点では悪役令嬢の家の権力もあり、婚約は継続されていました。

 只、悪役令嬢の両親はまともでしたので、決して横暴に振る舞ったりはしません。悪役令嬢が家の権力を恣意に使う事も許しませんでした。本気で気に食わない相手が出て来ても家ごと潰すと言う様な手を使えなくなったのです。

 そしてその一年後に入学して来たのがヒロインです。ヒロインはとても愛らしく、王太子は一目惚れをしたのです。然してこの時には仲が悪くなっていたとは言え、婚約者がある身。ヒロインに近付く事はしませんでした。にも関わらず、それを嗅ぎつけた悪役令嬢はヒロインを攻撃しーー、それが結果、2人を結び付ける事になるのです。

 ……切っ掛けが一目惚れである以上、例え婚約者との仲が良くても心変わりするのではないかと思えば、やはり単なる浮気野郎な気もしますし、それを責めさせない為に悪役令嬢を最低女にしたのでは、とも考えてしまいますが、それはさておき、重要な問題があります。


 それは私が悪役令嬢な事です。


 ゲームの攻略難易度から考えるとヒロインはエンディング処かゲームオーバーを迎えるかもしれません。しかし油断していたらヒロインがトゥルーエンドを迎えていた、ともなりかねません。

 修道院行きは謂わば牢獄送り。醜悪な平民用牢獄と比べて、貴族牢は遥かに天国で、それ以上にマシな牢獄が修道院でしょう。前世の私なら「それなら良いじゃん」と宣ったでしょうが、今生の私は誇り高き侯爵令嬢で、そちらの意識が強く、その様な処には行きたくないと思ってしまいます。

 どうしようもない最低なDV気質を消してしまうのに、前世の人格は使われたのかもしれません。そして残っているのはそれ以外の高位貴族令嬢としての私。それが前世を思い出した私。その私は決断しました。


 ヒロインに付け入る隙を与えず、王太子の唯一の妃となる事を。


 私が王太子の婚約者に選ばれたのは、政略です。国の為です。であればヒロインを恐れ、逃げる等以ての外。正々堂々と王太子の伴侶となる道を歩みましょう。

 例えヒロインに一目惚れしたとしても、バッドエンドの多さを考えるに、その好意は大きくありませんし、未来の王太子妃として正しく毅然としていれば、きっと王太子と上手くやっていける筈ですわ。

 それにヒロインがトゥルーエンドを迎えるに当たって必要になる数々の友情イベントは即ち友人との繋がり……、つまりは人脈を意味する筈。

 思えばゲームの私はそうした人脈作りをまるで無視していた様に思います。自身に従うだけのイエスマンとばかり過ごしていました。

 それを止めて、ゲームのヒロインを見本に、新たな人脈を作っていけば……、きっと王太子妃として相応しいと誰もが認めてくれる筈です。


 頑張らねばなりませんわね!


 それとは別にヒロインは矢張り排除したいのですが……、きっと両親は許可出しませんわね。説得する材料もありませんし。







 学園入学から1年。私は婚約者である王太子殿下とラブラブで、友人も多く出来ました。ヒロインの友人となった方やその姉、と言う方もおりますし、友人の婚約者は殿下の友人と言う立場を得ました。私への信頼の大きさはかなりのものです。

「実は不吉な夢を見てしまい……、」

 なのでそれを利用する事にしました。あくまでも「夢」と言う不確かなものでしかないと言いながら、殿下や皆様がもうすぐ入学して来る男爵令嬢に奪われ、私は断罪されて立場を追われる……、と言った内容を話し、不安で堪らなくなったと弱音を吐きました。

 コレでそれとなく男爵令嬢を警戒してくれるでしょう。


 ……そしてその警戒は私が思うよりずっと強くなったのです。


 恐らくは集団心理が手伝ったのでしょう。ヒロインは瞬く間に孤立しました。その原因を私にあると見抜いたのか、何度か私に接触しようとしていましたが、私は友人達により守られました。

 ……もしかしたら彼女も転生者かもしれません。もしかしたら彼女は王太子妃を目指していないのかもしれません。

 ですがそう言った事をきちんと話し合う必要があるとは思いませんでした。流石に家を潰す様な手を取れる程の権力を奮う理由は用意出来ませんし、こうして遠ざける事くらいしか有効な手段がありません。……逆に家を潰す自由があるのなら、彼女と話し合い、潰す理由を探すのですが。


 結果、彼女は退学しました。ゲームオーバーの1つです。私は勝利したのです。








 私も殿下も30才を超えました。既に王太孫も生まれ、私は王太子妃として盤石でございました。しかし……。

「申し上げます、近頃、魔物がどうも凶暴化している様で……。」

 この世界には魔物が存在しています。人が多く住まう地には結界が張られており、正直、王太子妃教育の一環でしか、魔物を見る機会が有りませんので、普段は忘れております。余程人里離れた場所を目指さない限りは脅威も低いものなので余計にでしょう。

 しかしそれが凶暴化していると言うのです。一体何が原因なのか……。


 その様に考える暇は有りませんでした。


 魔物から結界を破る個体ーー魔族ーーが生まれ出したのです。魔物は動物と変わらない知能なのですが、魔族は高い知能を有し、人間と変わりありません。その魔族により次々と街が襲われて行くのです。最早、原因の解明よりも駆除が必要でした。


 ーーそして神託が下りました。


 魔王が出現した。勇者でなければ討伐は不可能である。魔王から世界を守る為、勇者を生み出すのだ。


 世界中の誰もが「夢」で神の声を聞いたのです。それによれば勇者は私の夫とある女性冒険者ーー国境を越え、人里離れた地域に住まう魔物を討伐し、その素材を売って生計を立てる者ーーとの間に生まれるそうです。

 急ぎ、件の冒険者と連絡を取りーー、、、


 ヒ、ヒロイン!?


 その冒険者はヒロインでした。学園を退学後、まさか冒険者になるなんて。呆然としていた私は、自身が嘗て取った行動の意味を把握する事に遅れました。


 夢の神託。私の偽りの夢。


 ヒロインと結ばれる王太子。もしそうなっていたなら……、勇者は王太孫でした。余程、私の妊娠・出産に比べ、ヒロインに遅れがなければ、王太孫は直ぐに戦いの準備に入れた筈です。それはつまり、、、私が遅らせた分、犠牲が拡大すると言う事。

「私は嘗て……、学園入学前に夢で神託を受けました。王太子殿下との間に子を儲けよ、来る魔王の脅威を退ける勇者を育てよ、と。

 しかしそれを訴える以前に、私は学園で孤立させられました。下手を打てば暗殺されるかもしれないと感じる程に危険を感じました。神託を口にすれば尚更に。

 ですから口を噤み、学園を退学しました。両親には上位貴族令嬢、いえ、ハッキリ申します、当時の王太子妃殿下に理由も不明だが不興を買い、虐められているから家に迷惑を掛けない内に学園を辞めると訴え、直ぐに家を出て、冒険者になりました。来る魔王に少しでも対抗すべく、私自身、戦う力を付ける為に、また周囲に戦う力をもっと付けさせる為に。

 もしかすれば勇者に頼らない道を模索しなければならない可能性もありましたし、そうでなくとも勇者の生まれが遅くなる以上は犠牲が増えます。少しでも対処出来る様にしたかったからです。」

 そしてヒロインはハッキリと口にしました。

「王太子妃殿下、貴方は魔王の手先では? 果たして貴方や貴方の息子、それから貴方の生家のご家族は人間なのですか?」


 

 …………………私は終わりました。拷問の末の一族郎党処刑です。死体も魔族として扱われるのでしょう。仕方有りません。私のした事は間接的な大量殺人、、、「知らなかった」では済まされない。無知の罪……、でも……、こんな最期だなんて……、


 ………こんな事なら修道院行きが良かったよぅ…………。












 乙女ゲーム「愛するのは貴方だけ」はRPG「平民勇者と王族勇者」の前日譚。「平民勇者と王族勇者」では明らかになっていなかった部分が分かる様になっていた。

 ストーリーは平民勇者と王族勇者が魔王を倒す、ではなく、平民勇者が魔王を倒すストーリーと王族勇者が魔王を倒すストーリーの二本立てとなっている。

 最初は平民勇者しか選べないが、1度クリアすると王族勇者を選べる様になる。そしてハッピーエンドは王族勇者で平民勇者はアンハッピーエンドを迎える仕様。

 平民だろうと王族だろうと勇者の姿は変わらないし、勇者の両親も同じ。両親の身分設定も勇者に合わせて平民になったり、王族になったりする。

 が、しかし勇者の出身国の王太子夫妻と王太孫が変わってる。勇者が王族だったら勇者が王太孫で、その両親が王太子と王太子妃だが、勇者が平民だったら別の人間が王太子一家になっている。

 魔王討伐ルートやシナリオ等、勇者の身分によって変化が出ている。そして最悪なのはエンディング。王族勇者、即ち王太孫勇者は魔王討伐の英雄として凱旋するが、平民勇者だと王太子夫妻に毒殺され、魔王討伐の誉は2人の息子である王太孫に奪われて終わると言う腹立たしく悲しいエンディングとなっている。尚、平民勇者の両親は強い冒険者であったが、彼らも王太子一家に暗殺されている。

 王族勇者だと、平民勇者を毒殺した王太子一家が全く登場しないので、ハッピーエンドを迎えても溜飲は下がらない。

 その辺りの仕掛けが判明するのが乙女ゲーム「愛するのは貴方だけ」となっている。と言っても明確に説明されている訳ではなく、RPG「平民勇者と王族勇者」のプレイヤー達がプレイすると、「そう言う事か」と察する事が出来る形。

 平民勇者を暗殺した王太子妃とは悪役令嬢の事で、これはバッドエンド後、別の人物が立太子し、その相手と結ばれた悪役令嬢が嘗て自分を裏切った婚約者一家を陥れたと言うもの。

 王族勇者はトゥルーエンドでヒロインが王太子妃を勝ち取った後の話。悪役令嬢もバッドエンド後に立太子した人物も関係無いので登場しない。況してや悪役令嬢が産んだ王太孫等、存在しない。

 ノーマルエンド、ハッピーエンドはその後、バッドエンド結果にもトゥルーエンド結果にも、転びようがあるエンディングとなっている。兎に角、勇者を生まれるならば、どうにでもなる。ゲームオーバーだとどうあっても勇者は生まれないエンディングなので、クリア扱いされてない。

 悪役令嬢に転生した「私」はRPGはプレイしていないので、全く分からなかった。知らずに最も最悪なアンハッピーに向かってしまった。

 ヒロインは転生していたのか、していなかったのか。これは別にどちらでも良いです。只、転生ヒロインであれば、RPGもプレイしていた事でしょう。勇者が生まれなかったらどうなるか分かっていたし、展開によっては息子を殺す女なので、かなり悪役令嬢の事を嫌っていたと思います。

 転生していなければ、純然に悪役令嬢が魔王の手先として疑い、転生していれば嫌悪しまくって、悪役令嬢を殺すべき、と判断したのでしょう。

 「私」の夫となった王太子ですが、信じ、溺愛していた妃だったので、本当にグチャグチャしてたと思います。只、庇う事は一切しませんでした。彼女がどうあれ、彼女のせいで魔王討伐は10数年は確実に遅れるので、全ての人死が彼女のせいだと心理的に判断しちゃうので、人心を乱さない為には見せしめ処刑が妥当でした。


以上です。

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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