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離婚を選んで終の棲家だと思って借りた部屋はたった3ヶ月しか住めませんでした。  作者: 瀬崎遊


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22/29

22 結婚準備3 寿羽 海老で鯛を釣る

 新婚旅行には行かせてやれないからとお祖父様が言い出して、GWに旅行に行ってこいと急に言われた。

 4月26日に出発して5月8日まで12泊の旅行。

 海外に行く案も出たけれど、急なことで飛行機がとれなかった。

 宿泊で困るのも嫌だったので国内旅行になった。

 

 北か南かという話が出て、榛原さんが北に行ったことがないと言ったので北を選んだ。

 飛行機で行くか、フェリーで行くかで頭を悩ませた。

 お祖父様がレク◯スLMを貸してくれるというのでフェリーにしようと決まった。別にヴェルフ◯イアでもいいんだけどね。

 25日の夜に出発して翌日の夜に到着する。

 船内で万が一食事ができないと困るので、袋パンの日持ちのいいものを選んで持ち込みにした。



 夜、屋敷を出発して港を夜中出発。直行で北へと向かう。

 船の中で大体20時間。

「久しぶりに二人でゆっくりできるね」

 と言っていたのは何の幻か・・・すっかり船酔いしてしまった私は完全にダウンしてしまった。


 榛原さんはなんともないようで、私も今まで乗り物酔いをしたことがなかったのでクスリの準備なんかしていなかった。

 あっ!妊娠の心配はまったくないのでご安心を。

 船のフロントに酔い止めの薬を貰いに行こうとしたら「この薬よく効くから飲んでごらん」と知らないおばあさんに勧められた。

「2錠飲んだらすっかり良くなるからこれ飲むといいよ」


 流石に知らない人に勧められた薬は怖くて飲めなくて「ありがとうございます」と言って断った。

 売店に薬が売っているとのことで、その薬はおばあさんが勧めてくれたものと同じものだった。


 一時間程するとすっかり元気になった私はぐっすりと眠ることができた。

 気持ちいい目覚めで珈琲を買って袋パンでお腹を満たす。

 船外に出ておのぼりさんよろしく写真をパシャパシャ撮って船室に戻った。

 それからは退屈だったので持ち込んだ本を読んでお風呂に入って昼食、またお風呂に入って本を読んで夕食を食べて暫くすると北に到着した。



「やっぱり涼しいね〜」

「そうだな」

 フェリーから降りて直ぐ、調べていた回転寿司屋さんに行った。

 地元では中々見られない食材もあって色々食べた。

 予約してあったホテルで一晩休んで翌日の午前中は観光を楽しむ。


 昼からは高速を使わず海岸沿いを北上して最北端へ車を走らせる。

「広いね〜〜遠いね〜〜」

 途中運転を交代して北へ北へと走らせる。

 中程で一度泊まって翌朝北上していく。

 宿が取れなかったら車中泊する覚悟で海岸沿いをひた走る。

 風力発電の大きな白い風車がクルクルと回っていて走れど走れど風車が並んで建っていた。


 最北端に到着してまたもや写真をパシャパシャ撮って東に向かうことに。

 泊まっては車を走らせて、観光しては車を走らせ、また泊まってを繰り返してこの北の大きな東側をぐるっと回った。

 北の大地の南にある場所からまたフェリーに乗って、車を走らせて屋敷へと帰り着いた。


 ゴミゴミとした狭い道が嫌になって北へと戻りたくて仕方なくなった。

「いつか北で生活してみたいね」

「そうだなぁ〜二人でゆっくりできる日が来るといいなぁ・・・」

「お祖父様を見ているとゆっくりできる日が来るのか解らないものね」

「全くだ」


 ちなみに北で榛原さんと一度大きな喧嘩をした。

 喧嘩の内容はどこに泊まるかだった。

 つい私はイケイケになっちゃって車を走らせることばかりを考えて次の街までがどれだけ遠いかって事に考えが及ばなかった私が悪い喧嘩だった。


 間違いに気がついてすぐに謝ったら榛原さんはクスと笑って私の頬を撫でた。

 喧嘩自体が初めてだったのでスマホのカレンダーに初喧嘩と入力した。

 みんなへのお土産は各地から宅配便で送った。

 冬だと蟹があったのになぁ〜と残念に思った。

 北では食べたけどね。




 旅行気分が抜けなくて散財ぐせが付いてしまった私はネットでポチポチ買いものカゴに入れては削除するを繰り返していた。

 まぁ、暇なせいもあるのだけれど。

 ずっと榛原さんと一緒だったから寂しいっていうのもある。


 スマホの連絡帳をスクロールしていたら高校時代の友人の名前に行き当たった。

 砂羽夏海(さわなつみ)。夏海も同時期に結婚して疎遠になった。

 メッセージが送れるか試してみる。

 私のほうがアドレスやIDを変更しているのでこちらから送らない限り連絡できない。


   {夏海!元気?! 寿羽}


 それ程待つことなくメッセージが届く。


   {久しぶりね〜〜!!ID変えたの?}

   {色々あってね〜〜・・・}

   {なになに?何があったの?}

   {離婚した}

  

   {あら、私も〜〜}

   {え〜いつ}

   {一年程前かな}

   {子供は?}

   {それが原因}

   {?}


   {旦那は子供が欲しくて、私は子供が欲しくなかった}

   {あぁ〜〜。仕事?}

   {そう。子供できたらどれだけ

    育てるのに協力してくれるんだっていうのよ}

   {あぁ〜〜}


   {寿羽のところは?}

   {去年の11月に夫の浮気?が発覚して即離婚}

   {許せなかったんだ?}

   {違う。どうでもよかった}

   {怒りを感じるほどの思い入れもなかったと?}

   {そういうこと・・・で、既に婚約してるんだ・・・}


   {なんじゃそれぇ〜〜}

   {6月に結婚する}

   {超早業!}

   {今度は大丈夫な人}

   {・・・それを信じろと?}

   {(笑)だよね〜でも本当に大丈夫な人}

 

   {そっか〜今度何処かで会おうよ}

   {暫くは外出禁止だから会いに来て}

   {外出禁止?何じゃそら?}

   {親族のゴタゴタで・・・}

   {そういやあんたのところ色々あったっけ}

   {そうなの。ところで他のみんなと連絡とってる?}


   {全然。結婚しちゃうと結婚してない子との付き合いなくなる}

   {私も同じ}

   {離婚すると今度は結婚した子と付き合いなくなる}

   {そして誰もいなくなった}

   {そういうこと。仕事に戻るわ}

   {うん。邪魔してごめんね}

   {暇見つけたら連絡するわ}

   {うん。待ってる}


 連絡は来ないかな。となんとなく感じた。

 少し寂しい気持ちになって、その日は榛原さんにたっぷり甘えて充電した。




 私は相も変わらず暇なので午前中はゆっくりと体を動かして、昼食を食べてからお祖父様に頼まれた簡単な仕事を手伝ったり、披露宴の詳細などを細々と決めていた。

 披露宴でも購入したウエディングドレスを着るらしくて、体型維持をウエディングプランナーの柏田(かしわだ)さんに口が酸っぱくなるほど注意されていた。

 運動をしているため気を許すと体重が減ってしまうのが現在の私の悩み事だった。


 1〜2度外食に連れて行ってもらったらすぐに戻る程度なので、体重が減ると外食に連れて行ってもらうことを繰り返していた。

 跳ね橋は変わらず上がったままで、お祖父様が何を気にしているのか教えられないままぬくぬくと毎日を過ごしていた。


 ただお祖父様に家の電話には出るなと言われていて、代田さんに理由を聞くと兄姉、親族からの電話がしょっちゅうあるとのことだった。

 その内容は跳ね橋が上がっていて入れないというものだったり、私の結婚のことだったり、お金を融通して欲しいと言う内容だったりと、碌でもない内容なので気に掛ける必要はないと言われた。


「お兄様たちは私の結婚の何を知りたがっているのかしら?」

「私がご本人方に聞いたのは結婚するというのは本当か?相手は誰か?寿羽様の電話が通じないから番号を教えろだとかが(おも)ですね」

「披露宴の招待状をどこかでみたのね」

「達俊様は若菜様からお聞きになったそうです」


 若菜というのはお祖父様の弟の次男の一人娘だったと思う。中学生の頃の顔しか思い出せない。それも朧気(おぼろげ)

 私は親族とほとんど付き合いがないのでよく知らない。

「お兄様たちそんな遠い血縁者と人たちと付き合っているの?」

「一応旦那様の会社の末端で働いているらしいので、お金をせびりに行っているのではないかと旦那様が」


「お父様は知ってるってこと?」

「はい。旦那様は血の繋がりがある家城に関係ある会社に勤めている方々には康介様が相続放棄したこと、旦那様と寿羽お嬢様が養子縁組したことを伝えたと仰っていました」

「それでもあの人たちに手を貸す人もいるっていうこと?」

「いえ、お金をせびられて康介様が遺産放棄したのにどうやって返すのか?と言う話の流れで、お嬢様が養子縁組した話が出た模様です」


「それと同じ流れで結婚話も出たってとこね」

「おそらく」

「代田さんは私に話してよかったの?」

「黙っているようには言われませんでしたので」

「そう・・・私が知ってもいいこと他にある?」

「そう、ですね・・・康介様の配偶者である方が少し前からこの屋敷の周りをウロウロしていることとか」


 遠回しな言い方をしているけれど、母のことである。

 どうやらみんな私の母と呼ぶのが嫌らしく、もって回った言い方をする。

 

「ちょ、ちょっと待って。やっぱりお母様がウロウロしているの?」

「はい」

「お父様に見つかったら車で轢かれない?」

「そうですね・・・私共も見かけたら周りをウロウロしないようにと伝えているのですが、最近は寿羽は私が産んだんだからそれ相応のものを寄越せとおっしゃるようになられて」


「最悪・・・ごめんなさい・・・。話を(さえぎ)ってばかりで。続きを聞かせて」

「あっ、はい。旦那様が非常に恐ろしい状態になられています。旦那様は康介さんの配偶者の方に民事裁判を起こすと伝えたそうです」

 私は息を呑む。お祖父様大激怒中だったんだ・・・。


「配偶者の方は受けて立つと最初は息巻いてらっしゃったんですが、裁判費用がかかることと、ご自身がされたことがすべて表沙汰になると知って、最近はお見かけしなくなったところです」


「産みの母親だと思うと情けなくなるわね・・・当然久哉さんも知ってるのよね?」

「お気持ちはお察ししますが、知っておられます。旦那様に報告する時にお嬢様に守るためには必要だとおっしゃられて、同席されていました」

「そうよね・・・」


 過去の話を聞かされることと、今起こっていることを聞かされるのでは、大分違うんじゃないだろうか?

 榛原さんに嫌われなければいいけど・・・。


「旦那様は裁判を起こされるそうです」

「えっ?」

「2度とお嬢様に関わらせない為に裁判結果で縛ると仰っていました。ただ、あちらに戦う術はないだろうから示談になるだろうとも仰っていました」


「私がいないところでいつそんな話をしているんですか?」

「うふふっ。いつでしょうね。それは秘密です」

「それはお祖父様に話してはいけないと言われてるのかしら?」

「いえ、単に面白いので秘密なだけです」

「代田さんってそんな性格でしたっけ?」

「元はこうですね」

「猫を被っていたんですか?」

「そう、かもしれませんね」

 代田さんは妖艶な笑顔を浮かべて「失礼します」と言って私の前からいなくなった。

 


 その日の夜、榛原さんに母がウロウロしている話を聞いたことを伝え、現状どうなっているのかを尋ねた。

「示談の話を進めている。会長は結婚式までには示談を成立させたい方針で動いている」

「まとまりそう?」

「どうだろうな。相手のことをよく知らないから俺からはなんとも言えないかな。寿羽とこの屋敷、家城グループの会社があるところには近づかないという条件は呑んだ。ただそれに対する金銭を要求してきている」


「支払うの?」

「いや、支払わないだろう。会長が支払うべきものは既に支払っていると言ってるから金銭を支払うくらいなら、あの女がしたことをすべてマスコミに漏らすとも言っている」

「お母様は聞き入れるかしら?」

「まぁ、呑むんじゃないか?」

「お祖父様、本気でお母様が嫌いなのね。お金を支払うのですら嫌なんて」


「まぁ、そうなんだろうと思う。マスコミに漏らすのはちょっと間違うと寿羽のことまで取り沙汰されるから、会長はすべてを話す気はないだろう」

「私、お祖父様と久哉さんに迷惑ばかりかけているわ。嫌いにならない?」

 榛原さんは私を抱きしめてくれて一つ口づけをくれる。

「嫌いになったりしない。心から愛してるよ」

 私は強く抱きしめ返す。

「ありがとう。私も愛してるわ」




 お祖父様にお礼の気持ちを込めて何かしたいと思って考えて、花見のときに作ったお弁当を喜んでくれたので、会食がない日を教えて貰ってお祖父様達にお弁当を作ることにした。

 今度はお祖父様のためのお弁当だから、和食がいいよね。


 お弁当を作る2〜3日前に用意出来る酢蓮根から用意し始める。

 蓮根は薄切りより少し厚めの半月切りにして、たっぷり塩を入れた湯で歯ごたえが残るくらいまで茹でる。

 ザルに上げたら塩を二つまみ程振りかける。

 昆布出汁、酢、砂糖、塩、輪切りにした鷹の爪を入れてよく混ぜたものに蓮根を漬ける。


 山菜おこわの準備は前日から。

 前日からもち米を研いで水につけて昆布を入れておく。


 米は朝といで30分くらい水につけて前日から水につけていたもち米と合わせておく。

 山菜を好みの長さに切る。人参は2〜3cmの長さの短冊切りにする。

 油揚げは沸騰したお湯に一度通して油抜きをした後、さいの目切りにする。

 鶏肉は小指の爪くらいの大きさに切る。

 鶏肉の下味に塩を少し振る。フライパンで炒めて、余分な油を拭き取る。

 米に顆粒昆布出汁、醤油、味醂、日本酒で味付けしてよく混ぜておく。

 山菜、人参、油揚げ、鶏肉を米の上に置いて炊飯する。

 具材は必ず米の上に置くこと。米と混ぜてしまうと、米がちゃんと炊けない事があるので。


 油揚げにひき肉を詰めて煮る。

 油揚げを沸騰したお湯で湯がく。取り出した油揚げの上に箸を転がして、横に切って、切り口から指でそっと剥がして、袋状にする。

 合いびきミンチに椎茸の軸をみじん切りにしたもの、人参のみじん切り、生姜をすりおろしたもの、塩、顆粒昆布出汁を入れてよく混ぜる。

 野菜を多くしないと脂っこくなるので注意。

 油揚げの中に半分くらいまで詰める。

 昆布ストックと砂糖、薄口醤油、味醂で油揚げの中に味がつくまで煮る。

 

 ホタテと椎茸の煮物

 椎茸は軸を落として、飾り切りをする。

 オクラは板ずりして産毛を取り除き、硬いところを落とす。

 人参は花型の型抜きで抜く。

 蒟蒻は5mm厚くらいに切って真ん中に2cm弱くらいの切り目を入れて、端を切り目に一度通すとねじり蒟蒻になる。


 ホタテを下処理する。

 薄い味で煮ることに気をつけて、昆布出汁、薄口醤油、砂糖、塩で人参と椎茸、オクラを煮る。

 一度沸騰したらオクラは取り出して、ホタテを入れる。ホタテに火が入ったら一度取り出す。

 汁が煮詰まってきたらホタテを戻してもう一度煮る。

 

 お祖父様は甘い厚焼き玉子が好きなので、甘い卵焼きを作る。

 卵に砂糖、塩、薄口醤油を入れてコシを切らないように混ぜて、卵焼き器で巻いていく。

 榛原さんには前回作ったのと同じだし巻き卵を作った。

 和食になると黒っぽくなるので色味のあるものを綺麗に飾り付けて完成。

 

 お祖父様は凄く喜んでくれて、礼だと言ってまたデパートに連れて行かれたのは予想外だった。

 どうやら榛原さんのフィッティングの予定が元々あったらしい。

 お礼にお礼をされて私はため息を付くしかなかった。

 必要なものがなかったので、欲しいものを伝えなかったらウエディングドレスを着るときにつけるきらびやかにダイヤが連なったチョーカーとイヤリングのセットを買ってもらってしまった。

 海老で鯛を釣りすぎてしまった。

 その海老もお祖父様のお金で買ったものなのに・・・。



明日、21:10 です。よろしくお願いします。

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