04 離婚4 真川 寿羽 引越の見積もり
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寿羽は別居なんて本気なのだろうか?
別居を承諾したらその先にやり直すことは可能なのだろうか?
美来のことを調べられると本当に困るんだが、寿羽はそんな面倒なことはしない気がする。
それに今から調べられても美来と何かあった証拠は出てこない・・・筈だ。
強気で浮気はしていないと言い通そう。
万が一美来が今日寿羽と会っていたらどうすればいいのか?
美来はどうも俺が美来のことを好きだと勘違いしている態度を見せることがちょくちょくあった。
何をどうすればそんな勘違いができるのか俺には理解できないが、美来がその勘違いのまま寿羽に今までのことを話してしまえば俺が不利になることは間違いない。
寿羽に訴えられるのが嫌なら会っても黙っていると思いたい。
仕事が手につかない一日を終え、急いで家に帰る。
3度目の喧嘩をしてからこんな時間に帰るのは初めてかもしれない。
美来が家に帰っていようがいまいが仕事が早く終わった日は、美来の家へ先に帰っていた。
今考えれば不誠実だったかなとは思う。
俺が美来と楽しんでいる時寿羽は俺のためのご飯を作って帰ってくるのを待っていてくれた。
俺なら待たずに先に食事を済ませてしまうだろう。
寿羽は俺との会話の時間を持つために食事を待っていてくれたんだろう。
反省しているから寿羽は許してくれないだろうか?
話し合いたいと伝えても寿羽の感情は動いていない。
こんなに反省しているのに拒絶ばかりする寿羽に少し腹が立った。
「俺が浮気していないって信じてくれないのか?」
いやまぁ、浮気はしていたんだが正直に言う必要もないし、なんとか丸め込みたい。
「信じるも何もSEXしていないって言ってるだけで、浮気はしたでしょう?それに本当にSEXをしていないのかどうかは私には解らないし」
結婚しているんだから心の浮気すら認めないっていう話になるのか?
まいったな。どうやって信じさせようか。
SEXしていないって信じて貰うのが先か?
「本当にしていない!!それは信じて欲しい!!」
「SEXしていないことに何かの救いがあるの?」
当然だろう?肉体的接触もなく許されないなんて信じられない。
「そ、それは・・・」
いやいや、火に油を注いでは駄目だ。
寿羽に言いたいことは言わせてやって、吐き出したらスッキリするだろうからその後謝罪して・・・。
「救いなんてどこにもないでしょう?愛なんて幻想の話はしないでね。愛していても浮気はするんだから私と貴方の間の愛は、幻としか言えないでしょう?」
ただ女とスーパーで一緒のところを見られただけで駄目なのか?
男の浮気に目くじら立てるなと言ってやりたい。
これ以上話をしても平行線をたどるだけだ。一度寿羽が落ち着くのを待ってから話し合えばいいか。
俺は寝室へ引き揚げることにした。
俺が考えている以上、寿羽は怒っている気がする。
本気で別居になるかもしれない。
一度寝てしまえば丸く収まるんじゃないだろうか?
スーパーで女と一緒にいることがそんなに駄目なことなのだろうか?
寿羽はこんなに話が通じない相手だったろうか?
寿羽が風呂に入っている気配がする。
風呂に入って行って少々強引でも俺を受け入れさせたら、なんとかなるんじゃないか?
いい考えのような気がしてきた。
スマホが鳴り、画面を見ると学生時代の友人、緒形だった。
「緒形!久しぶりだな」
「おう、元気にしてるか?」
「いや、今最悪だ」
「なんだ?」
「実は・・・」
緒形に今日までの一連の流れを説明した。
「少々強引にでも抱いてしまえばなぁなぁで終わるんじゃないかと思っていたところだ」
「お前、それ最悪だからな」
「そうか?」
「当然だろう。二度とお前の元に帰ってこなくなるぞ。ハッキリ言ってそれレイプだから」
「夫婦だぞ?」
「夫婦でもレイプは成立するんだよ。絶対にやめておけ」
「まぁ、お前がそういうならやめておく」
「本気で謝罪しないと離婚されるぞ」
「まさか!!」
「いや俺、本気で言ってるからな。飲みに誘おうと思っていたけど今はやめとくわ。ちゃんと心を込めて謝れ」
「ああ、そうしてみる。落ち着いたら電話するよ」
「真川、自分が悪いことを自覚しろよ」
「・・・解った」
電話を切ると腹が鳴った。
美来の家に行っているときは痕跡を消すために家に帰って直ぐ風呂に入っていたが、今はその必要がない。
一度美来が部屋で香を焚きしめたことがあって、その後暫く美来のところに行かなくなった。
その後、美来は二度としないと言ったが家に入っただけで匂いが背広についている気がして、立ち飲みに行って煙草の煙を吹きかけてもらう必要があった。
あの時は寿羽にバレずに済んだことを思い出した。
あの時、寿羽は疑いを持ったのだろうか?
今まで疑いを持たれたことはあったのだろうか?
流しの上に置かれた丼にご飯をよそって中華餡を温めて御飯の上にかけて箸を持って定位置に腰を下ろした。
なんだかんだ言ってもご飯を作ってくれるんだから、許す気はあるんだよな?
あっさりと食べ終わってしまったので、一応気を使って洗い物はしておく。
なんで働いている俺が洗い物なんかしなくてはならないのかと腹も立つが、機嫌は取っておくほうがいいだろう。
寝室に戻ってベッドに寝転ぶ。
どうすれば寿羽の機嫌が直るのか。
うとうとしかけた頃寝室の扉をノックされハッとして目が覚めた。
寝室の扉を開けると当然寿羽が立っている。
「ごめんなさい。やっぱり離婚してください」
いきなり何を言い出すのか?言われたことを理解したくないのに、理解できてしまった。
「なんでだ?どうして?!離婚なんてしたくない!!本当に愛しているんだ!」
寿羽は大きなため息を吐く。
俺の体が震えた。俺は怯えているのか?
寿羽が何か言っているが頭を素通りしていく。
「・・・感謝しているわ。離婚の原因を作ってくれて」
理解できない。なんでだ?
たかが女とスーパーにいただけだろう?
なんで離婚?!ふざけるな!!
「寿羽・・・!!」
「明日離婚届を取ってくるわ。サインしてね」
「待ってくれ!もっと話し合おう!!」
「ごめんなさい。話し合っても平行線のままだと思うわ。私もう決めてしまったんだもの」
なんでだ?
どうしてだ?
離婚ってありえないだろう?!
俺を脅しているだけか?
いや、あれは本気だった。
親父になんて言えばいいんだ?!
家城の爺は?!
ちょっと待て、ありえない。
美来と関係を持っていたことがバレていたのか?
どうすればいいんだ?!
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翌朝、引越業者の見積の人が時間通りに来てくれて、運び出すものを伝えていく。
費用は私が思うより安かった。
大きな荷物が殆ど無いので小さな引っ越しで終わってしまう。
引っ越しは来週の金曜日の朝の8時に決めた。
もらった段ボール箱に使わないものから荷造りを始めていく。
少し空腹を感じて朝ご飯を食べていなかったことを思い出したけれど、役所が空いている時間に離婚届を取りに行くために立ち上がった。
破かれることを前提に一応3枚もらった。
淡々と離婚届を3枚を丁寧に数えて差し出す区役所職員が印象的だった。
空腹も限界になってなにか食べようと冷蔵庫を開ける。
冷蔵庫の中身を急いで片付けなければならないわね。
買い物したばかりだから冷蔵庫と冷凍庫に結構食材が詰まっている。
野菜なんかが残っていると腐らせるだけだろうし。
食べきれなかったら私の部屋に持っていけばいいか。
調理済みで冷凍したものは残していっても大丈夫だろう。
乾物や残していくと困るだろう食材はどんどん段ボールに詰めていく。
全部ここに捨てていこうかな?
新しい家に古いものはいらない気がする。
まぁ、そうしたいのは山々だけど現実的ではないわね。それにここに残していくのも嫌だし・・・。
食器のセット物は3つずつ貰う。夫には必要ないと思う物も私の取り分とした。
他の物は一応半分ずつ。男の一人暮らしで必要そうなものは残していく。
鍋、包丁、買い置きの砂糖や塩は貰っていく。
あることも知らないだろうしね。
あっ、家電量販店でホットプレートを買うのを忘れた。
まぁ直ぐに要るものでもないからまた今度でもいいか。
買い足さなきゃいけないものたくさんあるね。
あーーベッドを急いで買わなくちゃ。
その時の気分次第で買い物すると統一性が無くなるから嫌なんだけど。
お腹がぐぅ〜と鳴った。
あっ!昼ご飯を食べようと思ってキッチンに来たんだった。
そうだ、カトラリーも3つずつ貰っていかないと。
こうやって食事を忘れて痩せていくのかしら?
圧力鍋は残していっても困るだろうから私が貰う。
ふふっ♪私、貰ってばかりだわ。
なんだかんだ言っても夫の稼ぎはいいから私の通帳に移し替えた金額は1千万超えていた。早々に銀行を回った私って偉いわ。
もしかしたら真川のお義父様から貰ったお金かもしれない。
離婚になれば、半分くらいは返せって言われるかもしれないな〜。
離婚が成立するまで手を付けないようにしなくちゃ。
パスタを茹でて唐辛子を刻んで大蒜も刻む。
ほうれん草をざく切りする。
仕事を始めると大蒜は好きな時に食べられなくなるわね・・・。それはちょっと辛いかも。
さっと唐辛子と大蒜をオリーブオイルで炒めて、ほうれん草を加えて、パスタも入れてサッと合わせる。
一本つまんで味を見て少し薄いので塩をふる。
洗い物が面倒だったので、鍋敷きを片手にフライパンごとテーブルに置く。
お箸でパスタをすするのは結婚してから初めてかもしれない。
ふとした時に地が出ないように結構気を使って生活していたのよね。私。
結婚前は鍋やフライパンから直接食べるのなんてしょっちゅうだった。
人目を気にしなくなるのは人を駄目にするよね・・・。
あぁ・・・お祖父様に連絡しなくちゃ。母・・・父に連絡しなければならないわね。憂鬱。
それはまぁ離婚してからでいいか。
嫌がらせのために夫の擁護に回られたりしたら切れちゃいそうだし。
両親に関しては連絡を取りたくなくて、どうしても後回しにしてしまう。
っていうか伝える必要あるかな?
結婚式で母に会った時に言われた言葉を思い出す。
『寿羽は幸せになれないわ!不幸になればいいのよ!!』
母が私を嫌うのは私が父の子供ではないからなのか、何なのか私には理解できない。
母が人として最低なことをした挙げ句に生まれた私を恨むのは間違っていると思うけれど、母の中ではそれが正しいことなのだから仕方ない。
父も思うところはあるのだろうけど、戸籍上では父の実子として届けられている。
私の父親が父親なだけに何もいうことが出来ず、父も色んな感情を溜め込んでいるのだと思う。
頭を振って両親のことは考えないことにして、荷造りを再開する。
私の小さな仕事部屋に段ボールが積み上がっていく。
子供が出来るまでと言われて使うことを許された部屋。
だから子供が出来ないように気をつけた。
いや、私は結婚した当初から子供が出来ないように細心の注意を払っていた。
安易に結婚≒子供って考えなくて本当に良かった。
子供がいればこんなに簡単に離婚は考えられなかったわね。
クローゼットの服はハンガーのまま掛けるだけでいいケースを渡されているので、それに服を掛けかえていく。服をぎっしり詰めたケースが重くて持ち上げられなかった。服って意外と重い。
処分したかった服もあるけど、今選んでいる余裕はないし、全部持っていくしかない。
PCは引っ越しの朝まで使う可能性があるからこのままね。
和室の押入れの中の物を夫の物と私の物に分けていく。
夫の側に自分の物が残るのも嫌だし、引っ越した場所に夫の物が紛れ込むのも嫌だった。
荷造りが終わった物は私の部屋へ積み上げていく。
次は寝室、浴室、トイレと順番に片付けていく。
けれどこのへんの物は持っていけないな〜全部買うのは大変そうだ。
明日は土曜日。夫の仕事は土日は休みだから私は買い物に出かけることにしよう。
スマホが震えて画面を見る。榛原さんからだった。
{車要るなら貸すぞ。土日使ってよし}
{助かります!!}
{801の集合ポストに鍵を入れとく。
俺は土曜は仕事}
{車は12番区画。車のナンバー02−14}
{バレンタインですね}
{俺の誕生日だ}
{知りませんでした・・・}
{笑いたきゃ笑え!}
{次のバレンタインは期待してください}
{期待せずに待ってるよ}
{(笑)}
{ポストの暗証番号は01010に設定してある。
変更しろよ}
{ありがとうございます}
痒いところに手が届く。榛原さんって本当に素敵。私、結婚相手間違ったとしか思えなかった。
榛原さんが車のナンバーを自分の誕生日にする人だと思わなかった。ちょっと意外。
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会社に出社しても離婚という二文字が頭から消えなくて仕事中にも拘らず、俺は親父に相談しに行った。
親父は俺が話し終わるまで黙っていて、聞き終わったら「ここまで愚かだったとは」と言った。
「離婚の原因を作ってくれてと言われたなら、それまでも不仲だったのだろう?」
「そんなことはない!!」
「なら離婚の原因を作ってくれてなんて言葉が出てくるんだ?」
「それは・・・」
「揉めて家城の会長を怒らせるな。寿羽さんが離婚したいというなら受け入れろ」
「嫌だ!俺は寿羽と離婚する気はない」
「揉めるつもりなら会社は辞めろ」
「父さん!!」
「お前には失望した」
それから親父は「揉めるな」とまた言って俺を部屋から追い出した。
なんでだ?離婚なんてありえないのに。
親父にまで切り捨てられるようなことなのか?
家城の爺が怒るのならそれは理解できる。
寿羽に激甘だからな。
でも何で親父まで寿羽の味方なんだ?
仕事が手につかずつまらないミスばかりを繰り返して、定時になると「今日はもう帰れ」と同僚に言われて離婚届を用意しているだろう家に帰らざるを得なかった。
美来の家に行くことも一瞬考えたが、ここで行くと証拠を握られることになるかもしれないと思って真っ直ぐ家に帰るしかなかった。
家までの道程が近くに感じて気が重かった。
次話 6月5日 22:10 UP予定です。




